第24話 アルメダ5 映画
広いお部屋。
見たことのない装飾品や絵がたくさん飾られている。
お姉さんは座り心地のいい長いフカフカの椅子に、わたしとイルとシンエイを座らせてくれた。
「おふとんと同じ、フカフカなのー」
イルはフカフカの椅子に興奮。
わたしもお貴族さまのお嬢さんにでもなったような気分だ。
窓ガラスを見ると外はもう暗くなっていた。
お部屋の中は明るく、この家の中だけお昼みたいになっている。
天井の丸い物から明るい光が差しこむ。明かりの魔道具でもこんなに眩しいのは初めてだ。この広いお部屋だけで2つもある。魔石がどれだけ必要なの?
ガラスのテーブルに細長い黒い物。
文字には、「○ONY」
「デンゲン」「ニュウリョクキリカエ」
「サイセイ」「オンリョウ」「チャンネル」「ホーム」
全部知らない言葉。
これもふしぎな魔道具なんだろう。
お姉さんが青い大きな瓶とコップを持ってきて、コップに注いで、飲んでと言ってこの場を離れる。ご飯のとき飲んだ甘いお水だ。
シンエイはなにも言わず頷く。
「あまくて、おいしいの!」
本当に美味しい。
砂糖水でもこんな味にはならない。
ぽかり、すえっと。湖の汗。
こんな味のする湖がチキュウにあるんだろうか?
イルが瓶に触れている。
「やわらかいの」
なんでガラスが柔らかいんだろう?
「ご飯はもうちょっと待っててねー」
この部屋に入った時から隣りのお部屋からいい匂いがする。
「ご飯前の間食はアヤ姉以外しないんだけど、今日は特別だよ」
テーブルに黄色い食べ物?とスプーンを3つ置く。
焼き菓子?
王都で一度だけ食べたことがある。
「卵と牛乳とバニラエッセンス、餃子の皮で包んだエッグタルトだよ」
「たべても、いいの?」
「食べなー、甘いよー」
シンエイは無言で頷くと、
イルはスプーンで一口食べる。
「ほわー、あまあまー!
アルー、おにいちゃん、あまいの!」
皮がサクサクで中がトロトロ。
お砂糖がたくさん入っている。
こんなに甘いお菓子初めてだ。
「シンエイ、こんなの食べたことある?」
「…ここまでのはない」
シンエイでもないんだ。
この焼き菓子は王都で食べた物と比べ物にならなかった。
わたしたちなんて甘いお菓子、数えるくらいしか食べたことがない。
これはもうお貴族さまや王さまの食べ物じゃないんだろうか?
お姉さんは、さっきから四角い板をこちらに向けている。
ふしぎに思っていると目が合う。
「イルちゃん、アルちゃん萌えて映えるから」
もえてばえる?…燃えるじゃないよね…?
「これはバズるわー。100万再生、いいね余裕!
ネットにアップできないのだけが、ここの悩みだよー」
お姉さんとの会話は、半分以上はよく分からないことばかりだ。
「おいしかったのー!
今までたべたお菓子で、一番うまかったのー!」
「じゃあ、その1番をこれからどんどん上書きさせちゃうよー」
笑顔のイルの口元にお菓子のクズがついている。
わたしは口元を拭く。
「いいよーいいよー。ポイント、分かってらっしゃる!」
ぽいんと、ってなんだろう?
「アヤ姉が突然ミネストローネ食べたいって無茶言いだしてねー。
タケ兄がいま急遽頑張って作っているところ。
お話は全員揃ってからということで、晩御飯できるまでテレビで映画を観よう!」
目の前には大きな黒い板がある。
お姉さんは四角い小さい箱の中から薄い丸い円を取り出し、大きい黒い板の下の箱に入れる。
「異世界初心者向け。アヤ姉推薦、映画の題名は「○ァンタジア」。
いせかい、えいが、ふぁんたじあ?
なにが始まるんだろう?
シンエイを見ても首を横に振るだけ。
どこからか音楽が流れて人の声がする。
イルもわたしもキョロキョロする。
黒い板の中に楽器を持った人がいた。
楽器隊?板の中に?
