第29話 再びテオタビの街へ (ゴトー編4)
(ゴトー編4)
エルメダの頭にはケモ耳が生えている。
「おぉ、生えとるの…」
ゴトーの眼が光る。
「耳が生えるとはそこまで珍しいものなのか?」
「けっこう希少じゃの。
覚醒の発現は半獣人の100人に1人とも言われておる。
ほとんどは低レベルでそこまで能力が上がるわけではない。
じゃが高LVの者が発現すると、尋常じゃない力を得る言われておるのじゃ」
「LV55から恩寵を受けて5上がったの。
この2日間、魔物と闘ってさらに1上がったの。
小さいAクラスの魔物なら余裕なの。
上位種が現れたらスキルの「疾走」で逃げ切れるの」
「その歳で55だった?
恩寵の覚醒でAランクに? こんなん才能の塊じゃわ」
「エルメダ、尻尾がないようだが」
「え?今そこかい!」
「あるの。専用の服を買わないといけないの。
ゴトーはシッポを見たいの?」
「ぜひ」
<パコーン!>
「ネコパン天狗の全裸男がなに言っとんじゃー!どう見ても変質者が幼女に迫る絵ヅラじゃろうが!」
「ゴトーなら別にかまわないの」
「倫理的にダメじゃ!」
「後で俺がメイに変身しよう。それなら視覚的にも問題はない。第三者から見てもやさしい光景に映るだろう」
「いや、それでもダメじゃろ」
「エルメダ、腹は空いていないか?朝食の余りで照り焼きヘルチキンがある」
「食べるの!」
★★
照り焼きヘルチキンを食べるエルメダ。
「ゴトーの料理は相変わらず美味なの!」
「のう、ゴンダラフが神候補なら、なして教会で扱き使われておるのじゃ?」
「俺が転移した時点では次期神で代理と語っていた。
どうして下界でそのような状況になったかは見当はつかないな」
「神代理のエリートが青服の教会の下っ端扱いはなかろう。そこまで落とす権限を持つんは、現神「ゲンダラフ」神しかいない思うんじゃが」
「・・・現神の怒りに触れたか、か」
「その人は我ら5人に恩寵して、
「あと9994人、これで、戻れる」って言ったの。
不気味な笑顔でブツブツ言ってコワかったの」
「9994人? その数からいけば、1万人恩寵を授け覚醒させんと戻れんとかか?」
「そうなるな」
「出血大サービスじゃの。こうポンポンと覚醒されたら人族と獣人との力関係もおかしくなるかもだぞい」
「シーナと同じく覚醒して、我は嬉しいの」
「仲間じゃの。その年でLV60ならかなりの高みへといくじゃろ。
この大陸では覚醒して名を馳せるなど片手くらいしかおらんのが現状じゃ」
「シーナは覚醒者のレジェンドなの。超有名人なの」
「おいおいエルよ、まあ、そんなことは…あるかもじゃのう。ワッチは、」
「神の恩寵以外、覚醒はどんな時に起こるんだ?」
「え? そこは、もすこし話を広げるとこじゃないんか?」
「聞かずともシーナの実力は認め、過小評価もしているつもりもない」
「お、おう…。さすが、ゴトー。ちゃんと本質を理解してるの」
「うむ。パートナーだからな」
照れるシーナにエルメダは、
「ゴトーとシーナは交わったの?」
「は!交わっとりゃせんわ! 相棒じゃ相棒」
「それはよかったの」
「幼女が何考えとるんじゃい。色気づくのは成人後にせい」
「神の恩威以外、覚醒とはどのようにして起こるものなのだ?」
「うむ。覚醒はいろいろなパターンがあるのう。
悟りでの開眼、精神的な出来事で発現。
他は生死の境目、激痛、強い怨念や憎しみ、拷問や他にも色々な方法や自然現象があるらしい。
女子で稀にあるんは初潮時、初体験、出産時とかじゃの」
「シーナの発生時は?」
「ワッチは初た、言わすな!!」
「ゴトー、照り焼きヘルチキン美味かったの」
ゴトーは頷く。
「父親探しでテオタビの街か。シーナ、少し時間を貰ってもいいか?」
「おう、別にかまわんぞ」
「ゴトーは街まで付いて来てくれるの?日にちは掛かるしそれは申し訳ないの」
「空間転移を使えばすぐだ」
「?」
★★
テオタビの街。
ギルドから出てくるゴトー(メイバージョン)、シーナ、エルメダ。
「サザメダ。父親はこの名で間違いないんじゃな?」
「…そうなの」
「行方不明か…」
「たぶん、もう……」
「きつい言い方になるが、1か月以上戻らんは、そういうことじゃの」
「………」
「まだ姉妹が残っている」
「姉妹の安否か、親なしなら下手したら人買いか奴隷商を当たった方がええかもじゃな。名は知っとるか?」
「アルメダ12歳、イルメダ11歳と聞いてるの」
「よし、情報屋と孤児院を探ってみよう」
★★
「孤児院にもおらん。軒並み情報屋はダメじゃったし、ここが最後か」
「最近の情報屋のトレンドは「バード」という各街にある薬屋らしいの。
