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第21話 アルメダ2 ふしぎなお部屋

声を掛けてくれたお姉さんは薬草を全部買ってくれた!大銅貨5枚!

もう1人の方のお姉さんは回復術師らしく、手のすりキズを治してくれた。


「これで妹や友達にご飯食べさせてやることができます」


お姉さんにお礼を言ってその場を離れる。


わたしは周りを注意していなかった。

走るわたしを冒険者が殴ってきて、手に持っていたお金を取られる。


「おい、こいつも掻っ攫って売りにいくか?」

「白昼堂々だ、やめとけ」


「小さくて汚ねえ成りだが、面はいいぜ」

「ここは憲兵の縄張りだ。勝手にエモノに手を出すと因縁つけられ投獄だ」


「しょうがねえ、この金で酒だ酒だ」


薬草の売買のやり取りを見られていた。

注意をしていなかったわたしが悪かった。

動くと脇腹が痛い。もしかしたら、折れたかも……。


「おい!なに子供から奪ってるんだー!」


「あ、なんだ!」


「このクソ野郎が!!」


薬草を買ってくれたお姉さんの怒った声が聞こえたと思ったら、男は壁へ吹き飛んでいった!


「てめー!」


お姉さんが凄い顔で冒険者に近づき、

男の髪の毛をつかみ、アゴを膝蹴りする。


「小さい子になんてことを」


怒った顔のお姉さんが恐くてちょっと震えた。

けど弱い平民を助けてくれる、わたしが憧れる物語の女賢者さまと重なる。


この騒ぎで憲兵がやってきた。

仲間のお兄さんがかばってくれたけど、いばる憲兵ともめて、

もう1人のお姉さんが大きな音がする、魔道具?でやっつけた。

血がたくさん流れて地面を転げ回っている。


「権力を笠になんて、盗賊より始末に負えないわね」


「権力者の理不尽な強奪と性欲丸出しは草生えますわー。

売るって人身売買に加担してるのかな?

アヤ姉、悪党なら治療する必要ないよね?」


こ、こんなことして、大丈夫?

草生えるって、なに?



「ちょっと!この子、ほっとけない」


「いや、ほっとけないって…」


「おいおいタケ兄、美少女の孤児を見捨てていくのかい?」


手の傷を回復してくれたお姉さんが優しく語りかけてくれる。


「ねえ、この街に頼れる人いるかな?」


わたしは首を横に振る。


「この街、好き?」


嫌いだ。

首を横に振る。


「お姉ちゃんたちと一緒にくる?妹ちゃんも一緒に。もっといい街、孤児院を探してあげるよ」


この街から出て他の孤児院に連れて行ってくれる?


お父さんのいないこの街にいてもどうしようもない。

飢えて死ぬか身体を売るしかない。

イルを守ることさえもできなくなるかもしれない。


うなずいて、賢者さまのようなお姉さんにお礼を言うと、抱きかかえてくれる。

もうひとり病気の男の子がいると話したら、もちろん一緒にと言ってくれた。

本当にお姉さんは強くてやさしくて物語に出てくる賢者さまみたいな人だ。


イルとシンエイの所に行くとシンエイの意識がはっきりとしていない。

わたし以外に人がいることも気付いていないようで、もういつ死んでもおかしくない状態だ。


たくさんの憲兵が追ってきた。


「マジカル・アイス・ウォールLV3」


氷の魔法を発動して大きな氷のかたまりの壁を作って、憲兵たちを足止めした。


「ノゾミ」


「ほいほーい。全員、[ワープ!]」


お姉さんがそう叫ぶと皆を連れて一瞬で森の中にいた。


まぼろしと言われる空間転移? 

それも驚いたけど、もっと驚いたのはギフト?魔術? 大きな家を目の前にポンと出したこと。


見たことのない立派なお家敷。


家の中に入って、お部屋の中のベットにイルとシンエイを寝かせてくれる。


回復術師のお姉さんは、「癒し」と言うと、

青い光がイルとシンエイに包み込む。


「んー、だいぶ弱ってるねー」


「あ、あの」


「お姉ちゃんの方はアヤ姉にお姫様抱っこされてた時、癒しを掛けといたよ」


そういえば男に殴れれたところが痛くない。


「ちょっと待っててねー」


お姉さんは部屋を出る。


薬草を買ってくれた強くて氷の魔法のお姉さんが、アヤさんという名前らしい。

空間転移、癒しのお姉さんが、ノゾミさんと言ってた。


賢者さまに、聖女さま?


室内を見わたすとキレイなお部屋におどろく。

イルとシンエイが横になってもあり余る広く大きなベット。

寝床もフワフワでお貴族さまやお姫さまの、寝床?


