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第16話 薬草売りの少女

テオタビの街。

雑貨屋と古着屋を巡り、

買い物を終えるタケル、アヤカ、ノゾミ、レーデル。


「どうする? この街で一泊していくか?」


アヤカは両手に肉の串を持ち、


「却下よ。お肉は妥協したけど寝床まで妥協するつもりはない」


「異世界宿、興味ない?」


「最低限ビジネスホテルくらい清潔じゃなければ泊まるつもりはないわ。お金も掛かるし、家があるんだからそれで十分でしょ」


「レーデル、街から出られるか?」


「別に禁止はされてないからな」


「門を出なくても、目立たない所で転移でいいんじゃない?」


「人気のない所に行くか」


4人は路地裏を探す。

途中、大通りで10代の少女が籠を持ち、


「薬草はいりませんか? 早朝に摘んだ採れたてです!」


汚れた服装、痩せ細った少女は道行く人々、冒険者に声を掛けている。


アヤカはその光景に衝撃を受ける。


「あの子、草を売ってるの?」


「力仕事もできない子供は物乞いか薬草売りだ」


「売れるの?」


「加工品じゃない素のモノはそうそう売れない。

ギルドでも余っている過剰な薬草は買い取ってくれないだろう」


「この光景は地球の歴史上、途上国ではままある現実だね」


「親が居るかは分からないが、

保護者が迷宮や秘境から帰って来ず、浮浪児になるのはよくあることだ」


「施設とか孤児院は?」


「どこの街の児院も満杯だろう」


「じゃあ、あぶれた子はどうやって生活して食べてるの」


「貧民街の地域で過ごし、週に何度か教会での炊き出し、それ以外はゴミ漁りか、施しだ」


「信じられない。行政は何してるのよ?」


「福祉もNPOの子ども支援なんてないよ。この国の体制じゃ数百年後かな?」


「奴隷制度とか存在するのか?孤児狩りとか」


レーデルは頷く。


「飢えて死ぬか、娼婦か、奴隷商に捕らえられ売られるか。

一応人身売買は違法なんだが横行しているのがこの国、大陸の実情だ」


「タケル、お金!」



「朝に摂ってきた新鮮な薬草です!」


「ねえ、1本おいくら?」


「はい。…銅貨2枚(200円)です」


「全部いただくわ」


「え?」


薬草の束を持ち、


「20本くらいあるわね。大銅貨5枚(5000円)。足りる?」


「い、いいんですか?」


「欲しかったのよ、はい、お金」


「ありがとう、おねえさん!」


少女の手は擦り傷だらけ。


「ノゾミ」


「はいはーい」


ノゾミはしゃがんで目立たないように癒しをかける。

青白い光が両手を包み、傷は消え去る。


「ほわー、聖女さまみたい」


「ないしょだよー」


「ありがとう、おねえさんたち」


「ねえ、親はいるの?」


「たぶん、死にました…」


「家は?」


「…ないです」


少女は大銅貨を握りしめ、満面の笑みで、


「これで妹や友達にご飯食べさせてやることができます」


「………」


「ありがとう!」


少女は笑顔で駆け走って行く。

アヤカはその姿を見ながら、


「こんなの気休めだって分かってるわよ」


「アヤ姉らしいよ。

そしてアタシも同じ気持ちだ。ここは異世界ではお約束の保護を、」


「マズイな。あの子狙われるな」


「え?」


少女が駆け走る先に2人の中年男。


「冒険者崩れだ。金を渡したところを見られてた」


男たちはニヤニヤと笑い道を立ちふさぎ、抵抗する少女の大銅貨を奪おうとする。


ノゾミが空間収納から銃を出す前に、アヤカは少女の元へ駆け走る。


「おい!なに子供から奪ってるんだー!」


「あ?なんだ!」


「このクソ野郎が!!」


驚く男にアヤカは脇腹を蹴り、壁へ吹き飛ばす。


「てめー!」


もう1人の大男が短剣に手を触れたと同時に、髪の毛を掴み膝で顎を砕く。男は顔面からモロに地面へと倒れる。


「小さい子になんてことを」


項垂れ悶絶する男。


アヤカの形相、倒れた男たちに怯える少女。


ノゾミたちは駆け寄る。


「やっちゃったねー」


肋骨と顎を砕かれて、うごめく男たち。


「やり過ぎた。ノゾミ、その子のケアを。

タケル、2度とするなと脅しておいて」


アヤカは道に散らばった薬草を拾う。


ノゾミは地面に転がった大銅貨を拾い少女に渡す。


「こわかったー? だいじょうぶかなー」



「アヤカ、凄いな…」


「正義感が強すぎて頭に血が上ると、たまにな」


「正当な理由があるなら力は正義だが、重症のままじゃ見目が悪い。役人や憲兵には難癖をつける奴もいるから気を付けた方がいい」


3人組の憲兵が遠くから騒ぎを聞きつけ近づいてくる。

憲兵は威圧的な態度で、


「説明しろ!」


レーデルは憲兵に事情を説明。


「この男らは女の子の金を奪おうとした。こちらは悪くない」


憲兵は薬草を拾うアヤカを睨み、


「見かけない顔だな。新人か?」


「オレたち、この街は初めて来たんだ」


「誰がコイツらを痛めた?」


レーデルは銀貨を1枚を憲兵に握らせ、


「オレがやった。すぐ憲兵が飛んでくるなんて治安がいい街だな。問題ないだろう、行かせてもらう」


憲兵はアヤカを下卑た表情で見下す。


