第36話 ルシーさん一家 強さランキング
タケルたちは、ノゾミと話すルシーやフェリンをキッチンのテーブルから眺めている。
「聖獣フェンリルを目の当たりにするなんて。それも人化で理性があるとは…」
「そんなに珍しいのか、聖獣」
「悪魔や魔王以上に謎な存在です。
多分完全人化とかも自在と思います。一説によれば神の称号があるとか」
「何千年も生存が確認されていない幻の聖獣だぞ。
「チキュウ」では当たり前に居るのか?」
「そういえばレーデルには地球の事は教えてなかったな。
地球には人族と普通の動物しかいない。亜人も獣人も魔物も、魔王なんて存在しないんだ」
「……?」
「シンエイは知ってるよな?」
「はい。クジョウの言い伝えで知ってます」
「あと魔法もないしスキル、ギフトも存在しない。
ステータス、特性か? 唱えても目の前に何も出ない」
「じゃあ、どうやって力を見極めるんだ?」
「見極め方はないな。評価や自己申告とか?スポーツや勉強で言えば実績や成績とか?」
「信じられないんだが…」
「オレたちはスキルや魔法があるこの世界の方が信じられないんだがな。
ここでLVが高く、魔法もスキルもあるのは神さまから貰ったからだ。
地球のままの身体だったら、レーデルにもアルメダ、イルメダ、雑魚獣にさえ勝てない。それは過去の転移人たちも同じはず。すべて神さまからの恩威のおかげだ」
絶句のレーデル。
ルシファーのルシーが寄って来て話しに割り込んでくる。
レーデルとシンエイは緊張。
「へー、転移人ってそうなんスねー。自分LVは95スけど、いくつスか?」
「ここの世界に来て86からスタート。これではルシーさんには勝てないですよね?」
「まだまだ負けないっスねー。
前の勇者もそれぐらいで最初は自分の圧勝だったスね。何回か臨んできて転移から3年目で追いついて、変な怪我を負うより自分から負けを言い渡したっス」
「本当にデキレなんだな…」
「その後、勇者はさらに力をつけて実力で魔王様倒したっス」
「やっぱり年単位の修業が必要か…」
シンエイはビクつきながらルシーに尋ねる。
「あの、勇者パーティの賢者の女性は覚えてますか?」
「賢者……シノビの女、クジョウマリっスね。
あの子チートっス。勇者より強くて賢者がいなかったら、もう数年は魔王様倒せなかったはずっス」
「勇者より賢者が強いパターンもあるのか…」
「何代か前にも忍び(服部半蔵)の勇者もいて魔王様が言うには、それよりも強かったと言ってたっス。
歴代転移人の中で一番じゃないかって話しっスね」
「忍びのポテンシャル凄いな」
「勇者も魔族も代ごと、復活ごとに強くなっていく傾向っス。
今回の魔王様、LV105っスよ」
「え!?99超えてる?」
スーパー魔王人8 (エイト)っス!」
「え? なに? 「○ラゴン・ボール?」」
ルシーはノゾミとの話しを説明する。
「スーパー転生を8回繰り返して、スーパー魔王人8か……」
「今まで読んだ勇者物語と、全然話が違いますね」
「地球でも史実の物語はいいとこどり、都合のいい改変しまくりだからな」
「これ、ノゾミさんにも見せた強さ表っス」
テーブルに、ルシー一家強さランキング表を置く。
――
お義母さん (越えられない壁) お義父さん>>
フェリン>>>>>魔王=リーリン>>ルシー
――
「これ、魔王の位置が異常に低いですね」
「リーリンちゃんの同列が魔王?」
映画を観ているリーリンを見る。
<キャッキャ!>
狼姉妹と体を寄せ合い夢中でアニメを見ている。
「あの幼い子が魔王と同じLV?105」
「さすがに、いま闘えば経験の差で魔王様は負けないっス。潜在能力での話しっス。嫁が言うには2年後には完璧に倒せると言ってたっスね。
自分は娘に負けたっスが」
「は!? ルシーさんは娘に負けた?」
「ギリかわせたっスが、娘の真剣な表情に見惚れ油断したっス」
「もう、あの子が勇者でよくないか?」
「いろいろインフレが……。まだここに来て4日目なんだが、これ絶対、序盤の展開、聞く話じゃないよな。最終局面みたいな…」
「あの、ルシーさんに頼むのは筋違いですが、できたら闘い方を教えてくれませんか」
「闘い方っスか?」
「お、おい、タケル、魔族だぞ。今後戦うかもしれない相手だぞ」
「あー、そうだな、すみません、オレなに言ってるんだ、」
「いいっスよ」
「いや、いいのかい!!」
