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第26話 魔蟲スラモ

次の日。

森の中。


野盗軍団との戦闘。


「[マジカル・ファイア!]」


アルメダは火魔法を野盗の1人に浴びせる。

「ぎゃああああああ!!」


悲鳴を上げて地面を転げ回る。


吹き矢を持っている野盗の男は不利と悟り逃げ出す。

タケルは背面から刀を突き刺す。

「ギャッ!」


腹に傷の男は命乞い。

「もうお前らには手はださん!助けてくれ!」


アルメダは呪文を唱えると、手の平から小さな火柱が立つ。

「や、やめろぎゃああああああ」


焼死。

地面には5人の遺体が転がる。


見物しているアヤカは唖然。

ノゾミはビデオカメラで撮影。


「2人逃げました」


「よし、追うぞ」

「はい!」


タケルとアルメダは森の奥へと向かう。


「狼獣人って素早いし、魔法も使えるのね…」


「基本の剣術も魔法も父親から教わっていたからね。

アルちゃんは賢者の立ち位置に近いオールマイティだねー」


「気弱そうな昨日と別人になっていない? 目が恐いんだけど」


「アタシらとは根本的にモチベ違うからね。覚悟を決めた子は強いし、意欲を高めるために襲ってくる者は親の仇、同じ人種と教えた」


「純粋な子を…」


「いや、覚悟を決めたアヤ姉も大概だと思うけど」


「………」


「内発的要因の方が上達が向上するの。アヤ姉は外発的要因だけど」


「外発的って、なによ?」


「個人の外部から与えられる動機、アヤ姉は報酬ね。おっぱいおっぱい」


「アンタはどうなのよ。悪魔とくっつきたいとか。あの子らが聞いたらドン引きでしょうに」


「多様性の時代、目的意識は人それぞれだよ!」


「ホントに頭のネジ外れてるわね」


「逆だよー、よくネジ1本多いと言われてるよー。てへ」


「それ、褒め言葉じゃないからね」


ノゾミは動画を再生する。

シンエイが野盗の1人の背に忍び込み、短剣で喉元を切り裂く。


「これは?」


「早朝に撮ったやつ。

さすがだねー。死を覚悟していたシンエイ少年の脚が復活。

これからの伸びしろに期待だね」


「シンエイのあの脚のこと、何があったの?」


「そこら辺詳しいことは後に話すとうまくかわされてねー」


「事情って、どうみても片足絡みよね……」


「人格も性格もいいし物知りで頭のいい子、姉妹への貢献度も申し分なし。

それ以外のことは話してくれたよ。この世界での戦闘、戦い方。アタシは同ランクの魔物ぐらいなら楽勝と思ってたけど入念な対策は必要だと教えられた。

上位種や経験というアドバンテージに長けた者、ずる賢い者には手こずるかもと。

多用なスキルやギフトで補えるけどそれをちゃんとを理解し、本格的に取り込まないとランク下の人でも魔物でも足元を掬われかねないと教わった。

経験豊かで修羅場を潜ってきた忍び少年からのご教授は今のアタシたちにとっていい指針になるよ」


「転移人の子孫で、忍者か」


「遥か遠くの星から、別の星に忍びの文化が根付いてるなんて胸アツだねー」


「何世代か前の転移人に服部半蔵がいたんでしょ?伊賀とか甲賀とかの子孫じゃないの?