「ダメだな、連帯責任、聴取だ。来い!」


「ちょっと待ってくれ!」


「ここは冒険者の街、貴重な人手に暴力はご法度だ」


「ご法度はギルドの中や公共の場に限るだろ。

そいつらは冒険もせず小さな女の子から小銭を奪ってるんだが。誰が見ても非はコイツらだ」


「おい、コイツも仲間か?」


もう1人の憲兵がノゾミに近づく。


「仲間ならコイツも同罪だな。よし、お前はオレが相手だ」


「男どもは有り金で許してやる。牢屋よりマシだろ、全部吐き出せ」


3人目の憲兵がタケルの刀の鞘を見る。


「おい。これカタナじゃないか?」


「あ? いい物を持ってるな。それは徴収、窃盗容疑だ」


ノゾミの腕を掴む憲兵。


「へへへ、まだ若いが、綺麗な顔立ちだ」


「チッ、オレはこっちのガキか。親なしなら、いっそ売っちまうか?」


発砲音が響く。


「ギャッ!!!」

 

憲兵は悲鳴を上げ、血まみれの股間のまま転げ回る。


「な、何をした!」


アヤカは叫ぶ憲兵の脚を蹴飛ばし、

倒れ地面に突っ伏した頭を蹴り上げる。


「ここの警察は、盗賊より始末に負えないわね」


「治安を守る側が強奪と性欲丸出しは草生えますわー。

売るって人身売買に加担してるのかな?

アヤ姉、悪党なら治療する必要ないよね?」


「治すつもりはない。一生今日の事を後悔して過ごせばいい」


「おー、覚醒マイさんのセリフだ」


アヤカは倒れた憲兵の急所を思いっきり蹴り上げ気絶させる。


残った憲兵は鞘から剣を取りかまえる。


「撃っていいのは、違う違う。

剣を構えていいのは…違うな。

一戦を交える覚悟があるなら…、

あれ、銃じゃないと決まらない?

それにこんな小物に使っていい決めセリフじゃない、もういいや」


ノールックショットで憲兵の股間に撃ち込む。


憲兵は悲鳴を上げながら地面を転げまくる。


周りの群衆が歓声を上げる。

「うおおーー!」

「ザマーミロ!クソ兵が!」

「よくやった、姉ちゃんら!」



「やってしまったか…」


「できるだけ悪目立ちしないとか言ってたよな?」


「アヤカ自身がな」


「チキュウの女ってこんなに過激で強いのか?」


「この2人は別格かも、オレより強いかも」


群衆の中の中年男が、


「早く逃げろ、すぐに別の憲兵が来るぞ」


「あ、ああ」


「ちょっと!この子、ほっとけない」


「いや、ほっとけないって…」


「おいおいタケ兄、美少女の孤児を見捨てていくのかい?」


ノゾミはオロオロとする少女に優しく話し掛ける。


「ねえ、この街に頼れる人いるかな?」


少女は首を横に振る。


「この街、好き?」


首を横に振る。


「お姉ちゃんたちと一緒にくる? 妹ちゃんも一緒に」


「………」


「もっといい街、孤児院を探してあげるよ」


恐る恐る頷く少女。


「よし、案内して」


「ありがとう…」


少女はアヤカの元へ。


「お姉さんも、ありがとう」


アヤカは頭を撫で、少女を抱きかかえる。


「あ、わたし、汚いから」


「汚くないよ、さあ、どこ?」


「す、すぐ、そこの、曲がったとこの路地を」


少女が指示を出すとアヤカとノゾミは路地へと走る。

タケル、レーデルも後を追う。


「アヤカは、チキュウでもこうなのか?」


「もう少し空気が読めると思っていたが。

いや、小さい頃いじめっ子に対してこんなことがあったか。

理性より感情優先タイプだな。

ノゾミはまあ、いつもあんなペースだが」


「デカイ音だったが、あれは昨日の「らぴゅた」で空賊や憲兵が使ってたジュウってやつだよな」


「そう。さすがに憲兵に手を上げるのはマズかったよな」


「重罪だな」


「お尋ね者か?」


「街や領主にもよるが、アイツらは一番下の序列の下兵だろう。街の恥部はできるだけ他領地に晒したくないなら、この街以外は問題ないと思う」


「この街から出れば問題ないな」


「だがこんな調子で問題を起こしたり、特に貴族連中に手を出すと懸賞金付きで捕まったら極刑だ。

あと、孤児なんていくらでも道端にいるぞ。大丈夫か?」


「…どっちも、不安になってきた」


路地裏を駆け抜ける。


「ここ」


アヤカは少女を降ろす。


少女は誰もいない大きい建物の軒下に声を掛ける。


「シンエイ」


誰もいない空間から一転、地面に衰弱して横たわる幼女と、その横に座る10代の少年の姿。


「急に現れた!いや、元から居た?」


「この子は?」


「わたしたちと同じ身寄りのない子。ずっとここにいて、わたしや妹を見てくれてる」


「みんな美形だねー。

治安の悪いここで無事なのはこの少年の「空間認識阻害」のおかげかな?」


少年は片足を失っており妹共々栄養失調、衰弱している。


笛の音。


「追ってきた!」


「憲兵の増援か」


数人の憲兵が路地に入ってくる。


「[マジカル・アイス・ウォール LV 3]」


アヤカの氷魔法で壁を創り、憲兵の行く手を阻む。


「ノゾミ!」


「ほいほーい。全員、[ワープ!]」



――

16 薬草売りの少女 終わり  (66)

17 保護           (67)

――



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