リキズイの街もバードの支店から情報を得たの」
薬屋の前。
店の前にうめき声を出してたたずむ男。
「この男「麻痺」と「傀儡」を掛けられておるの」
「珍しいの。シノビのスキルなの」
「シノビ?」
「帝国にはクジョウいう里があってのう。その一族らが好んで使うスキルじゃな。この男、どうみても制裁中じゃの」
「指が折られてるの」
「いらん事に巻き込まれるんも面倒じゃ、さっさと、」
店から銀髪の少年が出てきて男の元へ。
こちらを睨んでくる。
「連れか? 別にこの男に用も含むこともないわ。店の前の木偶の坊が怪しいて、店に入るか迷っておっただけなのじゃ」
少年は無言。
男に着いて来いと命令してその場を離れる。
「東洋系が少し入った顔立ちだな」
「チキュウ顔か? じゃあクジョウの子孫かもしれん。先代転移人の賢者のな」
「転移人の末裔か・・・。クジョウは強いのか?」
「前に話したろう、帝国の闇の暗部じゃ」
「暗殺や諜報機関か」
「クジョウは密殺者と恐れられてるの」
「あの小童は相当腕が立ってそうじゃな。言うてまだまだ発展途上じゃが」
「クジョウか・・・その転移人の下の名前は?」
「名前は知らんのう。エルは知っとうか?」
「知らないの」
「そうか・・・」
「チキュウのその名に因縁がある言わんじゃろうな」
「心当たりはあるが時系列や年齢的には合わない。
気のせいだ、店に入ろう」
薬屋バード店内。
シーナは猫人族の店主に話し掛ける。
「この街で暮らしとる12歳と11歳の女子を探しておる」
シーナの背格好を見て驚く店主。
「とんだ有名人がお越しだな。
依頼は人探しか? 種族、名、LVも分かるなら言ってくれ」
「狼の半獣人。名はアルメダ、イルメダ。
LVは分からん。父親の名はサザメダ。
1カ月前、迷宮で行方不明になっておる」
「その男の娘の情報か」
シーナは金貨1枚(10万円)をカウンターに置く。
「小出しはええ。有益な情報ならもう1枚やるでの」
「サザメダ、Aランク狼半獣人冒険者。
娘が居たかは情報はないな。居たとしても連れ去られたか」
「奴隷商の動きは?」
「ここでの情報の限りこの1カ月間、
ガブルーの奴隷商に3人の子供。
人族男児1人。
獣人は猫族の少女1人。
半獣人の狼族の男児1人。
ヘリタル奴隷商は2人。
人族の少女1人。
半獣兎人の男児。
狼姉妹の該当はいないなようだな」
金貨を1枚テーブルに置く。
「なにか情報があったら頼むわ。また来る」
店を出る。
「絶望的なの…」
「諦めたらそこで試合終了だ」
「試合終了?」
「安西先生のお言葉だ」
「誰じゃいそれ?」
「バスケット・ボールの顧問だ」
「?」
「ばすけっと、ぼーるってなんなの?」
「待て、エル。こういう時のゴトーは話が長くなるで、スルーが一番なのじゃ。聞いてもチンプンカンプンじゃしな」
「・・・・・」
「ゴトー、シーナ、ありがとうなの。後は我が自力で探すの」
「中途半端でやめるつもりはない。何か情報が得られるかもしれない、奴隷商に行くぞ」
「そうじゃぞエル。ゴトーは有言実行の男なのじゃ。
そういや猫族の少女の奴隷って、あの時、金をやった親子の、まさかの」
「あり得るな」
「奴隷商の前に服を買って元に戻らんかい。女子3人じゃ舐められるわ」
★★
古着屋。
男物の冒険服を選ぶメイバージョンのゴトー。
隣りの列から声が聞こえる。
シーナが覗くと薬屋の前で会った少年と、森の中で会った3人の中の1人の少女の姿。
「やっぱそそる服はないねー。綿も白地か黒。これをうまく掛け合わせて、アタシらの服をタケ兄に裁縫してもらうしかないかー」
「タケルさんは仕立てもできるんですか?」
「アタシら2人の姉と違って女子力が高くてねー」
「じょしりょく?」
「針と糸、あと何が必要だろう?」
「ゴトーよ」
「シッ!」
物陰に隠れる。
「そういえばノゾミさんが来る前、有名人を見かけました」
「この世界の、有名人?」
「シーナ・アルフレッタ、亜人のドラゴン・スレイヤーです」
「そういえば、レーデルもドラゴン・スレイヤーのこと言ってたね。興味ある話だ。対戦する時にでも詳細頼むよー」
少女と少年は針と糸を購入して店を出る。
「ワッチの話もしておったが、あの女子、娘じゃないんか?」
「そうだ」
「会わんでええんか?」
「会うのは父親の姿でだ」
「そうか…。さすがにその姿では威厳もなんもあったもんじゃないしの…」
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29 再びテオタビの街へ (ゴトー編4) 終わり (78)
30 奴隷商 (ゴトー編5) (79)