大きなチェスト。

その横に大きな厚い箱紙?に服がたくさん入っている。

黒やグレイが多く、どれも見たことのないキレイな服。

ちょっと触ってみると肌触りがいい綿だ。

どうみても平民や冒険者の服じゃない。


見たこともない大きな鏡面。


すごい!頭から足まで映る自分の姿を初めて見た。

家に入る前に洗浄スキルを掛けてくれて、肌も服もキレイになっている。

髪の毛はボサボサだけど。


大きなくもりのない透明な窓ガラス。

こんなキレイなガラス、大きな街や王都でも見たことがない。


外を覗くと森の中。

外にはオオカミやケルベロスがウロウロしている。

家に近づけないみたいで、見えない壁にはね飛ばされている。

障壁?結界?家全体に?


あり得ないことばかりが目の前で起こっている。

いろいろ考えないといけないのに、このふしぎなお部屋に目移りしてしまう。


ふしぎな形のイスと、金属の机?

机の上には遊戯道具の「ショウギ」の盤とコマ。

ショウギの本?がたくさん積まれている。


四角い板にはショウギのコマが縦に並べられている絵。

絵とは思えない本物みたいな絵。

縦になってるのに、どうして下に落ちないんだろう?


上には文字と数字が書いてある。


――――

先手 AI ゴン太 [残り58分09秒] 


先手72%○○○○○○○●●●28%後手


後手 ノゾミン [残り36分35秒] [一時停止中]


――――


ちょっと触ってみたら「銀」が前(上)に動いた。


「え?」


先手95%○○○○○○○○○●5%後手


数字が変わった!


「銀」を戻そうと触ると、元の位置に戻った。


先手72%○○○○○○○●●●28%後手


「???」


魔道具?

コワイので触るのはやめよう。



机の下の大きな箱にはたくさんの本が重なっている。


「○女戦記」

「○国機関」

「○日の敵と今日の握手を」


貴重な本がたくさんだ。


女の子の本を手に取りページをめくると文字じゃなくて絵物語。


1枚絵の挿絵じゃない連続した物語の絵。


こんなの見たことない。


小さい女の子が空を飛んで敵と闘っている。


戦争?こんな本あるんだ。

この子、空を飛ぶなんて、それもこんなに速く。凄いギフト持ちだ。


他の本も見てみる。

みんな戦争の本?



本を置きベットに腰かけイルとシンエイを見つめる。


回復のおかげかイルの熱も収まり落ち着いて眠っている。

シンエイはまだ息をするのが辛そうだ。

回復だけでは毒までは抜けない。


お姉さんに毒のことを言った方がいいだろう。

治せるかは分からないけど、治せるなら一生仕えても奴隷になってもいい。

イルとシンエイさえ無事なら、わたしはどうなってもかまわない。


みんなお貴族さまとかなんだろうか?

それなら賢者さま、聖女さまの説明がつくような気がする。

この家のことや珍しい魔道具のことも。


うまく言えないけど、いままで会ってきた、見かけてきた人たちと違う感じがする。

冒険服も見たことない立派な物。

お姉さんに抱っこされたとき、お花のようないい匂いがした。

肌も手もすごくキレイだった。ただの平民ではないことは確かだ。


「ん、んんー」


イルが目を擦りながら起き出す。


「?」


フカフカのベットに驚く。

布団を触ったり、辺りを見回す。


「おひめさまの、おうち、なの?」


ベットから抜け出す。


「イル!」


「お腹はすごくすいてるけど、うごけるの」


お姉さんの回復の効果だ。



イルは鏡面で全身が映った自分の姿を見て驚いてる。


「だれなの?」


「イルよ」


「………」


わたしもイルも雑貨屋にある小さな鏡面をしか見たことがない。

それでもこんなにはっきりとは見えない。


「すごいの、魔法みたいなの」


魔法の域、それか魔道具かもしれない。


「あ!ショーギなの!」


「さわっちゃダメよ」


「あ、服がたくさんなの!」


イルは箱の服を手にキラキラとした目で見つめる。


「イル、さわっちゃダメ」


「キレイなの!」


服を手に広げると、背面に悪魔の絵。


「!」


「え、サタン?」


怯え震えるイルメダ。

<ガクガクブルブル>



シンエイが目覚める。


「…こ、ここは?」


「シンエイ! あのね、冒険者に保護してもらったの」


「…冒険者?」


ドアのノック音。

驚いていると、回復のお姉さんが入ってくる。


「身体はまだ衰弱してる状態だから、軽めで消化のいいご飯を持ってきたよー」


イルは服を手にしたまま固まっている。


「お、気に入ったかい? けどちょっと君には大きいねー。

タケ兄に洋裁がんばって、あ、ミシン、裁縫セット、ないかも!」


「お、おねーちゃん、まぞく、アクマなの?」


「違うよー。アタシの趣味嗜好、好きなだけだよー」


「…にんげん?」


「純人間だよー」


どういうことなんだろう? 

