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第33話 魔族ルシファーと聖獣フェンリル 

<バッサアー バッサアー>


背が高く筋肉質の悪魔の容貌の男と、

美しい女性は岩場に降り立つ。


茫然とするノゾミらに向かって、

「あれ?先客っスか?

珍しいっスね、温泉、最近の流行りなんスっねー」


「「「「……」」」」


「人族2人に、お、半狼子っスね」


悪魔の男の側に白銀の長い髪、美貌の女性。

犬型のケモ耳、大きな尻尾。


「こんな僻地に、人族が来るものなんじゃのう」


美貌の女性は抱いている小さなケモ耳の女児を降ろす。

温泉に入っているノゾミたちを見ると、恥ずかしそうにサッと女性の尻尾に隠れる。


アルメダは小さく呟く。


「アクマさんと、オオカミの獣人さん…?」


ノゾミは動揺。


「え、え、えーと……あ、悪魔さん、ですか?」


「そうっスよ」


「ルシー、年若い娘子じゃ、遠慮せい」


「分かったス。自分、あっちの温泉に行ってるっス」


「あ、別の方に兄と友達がいます」


「分かったっス。攻撃はしないっス」


ルシ―は低空飛行で飛びその場を去る。



「すまんの、デリカシーなくてのう、ウチの亭主」


「いえいえ、えっと、旦那さんは悪魔さん、ということで?」


「ルシファーじゃ。怖がらせたかのう? 心配せんでも無害な男じゃ」


「お姉さまは、狼の獣人さんのお方ですね?」


「耳、見たことないかえ?」


「初耳、初尻尾です」


「儂はフェンリルのフェリンじゃ」


アルメダは驚く。


「え!? 聖獣?」


「この子は儂の娘、リーリン」


「あの子、かわいいの!」


小さなケモ耳のリーリンは恥ずかしそうにチラチラとこちらを見ている。


「娘と湯あみさせてもらってもええかな?」


「どうぞどうぞ!」


フェリンはリーリンの服を脱がせると、小さなフサフサの尻尾と背中には銀色の小さな翼。


「この親子、神々しい…」


「耳と尻尾、ホントに獣人っているのね…」


聖獣フェリンの見事な大きな尻尾。

胸は推定Gカップ。


「いやー豊穣とはこのことだね」


ボディ・ソープとシャンプー、リンスの容器。


「ん?これは?」


「液状の石鹸と、髪の毛を洗う液です」


「ほう、スプレー式か。原始的じゃがこれは良いフローラルな香りじゃ」


ノゾミは温泉から上がり、

「どうぞご使用ください」


「いいんかい?」


「なんなら何個かお土産に」


「小気味よい女子じゃな。おんしらには独特な背景があるようじゃ。

おそらく、いや間違いなく転移人であろう?」


「はい」


「そこの幼子2人の方は儂の血が混ざっておるぞ」


「え!?」


アルメダとイルメダは驚く。


「言うてもだいぶ血が薄まっておる。この大陸のごく少数の狼族はフェンリルの儂らの血が流れておるからの」


★★


温泉に浸かるタケル、レーデル、シンエイ。


「お゛おぅーー異世界温泉さいこー」


「野湯は初めてだ」


「ボクたちの里には、転移人のクジョウが作った湯治場があります」


「さすが日本人、温泉はいいよな。このテラウスには色々な所にあるんだな」


「この国ではあまり野湯に入る習慣はないな」


「帝国領には割とあります。平民の憩いの場です。そういえば公衆浴場の発端は転移人と聞いたことがありますね」


「過去の転移人たち、いろいろと爪痕を残しているんだな」


「タケルたちも「チキュウ」の知識で、足跡を残しそうだな」


