第37話 婚活
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『人がまるでゴミのようだ!』
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「ひどい人なの!」
「男の子、頑張るっス!」
「ぱじゅー」
「メガネをやっつけて!」
テーブルの椅子に腰かけるノゾミとフェリン。
ノゾミはフェリンのステータスを視る。
「どうじゃ、視られんくなったじゃろ?」
「はい」
「儂より下のLVはこちらから「遮断」スキルを解除せんと覗けん」
「やっぱりお父さんの視れなかったのはスキルのせいでしたか」
「親子揃って転移人とはの。ノゾミとの語らいは酒の摘みにもなるの、退屈せん」
大吟醸をマスで呑み、つまみのアボカドマグロの白だし漬けに舌鼓をうつ。
「これも日本酒とよう合うのう」
「あの、アタシ闇魔法持ちなんですが、耐性LVが低くてうまく扱えないんです」
「聖者のノゾミが何故に闇を所持しとるんじゃ?」
「「神の白い部屋」で、頼んで貰いました」
「そんな危殆なモノ、よくあの助平爺からぶんどったのう」
「それって現神のことですか? 知り合いとか?」
「今代の神の「ゲンダラフ」は一時期、愛人になれと儂によう付きまとってての。
それで儂の親父の逆鱗に触れ、コテンパンに叩きのまされ消滅されておったわ」
「お父様、神さまより、お強い?」
「言うて神は創りモノの躰じゃからな。すぐに復活しおる。
その後もストーカーとして付きまとっておったが、色欲爺は母親にも目を付けだした」
「お母さまに、最低ですね……」
「母も堪忍袋の緒が切れての。白い部屋に乗り込んで、交渉し多額の慰謝料と示談金をせしめておったわ」
「お母さん、最強じゃないですか。もう宇宙最強レベルでは?」
「さあ、どうじゃろうな? 儂より遥かに高みの生き物じゃからの」
「現神って、意外と俗人なんですね」
「代々神龍は比較的真面だったんじゃがの。
ルシーには内緒じゃが、数億年前5代目の「オンダラフ」とは一時夫婦だった事もあった」
「衝撃的な話ばかりです。今日の夜は情報の精査が大変そうです」
フェリンは笑う。
「アタシが闇を貰ったのは正確には10代目神龍予定のゴンダラフです」
「ほう、あの爺も引退かえ?
そ奴も、何で禁忌の闇なんか施したんじゃ?」
「それはアタシが脅迫というか、圧を掛けて、お願いをして…」
「ぶっ飛び過ぎじゃろ? 何故に好き好んで闇を所望する?」
「地球に居た頃から闇魔法に魅了されてて。アタシ、悪魔が好きなんです」
服の裾を上げ、悪魔フォルムのTシャツを見せる。
「ノゾミは愉快なやっちゃ。それに儂と同じ性癖みたいじゃのう」
「フェリンさんと一緒の性質、光栄です!」
「じゃが儂に闇魔の欲はないぞ。「ゲンダラフ」ならさすがに容認せんかった思うが、代替わりの神の質も堕ちたものよの」
「ゴンダラフから聞いたんですが、裏技の闇スキルを上げる書物があるとのことで、ご存知でしょうか?」
「「闇スキルの書」か? 長く生存しとるが現存するんかは分からん。
闇魔は肉体も精神も闇に浸蝕され狂わせるのは聞かされておらんのか? 魔族で先天的じゃなければ精神が耐え切れんし扱えんぞ」
「織り込み済みです。
闇魔法は長年の夢なんです。地球に居た時から渇望していました」
「地球人は皆そうなんか?」
「極少数派ですね。アタシのサイトのコミニュテイでも拗れている同志は1人しかいません」
「王立図書、図書塔には闇書の書物があるかもの?」
「一応は存在している可能性はあるんですね!」
「王侯クラス、特権階級なら入れるかもしれんが、二つ名のひとつでもあればいけるんかのう?」
「二つ名ですか? どのような通り名などがあるんでしょう?」
「この王国で有名なのは、呪われた亜人の幼女がおる。
「金髪赤眼の悪魔」の異名持ちじゃ」
「悪魔…?」
「戦争時、帝国がこの王国に侵攻中、害竜を利用して追っ払ったんじゃ。いや、全滅させたんじゃな。
さらに帝国城にも踏み込み城を塵と化した。
それ以降帝国からは忌み嫌われ悪魔と呼ばれておる。いまでは数千年続いた戦争は停戦。この国が安寧なのはその亜人のおかげじゃ。王国の功労者じゃの」