人族と魔族は敵同士。魔族を好きになったりする人がいるんだろうか?


いや、そんなことより、シンエイの毒だ!


「あ、あの、お願いが」


「なにかな?」


「シンエイなんだけど、身体の中に毒が」


「毒?」


「はい」


「なるほどねー。この子、LV視えなくてね、気付かなかったよ」


シンエイはお姉さんに警戒をしている。


「帝国の、コントラ草の、毒だって」


「全然知らない毒だけど、全力出せばまあなんとかなるっしょ。

「[ポイズン・ピュリフィケーション LV 9]」


緑色の帯の光が切断部分に入り込む。


目を閉じたお姉さんの魔法は10呼吸くらいで終わる。


「ふー、レーデルの時と違ってごっそりMP吸われた。すごっ、410も!」


410?この人の魔量って…。


「少年、多分毒はなくなったよ。確認して」


シンエイは楽になったのか起き上がり、ステータスを確認している。


「おねーちゃん、聖女さまなの?」


「いやー照れるなー。内緒だよー」


「すごいの!」


それってもう聖女さまと言いきってる?


確認して驚いているシンエイに、


「身体、どう?」


「…毒が消えた」


「よかった」


「あなたは何者、ですか?」


シンエイが尋ねる。


「一応冒険者かな? いや冒険者だ」 <キリッ>


「ボクたちを助けて、奴隷商人にでも売るつもりか?」


「いやーそうくるかー。価値観が違うねー、売るなら手厚くおもてなししないよ。

姉、アタシいわく、困った人を助けるのに理由はいるのかい?だ」


「しかし、無償では」


「スキルを発動させ少年もこの子らを隠したり、無償で助けていたんじゃないのかい?」


「……」


「まずご飯食べて。話はそれからだ」


数日ぶりの食べ物。

ベットに置かれた3人分のスープに、お水と牛乳。


おいしそうないい匂い。

イルはスープを前にヨダレを流してソワソワしている。


警戒するシンエイを見る。

教会からの炊き出し、買い出しの食料、食べる前にいつもクリスは毒味をしてくれていた。


わたしたちがだまっていると、お姉さんは察したようだ。


「お、毒味かい?そりゃ訳も分からないこの状況下、勘繰りもするか。

生き残る為にどんな事態でも警戒を怠らない姿勢。これは見習わなくてはだ」


お皿をシンエイの前に置く。


「アタシが毒味してもいいんだけど、どうする?」


シンエイはいつものように匂いを嗅いで少しずつ毒味して、わたしたちに頷く。



「ごのスープ、おいしいの!」


「インスタントだけどね」


やさしい味のするスープ。

具は見たことのない白いツブツブ、美味しすぎる。


「このお水、あまいの」


「清涼飲料水だよー」


この甘い飲み物、いくらでも飲める。


みんな食べ終わる。


「おいしかったの、おねーちゃん、ありがとーなの」


「うんうん、いまは体力つけるんだよ。

お目目トロンとしてるね。お眠なら寝てもいいんだよ」


イルは満足して横になり眠りにつく。

シンエイはまだ警戒してお姉さんを睨んでいる。


「ずっと気を張ってたんでしょ。少し休みなさい。

体力取り戻さないとこの子らを守ってやることもできないよ」


「………」


シンエイは横になり安心したように目を閉じ眠ってしまった。


すごい、お姉さん。シンエイの警戒をといた!


お姉さんはわたしを見てニコニコしてる。


「いい彼氏じゃないかー」


「え? ち、ち、違う……」(////)


「どれ、眠くないならちょっとお話を聞かせてもらおうかな」



お父さんの仲間が家に来て、冒険中死んだと聞かされたこと。

家から逃げて、シンエイが助けてくれたこと。

薬草を買ってくれたところまで話し終えると。

お姉さんはギュっと抱きしめてくれた。


「頑張ったんだね」


いままでイルの手前、ガマンしていた涙がポロポロとあふれ出てきた。

お姉さんの胸のぬくもりは温かかった。


そして、わたしはいつの間にか眠ってしまった。


――

21 アルメダ2 ふしぎなお部 終わり    (71)

22 アルメダ3 シンエイの事情      (72)

――

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