「ノゾミなら何かしら作って功績を挙げそうだ」


「あの動く絵物語、あれが見られるならここに娯楽の革命が起こりそうだ。あれは作れそうか?」


「さすがに液晶や再生機はノゾミでも無理だろう。映画やアニメはオレたち限定だな。

いや、ノゾミなら映写機やカメラ、フィルムとか作れそうか?」


「あれを王様に下賜できるなら上級貴族にでも、金銀財宝でも何でも願いが叶いそうだ」


「貴族なんて興味はないな。

財宝は地球に持ち込めないがここに居る間はコレクションはしたいと思っている。

魔王討伐が終わったら地球に帰ることだし、その時になったらレーデルにも皆にも欲しい物があったら置いてくよ」


「「!」」


「再生機のブルーレイや映画、アニメ、ゲーム機。屋敷や物品も無用だから置いていけると思うぞ」


「「………」」


「いや、さすがにそれは貰えないだろう」


「オレたちが魔王を討伐して帰れるならな。

過去の転移人は皆討伐したんだよな?」


「言い伝えでは倒しているが」


シンエイも頷く。


「勇者の伝記の本もたくさんあります。偽物の方が多いですが」


「オレらで連勝記録が途切れさせたらと思うとプレッシャーだ。四天王が、サタン、デビル、デーモン、ルシファーだったか?」


「そうだ」


「強いんだよな?」


「四天皇や魔王との闘いだが、何度も挑んで勝利する物語がある」


「悪魔や魔王ってどんな姿なんだ?」


「姿絵はあるらしいが平民では見ることはできない。少なくとも貴族以上、上級騎士団、王室関係者だけだな」


「重要な情報は特権階級だけの独占か」


「本の挿絵では想像ですが、頭に角が生えて背中に翼がありますね」


「姿形は地球の言い伝えと同じような感じかな、」


<バッサアー バッサアー>


オデコに2本の角、背中には灰色の翼の男が低空飛行で降りてくる。


「ちわーっス!」


「「「!!!」」」 


仰天する3人。


「あー、大丈夫っス。自分、悪い悪魔じゃないっス」


「「「………」」」


「アッチの娘さんの方から、お兄さんたちがここにいると聞いてきたっス」


「ノゾミらに何かしたのか!?」


「嫁と娘と一緒にいるっス」


「嫁?…娘?」


「フェンリルっス」


「「「………」」」


レーデルは、


「フェンリルって聖獣、の……?」


「そうっスよ」


「魔族と聖獣が、一緒に?」


「いやー、自分には勿体ない嫁っスよ」


「聖獣って?」


「伽話でしか聞いたことないんだが……」


「ボ、ボクも…。伝説ですよ……」


「あなたは魔族、悪魔で、いいのかな?」


「ルシファーっス。

あ、危害は加えないっスよ。顔は厳ついっスけど、こう見えても穏健温和

の人畜無害のルーちゃんで通ってるっス。えっと、入っても?」


「「「……」」」


<ヒソヒソ>

「ど、どうする?」

「いや、魔族はダメだろう」

「ボクも、レーデルさんに賛成です……」


「けど、ここオレらの温泉場じゃないし、断る権利はないと思うんだが」

「しかし、ルシファーですよ」

「悪魔はタケルたちの、いや人類の敵だろう?さすがに…」


「戦闘狂なら、ここに来た時点で攻撃してるんじゃないか? それに温厚そうだし、断れる雰囲気じゃないし」


「ダメなら時間ずらスけど…」(´・ω・`)


落ち込むルシファー。


「メチャ落ち込んでる!」

「本当に悪魔なんでしょうか?」


「なあ、ダメか?」

「…タケルがいいなら…いいけど」


シンエイも頷く。


「ル、ルシーさん、どうぞ」


「あざっス!」(`・ω・´)