名前がクジョウって、そんな名は聞いたことはないんだけど」


「その名の歴史的人物はアタシの頭の中にもないね。

歴史上に埋もれたとか、作為的に記録に残されなかったり、有能の無名人なんていくらでもいるからね。

2大勢力の他にも、ナニナニ流とかけっこうあるんだよ。分岐したのもあるんだけど、クジョウの名は知らないな」


「何気に忍者関連網羅してるアンタが凄いわ」


「それと「忍者」という言葉は伊賀甲賀の時代にはなかったんだよ。

「忍び」だよ。広く広まったのは昭和の時代小説や漫画からの俗語であるのだよ」



野盗を全滅。タケルは瀕死の野盗の男を連れて来る。

狼姉妹は野盗たちから武器防具を剥ぎ取っている。


「逞しいねー」


「あんな幼い子が、これがこの世界の普通って…」


アルメダは遺体の防具を剝ぎ、イルメダは懐を探っている。


「ぎんか、たくさんあるの!」


イルメダは笑顔。


「この笑顔は、絶やさないようにしないとだね」


「…そうだけど…笑顔は同意だけど、これはちょっと違う種類の笑顔でしょ」


「笑顔に貴賤はないよ!」


「まあ、いろいろ辛い思いをしてきたんだから悲しい思い、顔だけはさせたくないわね」


★★


瀕死の男にヒールを掛けるイルメダ。


「ここまでしか、治せないの……」


「イメージは、心の中に思い描くのが大切なんだよ。

もし、この人がイルちゃんが大切に思っているお姉ちゃんやシンエイだったら?」


「ぜったい助けるの!」


「そう思い描いてもう一回やってみよっか」


「わかったの!」


「アヤ姉、もう一回瀕死に」


「うぅー、もうやめて、くれ……」


「[マジカル・サンダー LV3]」


「ギャアアァァ――ー…」


意識を消失する男。


「もっかいね」


「がんばるの!」


タケルはその光景を見てレーデルに話しかける。


「回復術の修練、女性陣、容赦ないな…」


「略奪や凌辱をくり返す野盗には相応しいと思うが。

チキュウではどんな処罰があるんだ?」


「処罰や量刑を決めるのは裁判だな」


「野盗にも?」


「ここでは裁判はないのか?」


「犯罪者や平民に裁判なんてない。王族、裕福層だけだぞ」


「過去の地球も似たようなものだったんだろうな。

そう思うと今の地球の時代、恵まれていると実感するな」


「良心的だな、チキュウ」



レーデルとタケルは道の脇に野盗の死体を重ね積み上げる。


「ほっとけば獣が喰ってくれる」


イルメダは野盗の所持していた大袋を覗く。


「あ!」


大きい芋虫を手に取り、胸に抱き笑顔。


「生きてるスラモなの!」


イルメダの身長の半分。胸の中で足掻く芋虫。

タケルとアヤカは青ざめ固まる。


「な、なに? あのカブト虫の幼虫の大きい版は…」


ノゾミは鑑定を発動。


「魔蟲スラモ。食用可だって」


「生きたままギュッとしぼるとおへそから出る汁がおいしいの!」


「おー、これは、生々しい」


イルメダが少し力を入れると、お腹から黄色い液が飛び散る。


「イル!もったいない!」


「ご、ごめんなの!」


「ウソでしょ、これ、絶対ムリなやつ、ダメな、やつ……」


レーデルを見ると当然と笑顔で頷く。


「このぐらい大きいのはなかなか出回らない。希少で美味な魔蟲液だ」


イルメダはアヤカに差しだす。


「アヤカ先生、飲むの!」


「………」(汗)


「アヤ姉、文化の違いだから。ここで生まれてたなら、なんの疑いもなく物心つく頃からチューチュー吸ってたよ」


「ワタシ、日本人だから!」


「皮も炒めると美味しいんです」


「モニュモニュしておいしいの!」


「ノゾミ、こういうの、得意でしょ」


「食えないことはないけど、見た目と大きさのインパクトがねー。それの小さい版は食べたことあるよ。

ジャングルでは良質なタンパク源。南アメリカの現地人が生きたまま口にして、アタシもモノは試しと口に含んだら、小さい牙で舌は咬まれるわ、咬んだら生臭いわ、でもシチューみたいなクリーミーで、」


「やめてやめて!」


「その拒否反応はないよー。せっかく弟子が先生にと。

ほら、拒絶の顔にイルちゃん泣きそうになってる」


<シュン>


「え?いや、ノゾミ、なんとかして、お願い!」


「「悲しい思い、顔だけはさせたくないわね」 キリッって言ったばかりだよ。

イルちゃんの笑顔を取り戻すには、笑顔で汁を飲むくらいしか」


「お ね が い!」


「しょうがないなー、アヤ太くんは。「ノゾえもん」がいないとなんにもできないんだからー」


ノゾミはイルの元へと。


「イルちゃん、地球では生き物の生の食文化は限られてるの」


「生、だめなの?」


「そうそう、ノゾミの言う通り。その世界によって食べれる食べれないがあるのよ!」


「たべれないの?」


「そう!」


「生食は寄生虫や衛生的に厳しいの。ポンポン痛くなるからね」


「だいじょうぶだよ。いたくなったことないの!」


「そっかー。だいじょうぶかー」


「うん!」


「じゃあ生はやめて、タケ兄に美味しく火を通して調理してもらおうか。

レーデル、生以外でもOK?」


「死んでいるのならスープにするが、生きて新鮮なら生以外許せないな」


「そこまでかー」


「このままがおいしいの!」


「じゃあ、食べ方はレーデルに従ってね」


「「え?」」


「そろそろ時間かな? アタシは街にシンエイ少年を迎えに行って来るから」


「「ノゾミ!」」


「サラバじゃ、[テレポ]!」


ノゾミは街へと空間転移をする。


――

26 魔蟲スラモ 終わり     (76)    

27 シンエイ・クジョウ     (77) 

――


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