「それは、「ドラゴンスレイヤー」のシーナ・アルフレッタさんという名では?」
「なんじゃ、知っとるのか?」
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その頃のシーナ。
シーナとスイスイは地面を転げ回りケンカ中。
『てめー!寄こしやがれ!』
「うっさいわ!この最弱スライムが!」
<パシン> <ペタン!>
ゴトーは騒ぎを聞きつけて来る。
「また始まったのか?」
『今度はシーナさんがゲームを独占しようとして』
「お前さんなど存在を消し、塵にしてくれるわ!」
『やってみろが!このクソガキが!』
「ワッチは帝国城をも塵にしたんじゃぞ!」
『嘘乙』
「嘘じゃないわ!」
<ぺシ ぺシ ペタン!>
「ストップだ。シーナ、スイスイ」
「ゴトー!」
『あるじっ!』
ゴトーは地面に落下した「○witch Light2」を拾う。
「ゲーム機をぞんざいに扱う者にはゲームを遊ぶ資格はない。今後ゲームは禁止にする」
「なっ!」
『そ、そんな!』
「地面に投げ捨て起動しなくなったら、この世界ではサポートセンターも修理工場もない。俺の日課のモンスター育成に支障をきたす」
「ん? 魔物を、育てる?」
ゲーム画面を起動させ説明するゴトー。
「○ケット・モンスター 赤、青。金、銀。
ルビー、サファイア。ダイヤモンド、パール。X、Y。
サン、ムーン。ソード、シールド。
スカーレット、バイオレットまで全て完コン攻略をしている。
今は、○ケモン レジェンズ ゼットエー、
このコンプリートはこの世界でクリアをする予定だ」
「……?」 『……?』
「ゲーム機を壊されてまで遊ばせるつもりはない。○トリス禁止令を発令する」
「わ、悪かったのじゃ!もうせん!スイスイはできんじゃろうが、ワッチは優しく扱うのじゃ!」
『あぁー!?シーナがゲーム機を放り投げたんだろうが!』
「い、いや、スイスイ、なのじゃ……」
『シーナさんが投げたな』
『『『シーナだな』』』
『キュピキュピ』(同意)
「……ち、違うのじゃ、あれは、」
魔獣たちの軽蔑の視線。
「うっ……」
地面に倒れ、ごねるシーナ。
「禁止なんてイヤなのじゃ!てっとりす、遊びたいのじゃ!」
<ジタバタジタバタ>
『これがこの王国や獣人の国を救った魔術師か?』
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「なるほど、父親と一緒に行動しておるのか」
「確定ではありませんけど確信はしてます。早く出会いたいんですけどね。
二つ名のある元宮廷魔術師、その人に頼めば」
「受けるわけなかろうが」
「そうですか…」
「人族の王立学園でエリートを突き進めばコネでいけるかもな」
「異世界の学園編突入は少し魅力的ですが、ちょっと時間を掛けるのは……。けど場所さえ分れば……」
「言うとくが小細工や力技は通用せんぞ。王族関係の防護結界は神の恩寵らしくての。魔族も帝国もそうそう手出しができん。多分儂でも苦労するじゃろうな」
「謀計な類も無理ですか」
「一番手っ取り早いのは今の王は若く独り身じゃ。垂らし込んだら王室権限で出入り自由じゃな」
「それは論外かな、悪魔の人以外興味ないし」
「じゃがのう、儂の知り合いが闇を使おういうものなら全力で阻止するぞ。アレは人族には向いておらん。破滅した奴も数多見てきた。せっかく知りおうたんじゃ、ノゾミにはああはなってほしくはない」
「闇の魔法、諦めます!」
「決断早いの、夢じゃないんか?」
「リスペクトできるような年長者の言には耳を傾けるようにしています。母親。棋士の源さん。フェリンさんがこれで3人目です」
フェリンは笑う。
「本命に切り替えたいと思います」
「本命とは?」
「アタシのこの世界での、主目的です」
「主目的、それは魔王討伐じゃないんか?」
「誰か悪魔の人を紹介してくれませんか? ルシーさんのような」
「……」
「ダメですか?」
「ルシー」
「はいっス」
ルシーが来る。
「ノゾミが魔族との交際を望んでおる。誰ぞええ奴はおるか?」
「フリーっスか?