レーデルの突っ込み。
「ノゾミさんとも仲よくしましょうと言われたっス。魔王様倒されると失業っスけど、考えようによっては娘と遊ぶ時間も増えるっス。
訓練と闘い方、攻略法や弱点、魔王城までの最短ルート、教えるっスよ」
「「「……」」」
「今、教えるっスか?」
「…それは、また別の日に、改めて」
「遠慮しなくてもいいっス」
「ちょっと、冒険の旅のバランス的にも…」
「分ったっス。いつでも声を掛けるっス」
――
『ぱずー!』 『しーた!』
――
画面にくぎ付けの子供たち。
「動く活劇絵物語、自分も見させてもらってもいいスか?」
「あ、どうぞ」
娘を抱き寄せ、アニメを観るルシー。
「凄いいい人ですね、悪魔ですけど…」
「いい人過ぎるだろう、悪魔だけど…」
「なあ、冒険のバランスって何だ?」
「いや、なんか攻略法を先読みしそうな? ネタバレみたいな感じがして」
「攻略?ねたばれ? それも意味が分からないんだが」
「序盤は弱い敵と闘い、訓練したり、謎を解き、イベントをこなし、成長して、の部分が省略されそうで」
「もっと意味が分からん。それは「チキュウ」人の感覚なのか?」
「レーデルも地球に生まれていれば分かってくれるはずだ。その手の読み物、ゲームも娯楽に溢れているからな」
ルシー一家強さランキング表。
お義母さん (越えられない壁) お義父さん>>
フェリン>>>>>魔王=リーリン>>ルシー
「オレのLVが86。ルシーさんがLV95と言ってたな。魔王が105」
「あり得ないんだが、この世界で一番有名なのは数百年前の大賢者のLV92だぞ。
タケルの86も驚きだが、魔王は100を超えてる?」
「魔王が105なら、
この「>」これが5単位と仮定すると、
フェリンさんは5つあるから……130?」
「じゃあ義理の父はそれより2つプラスだから140か?」
「お義母さんの超えられない壁って、予測がつかないな」
「150くらい?」
「けど、150なら、「>」これを2つ増やすだけでよくないですか?」
「それ以上か。200とか言わないだろうな……」
「LV80を超えると、10ごとに現在値の力や能力の上昇が倍になるって聞いているんですが」
「化け物過ぎだろう…」
「越えられない壁だからな。
この表見てると、魔王が雑魚というか、下っ端感が半端ないんだが」
「リーリンちゃんと同じだからな……」
「全然脅威じゃなくなった感じだが」
「それでもオレのLVではまだまだ脅威なんだがな。○ラゴン・ボールでもここまでのインフレはないぞ」
「それよりレーデル、ルシーさんにツッコミしてたよな?」
「恐れず悪魔に物言い、恐れ入りました」
「さすがだな」
「普通、できませんよ」
「悪魔らしくない言動に、つい叫んでしまった…」
「確かに気さくで、いい先輩ポジなんだがな。
レーデルにはその調子で、オレの代わりにノゾミにもツッコミを入れてもらいたい」
「それは絶対ムリ」
――
36 ルシーさん一家 強さランキング 終わり (86)
37 婚活 (87)
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カット
36.5話 ○ラゴン・ボール
「なんだよ、さっきから「○ラゴン・ボール」って」
「7つの龍の玉を集めると、何でもひとつだけ願いが叶うという物語だ」
「なにそれ? 「チキュウ」にも龍がいるのか?」
「空想物語だ。「○ピュタ」のような」
「「チキュウ」の物語、凄いな…」
「○ラゴン・ボールは全世界で2億万部以上、売れているからな」
「2億!?」
「全42巻だ」
「42冊?」
「持ってきているぞ」
「え!?」
「男の子にとって○ラゴン・ボールはバイブルだからな。オレも定期的に読んでいる」
「神龍聖書みたいなものか! それで龍が被るのか……」
「あの、ボク、ノゾミさんから○女戦記を読ませてもらってるんですけど、
帯に1000万部突破とか書かれていました」
「多分、小説とコミック合わせての累計だな」
「かなり少ないですね。いや、1000万はどうみても多いんですが」
「読者層が全然違うからな。マイナージャンルの戦記物でその数は○ラゴン・ボールと同等くらいの偉業だぞ」
「タケル!オレにもドラゴンボール読ませてくれ」
「ボクもお願いします!」
「かまわないが今日は眠れなくなり、徹夜覚悟になるぞ」




