第13話 テオタビの街
-3日目ー
翌日。
テオタビの街。
「エットー商会 テオタビ支店」
看板には月と狼のエンブレム。
店主は武器、魔物の素材を鑑定している。
棚には数々の武器、防具が並ぶ。
ロングソード。皮の防具。金属の防具。
日本刀。鎖鎌。鎧。
タケルとノゾミは感心したようにそれらを眺める。
「洋と和、入り乱れて無国籍ぽいねー」
「半蔵モデルの手裏剣、この撒菱、欲しいな」
「沖田総司の名の刀とか、もう転移人の名前を借りたブランド物じゃん」
「この青い液体、クリスタルの瓶は例のアレ(ポーション)だよな!」
「スワロフスキーの香水瓶みたいだ。ガラスの加工も転移人の技術かな?」
「これは手に入れないとだな。金貨1枚、日本円で10万くらいか」
「鑑定したけど回復中程度かな?」
「ちょっと、全員に回復魔法があるんでしょ?」
「コレクターズ・アイテムを集めるのも異世界での楽しみのひとつだよ」
「そうそう、アヤカが○ィズニーのグッズを集めるのと同じだ」
「は? 一緒にしないでよ」
「人それぞれの嗜好に貴賤はないよ! カワイイもカッコイイも正義。
異世界アイテム、コンプリートは基本中の基本だよ」
レーデルが店主と話し合いカウンターから戻ってくる。
「買い取り価格は金貨3枚。銀貨4枚。大銅貨5枚だ。妥当な金額だと思う」
「ありがとう、それで頼む」
「34万、森の浅瀬でこのぐらいか。楽勝だねー」
「思ったよりお金になるのね」
「じゃあ、このポーション買っちゃおうか」
「無駄使いはダメよ」
魔獣の素材、盗賊の武器などの買い取りを終えて店から出る。
道の左右には石壁の建物が並ぶ。
にぎやかな喧騒で人や馬車が行き交い、所々に屋台が並ぶ。
「異国情緒があるねー」
「本当に昔の中世の世界ね……」
「店主から魔王復活の噂があると聞いた。
各領地でゴブリンやコボルトが沸いているらしい。
国は厳戒態勢を敷くらしく、強制ではないが依頼や魔物退治、領地越えも控えるよう促している」
「魔王、そういえばそんなイベントもあったねー」
「それ、オレらの主目的だからな」
「最初っから飛ばしてもね。アタシたちの実力も未知数。
闘い方、魔法の練習、お金に人脈、少しずつ地盤を固めなきゃ。
冒険者ギルドのイベント、どうする?」
「ギルドの前に、教会に行ってLVを確認するんだよな」
レーデルは心配そうに、
「80越えのLVなんて、トラブルの元なんだが」
「レーデル、この街の教会は「真龍神教教団」とは関係あるの?」
「この街に教団はないが警戒はした方がいい。
どこの領地もそうだが、高LVは領主次第で抱え込もう、利用、下手したら束縛されて動けなくなる可能性もある」
「力押しで回避もできるが、転移人の存在はバレないに越したことはないか。ここの領主はどんな感じなんだ?」
「この街は金を落としてくれる冒険者には好待遇の印象だな。逆に街の平民や弱者には厳しい、というか、無関心らしい」
「典型的なダメ領主のパターンだね、それ。衛兵とかも権威を笠にしてる感じかな」
「ギルド加入は慎重にして一旦保留にしよう」
「まず、目的の鍋と食器を購入しましょう」
雑貨屋へ移動する為に4人は歩く。
「商人の件、考えてくれたか?」
「さすがにそれは甘えられないだろう」
「ノゾミに任せれば大概上手く事が運ぶと思うぞ」
「ノゾミは「チキュウ」では商人だったのか?」
「この世界での商人みたいなものか。いろいろ会社を興してるらしいが、詳しいことは知らん」
「兄妹なのに?」
「家では一緒の生活だったが、なかなか3人一緒に揃うこともなかったな。
それでも仲はいい方だと思うぞ」
「皆は何歳なんだ?」
「オレは18歳。アヤカとノゾミは17歳だ」
「若いな。賢者で女神で、商神か……」
「性格はアレだし、そんな崇めるほど大層な子じゃないぞ。
商会立ち上げはオレらも強力は惜しまない。ゆっくり考えてくれればいい。
決心がつかないとしても一緒に行動してくれるなら助かる。オレたちはまだこの国の常識も疎いしな。妹たちもレーデルなら問題ないと言ってくれてる」
「いいのか? 世話になってばかりだが」