ネクロマンサーのネックさんと、
ガーゴイルのガイルさんがいるっスよ」
「10柱の下っ端じゃノゾミに釣り合わん。最低でも四天王クラスじゃろ」
「四天王は難しいっスね。
独身のデモさんはフェニックスのフシミさんといい仲っス。
妖精から魔族に転職した、柱ナンバー1のデュラハンのデラさんは? 一押し物件っス」
「頭は見つかったんか?」
「かれこれ100年探してるけどまだ見つかってないっス。首無しじゃダメっスか?」
「いや、頭無いのは、ちょっと……」
「リッチのリーさんは? 骨っスが?」
「骸は、ちょっと……」
「ミノタウルスのミノさんは? 怪力っス」
「人外も、ちょっと……」
「サタンのサタさんはいるっスけど、サキュバスのサキュリンさんに恋して撃沈して、それから50年は経つっスね」
「サタ坊か。アレはダメじゃ、病んどるし気が弱く野心がない」
「もう1人いるっスけど、これはさすがに…」
「誰じゃ?」
「魔王様っス」
「マオか。これは灯台下暗しか?」
「ここで魔王さまですか!」
「女好きっスけど意外な一面もあって、けっこう面倒見も漢気もあるっスよ。惚れっぽいし女にだらしないのが玉に傷っス」
「そうじゃったな、ノゾミも別の女子に現を抜かすんは勘弁じゃろ」
「そう、ですね。浮気は男の甲斐性、不倫は文化と宣う男には吐き気と反吐が出ますね。
けど、ルシーさんから話を聞く限り、良さそうな人でもあります。付き合う上で全て女性関係を清算してくれるなら、そして尽くされるなら、有りかもしれませんね」
「ほう、手綱を握るか?」
「はい」
「じゃが容姿の好みもあるからの。迂闊に紹介はのう」
「前にラッドルブ海岸に慰安旅行した時の姿絵があるっス」
「拝見できますか?」
翼から数枚の姿絵を出してそれを見せる。
浜辺でバーベキューをしている魔族、悪魔たち。
「これがデュラハンのデラさんっスね」
砂浜で馬に跨った、首無しの金属の鎧の男。
「この手に持ってるナマハゲの面は、首を失くした代わりの借り物っスね」
「……却下ですね」
「これがミノさんっス」
肉や魚を炙っている大男。人型筋肉質、牛の顔に頭には角。
「……却下で」
「リーさんっス」
ローブに骸骨の男。
「論外」
「この人がサタンのサタさんっス」
砂浜に立てたパラソルの下で、うつむき加減で座り込んでいる。
「姿絵ですが、それでも全然覇気を感じませんね。
それとまるで写真をトレースしたような絵、クオリティ高過ぎません?」
「この真ん中が魔王様っス」
「おー!思ってたよりスマートでイケメンさんです!
繊細そうだけど、どことなく威厳を感じさせるような。
ルシーさん、ご紹介願えますか!?振り向かせたいと思います!」
「いいっスよ。会ったら尋ねておくっス」
「大丈夫か? ああ見えても素人女性にはマオは小胆じゃぞ」
「人数の多い合コンや娼婦にはイケイケで気が大きくなる性格っスけどねー」
「1人相手よりは多人数がええじゃろな」
「分ったっス。合コンっスね。セッティングは任せるっス」
<ヒソヒソ> タケルとアヤカ
「かなり不穏な内容が耳に聞こえてきたが、紹介?魔王を?」
「ワタシたち、その元凶の魔王を倒しにいくんでしょ?」
「こういうパターンはラノベにはありがちな展開だが…」
「悪魔と合コンって常識なさすぎでしょ。いや、ノゾミに常識通用しないけど…」
「肉食女子が婚活に勤しむ光景にしかみえないな」
「身内に魔王ってイミフ過ぎでしょ。タケル、止めてきなさいよ」
「けど、ルシーさんもフェリンさんもいい人そうだし、直接反対と言えなさそうな雰囲気なんだが。アヤカなら言えるか?」
「言えないからアンタに頼んでるのよ」
「どうせなら、転移人と知らせず会わせるんはどうじゃ?」
「なるほど、先入観無しでですか。いいですね!」
「それは面白そうっス」
「合コンか、儂も参加しようかの」
「え、ダメっス」
「心配すな。ノゾミのサポートじゃ。
こちらからも若い女子を用意しよう。
ユニコーンのユニコや、朱雀の手羽美辺りか。
セイレーンのシレーヌにも声を掛けておくか。
マオには手は出さんよう、協力するよう言い含めとくでな」
「有難うございます。心強いです。よろしくお願いします!」
「気合入っとるの」
「念願でしたから!」
「ノゾミさん、ファイトっス!」
帝国の温泉地
来月開催 15日後予定
「ノゾミを、あの人たちを、誰が止められる」
「………」
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37 婚活 終わり (87)
38 辺境の村 (ゴトー編6) (88)
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