イルは飛び出して板の後ろを覗く。
「???」
イルを連れ戻そうとして、わたしも覗くが誰もいない。
黒い板の横から人の声と音楽が聞こえてくる。
「ここから、声が聞こえるのー。なんで板に人が入ってるの?」
お姉さんを見ると笑っている。
「テレビという魔道具だよー。
人を閉じ込めてるわけじゃないよー」
「まどうぐ、すごいの!」
相変わらず四角い板をこちらに向けるお姉さん。
「こっち、座ってねー」
イルとわたしは椅子に座り直す。
「魔道具、なのか?」
「さっきのショウギの「ごんた」さんが居るのかな?」
「それは、違うと思うが…」
激しい音楽が流れる。
ビックリした!
なにが始まるの?
楽器隊の音楽がしばらく流れ、色のついた絵芝居がはじまる。
色のついた絵が動いている。
本の挿絵がなめらかに動いているようだ。
光の妖精が水辺を飛んでいる。
イルは前のめりになり、口を大きく開け絵芝居に夢中だ。
シンエイの口も半開きになっている。
歩くキノコ、ダンシングフラワーが踊って、
魔魚がスイスイ泳ぐ。
ネズミ族?の獣人が2本足で歩いている。
魔法の帽子?
物語が進んでいくとワイバーンが出てきた。
初めて見た。あんなふうに飛ぶんだ。
街で憲兵と話してくれた男の人も、後ろで真剣に見ていた。
あっという間に時間が過ぎて、絵芝居が終わる。
「すごいの!ネズミ族のネズミさん、スキルでほうきを動かすの!お花の妖精さん、ゆにこーんもお空を飛んで、けんたろうすも楽しそうにみんな笑っておどるの!
レイスやアクマはコワかったけど、おもしろかったの!」
イルは興奮してお姉さんに話し掛けている。
部屋の隅に大きな紙の箱が3つある。円盤を取り出した小さな箱がたくさん入っていて全部に絵が描かれている。
ひとつ目
○ンボ
○ノキオ
○雪姫
○イオンキング
○ラジン
○イストーリー
○の上のラプンツェル
○雪姫って、バサアソ領のお友達が持っていた本?
チキュウのお話だったの?
ふたつ目
○の谷のナウシカ
○空の城ラピュタ
○の勇者の成り上がり
○生したら剣でした
○職転生
○生したらスライムだった件
可愛い目のあるスライムがいる。新種?
みっつ目
○女戦記
○河英雄伝説
○殻機動隊
○の錬金術師
○ルスラーン戦記
○イドインアビス
○える子ちゃん
さっきの本の戦争の女の子だ。
これって、この絵物語を黒い板で見られるとか?
イルが箱の中のひとつを手に取る。
下半身になにも履いていない太ったクマの獣人。
「○まのプーさんだよー」
「このクマさんも、この四角い板にいるの?」
「いるよー、今度見る?」
「みるのーー!」
見れるんだ……。
「ノゾミ、ご飯できたわよ」
★★
食卓を前にイルは興奮している。
見たことのない量とお肉のかたまりに驚く。
イルは料理にヨダレ。拭く。
「座ってー」
いいのかな? こんなごちそうを…。
テーブルに座る。
「自己紹介します。
アタシはノゾミ。
こっちのご飯、お肉大盛りのお姉さんはアヤカ。
シェフのタケル。
ギャラガー領地のアレックス・ギャラガー子爵の5男、レーデル。
みなさん、よろしくね」
一緒にエイガを見た人はお貴族さま!
ギャラガー領地と言ったら大きい商会の?
ん?シェフってなに?
あれ?勇者さまは?
「こちらのお姉さんの方はアルメダ。
妹ちゃんのイルメダ。
シンエイ少年です」
手を振ってくれるわたしを助けてくれた賢者のお姉さん。
シェフと貴族の男の人たちは笑顔だ。
椅子に座ったままシンエイがペコリとお辞儀をすると、
わたしもイルメダもそれに習う。
「お話はご飯の後ということで。
わが家は食べる前に、「いただきます」。
食べ終わったら、「ごちそうさま」と言います」
みんな、いただきますと言ってご飯食べる。
イルはシンエイの顔を伺う。
シンエイは頷くと、イルは満面の笑みで、
「いただきます!」
お肉にフォークを刺し口に入れる。
「あつっ、」
―アルメダ視点― 終わり
――
24 アルメダ5 映画 終わり (74)
25 治療 (75)
――