ルシーは掛け湯をして温泉に入る。


「お゛ぉぉぉー。極楽極楽、極楽浄土スねー。効くっスー。う゛ぅぅぅーー」


「「「……」」」


「ここの温泉、定期的に来るんっスよー。魔族は長く生きるでしょう?もうねー、身体がガタガタで、ここの湯、腰痛に効くんっスよー」


「「「……」」」


「そう警戒しなくてもいいっス。ちょっと悲しくなるっスよ。悪魔だからって人族からは避けられて、騎士団、傭兵、兵士からは猛攻撃。目の敵にされてもう参るっスよー。自分そんなに悪人顔に見えるっスか?」


ルシーはタケルに尋ねる。


「…その角と翼に問題があるんじゃないか、な?」


「やっぱそっスよねー。けど持って生まれたものだしねー」


「ちょっと厳ついけど、口調からはいい人そう、かな?」


「いやー、分かる人には分かるんスねー」


「ノゾミらの、あっちの方が心配なんだが」


「大丈夫っスよ。嫁は自分より強いし、何が襲って来ても問題ないっス」


「悪魔より、強い?」


「魔王様より強いっス」


「「「………」」」


「ここだけの話しっスよ。自分、魔王様の手下、四天王の1人っス」


「「「………」」」



「……魔王の、手下?」


「最近、魔王様復活してねー。

復活時は昔からの慣例で勅命がくるんスよ。

人族を間引きしろとか、街や村を破壊しろとか。

けどねー、自分苦手なんっスよ、昔から争いや血を見るのがねー」


「「「………」」」


「魔王様も自分の手は汚したくないからって、オレら10柱に命令するだけ命令して、なんにもしないんスよ。それどころか女はべらかして酒池肉林なんっスよ。あり得なくない?」


同意を求めるルシー。


「ブラック企業? なんかよくあるコメディ物のパターンになってきたぞ」


「もうね、自分根は平和主義、敵愾心なんてないっス。過去の勇者と闘った時もデキレなんっスよ」


「ん?…出来レース?」


「世間では壮絶な戦いの末、自分負けたことになってるっスが、裏ではちょっと闘って、話し合いして和解してたっス」


「「「………」」」


「それでまた70年ぶりに魔王様復活でしょ。また今代の勇者が地球から召喚されて来るんでしょ?

いい人ならいいっスけど、正直、会いたくないっスよ」


「「「………」」」


「自分、平和に静かに過ごしたいっス。せっかく意中の獣人と結婚して子供も生まれて、これから成長過程を見守るって時に、魔王様復活? 下っ端は扱き使われてやってられないっスよ!」


「…あの、聖獣と番になったって、本当ですか?」


「4年前に結婚したんっスよ。これがデキ婚でねー。

お義父さん厳しい人で、悪魔には娘は渡さんって。

挨拶に言った時、滅茶苦茶ボコられたっス。羽根も毟られ一時飛べなくて、あれは辛くてヘコんだなー」


<ヒソヒソ>

「……強すぎません?その父親」

「悪魔ってそんなに弱いの?」

「奥さんもその父親もこの人(悪魔)より強い?」

「ん? じゃあ魔王より、強い…えっ?えーー」


「けど生まれてくる子供の為にと、理解あるお義母さんが暴れるお義父さんを半殺しにして説き伏せてくれたっス」


「お義母さま強者過ぎない?」

「この人(悪魔)、本当に悪魔なんでしょうか?」


「離婚の危機まで発展したんスが、お義父さんはお義母さんに土下座で平謝り。

お義父さんからも何とか許しを得て、それから娘も産まれ、今は家族揃って、もう幸せの絶頂っス^^」


ルシーの満面の笑み。


「よ、よかったですね」

「おめでとう、かな?」

「オレたち何を聞かされているんだ? この人、悪魔だよな?」


「自慢の美獣の奥さん世界一っス。子供も可愛くて可愛くて、姿絵見る?見る?

おっと、実物がいるんだ!後で会わせるっスよ!」


「お、おう……」


――

33 魔族ルシファーと聖獣フェンリル 終わり   (83)

34 宇宙                    (84)

――


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