「買い取りもレーデルのギルド身分証のおかげで全額だし、助かる」
「役に立ててるなら、嬉しい申し出だが」
「一緒の間は倒した魔獣の素材は均等に分けて渡すからな」
「え? いやいや、貰えないだろう!」
「妹らも同意、うちらのルールだ」
「………」
櫛焼き肉の屋台の前。
「アヤ姉、この香ばしい匂いどうよ?」
「どうもしない。レーデルもピックマンの肉とかあると言ってたし」
焼け滴る分厚い肉。
「これもう、お肉の主張じゃん」
「………」
「露店の女王の名が泣くよー」
「誰が女王よ。この世界の食べ物に興味はなし。地球のがあるし」
「それなんだけど、あんなのすぐ足りなくなるよ」
「は? どれだけ頼んだと思ってるのよ」
「お米派のアヤ姉は1食2合は食べるよね。
朝昼晩で6合。お米一袋10キロは66合。10日ちょいで食べ切る事になるよ。
頼んだお米は10キロ×10。
3ヶ月の100日で消費する計算。
アタシたちも食べるから、とても100日は持たないねー」
「……なんで、100キロ分しかないの?」
「食料はアヤ姉が率先、指示してたよね」
「………」
「カップ麺、インスタント系も全部合わせて約1000食。
アヤ姉はオヤツで1個か2個。夜食で1個食べるから1日3個ペースで10日で30個。100日で300個。
アタシたちもたまに食べるから、全然1年持たないじゃん」
「………」
「お肉もお魚も然り、節約の為、「テラウス」産でお腹満たさないとすぐなくなっちゃうよ」
「一桁間違った?」
「だねー、お米は、×100だったね。それでも2、3年かー」
「レーデルはこの世界にお米はあるって」
「この国では気候柄育たなくて、輸入品も高いよ」
「………」
「森で倒したピックさん、言葉を理解して理性あるならさすがにアタシも躊躇するけど、四足の豚さんが、ただ二足歩行に進化したと思えば忌避感薄れない?」
「……薄れる、かな?」
「アヤ姉の気持ち次第、衝動のままだよ」
「………」
★★
街の商店の雑貨屋。
生活必需用品が所狭しと並んでいる。
鍋。フライパン。寸胴。
木の皿。箸。コップ。フォーク。
ノゾミはこっそりと質を鑑定して、アヤカはそれを元に吟味する。
棚。
玩具。対戦ボードゲーム。
「麻雀やトランプもあるんだな。マトリョーシカ、けん玉、ベーゴマ……」
「トランプは、どの層にも人気の遊びだ」
「ローマ字の時計もあるし、こうみると70年以前の物が広まってるんだな」
「1950年以前だね」
「転移人の活動は主に帝国だった。作った物は今まで帝国が独占。
闇入手でこの国の貴族が使ってたが、最近では帝国の情勢が悪化してて色々なモノが流れてきて平民にも広まりつつある」
奥の本棚には豪華な装丁の本が並ぶ。
歴史本。資料。地図。娯楽本。
一部に日本昔話、外国の物語。
「この「モモタロー大迷宮を争覇」が気になり過ぎる、値段高いな」
銀貨3枚(3万円)。
「転移人作かー」
新作の「ウラシマタロー」の表紙には、小舟で大王イカと刀で闘うタローらしき人物。
「絶対、改変されてるよな」
「ウケるー」
「転移人の冒険活劇物や娯楽本は人気あるぞ」
十字架や聖水。
数珠、神社のお守りが並ぶ。
「これも転移人由来か」
その横に、団扇とハリセン。
「団扇はあってもおかしくないが、ハリセンって何で? いつ使うの?」
「オレも初めて見かけたな。どう使うんだ?」
「使い方は、頭をはたくしか思いつかないが」
「はたく?」
若い男の店員が話しかけてくる。
「お客さん、それこの前、売れたよ」
「売れるのか?」
――
別作品
(第40話 買い物をしよう)
読まなくても大丈夫です
――
「帝国から流れたモノを、うちの商会が大量に買い取ったはいいが、どこの店でもそれ売れなくてね。
誰に聞いても用途は不明だったが、この前来た客で理解したね。あれは見事な使いっぷりだった」
「それって、ボケた人間に対して頭を叩く行為か?」
「やはりそんな使い方か。アンタ、帝国の人?」
「…ああ、近く、かな」
「何しとるんじゃワレィ!」
パーンと、店員はハリセンでもう1人の店員の頭を叩く。
「あれは笑ったな」
「な!」
店員2人は笑う。
「まあ、分かったところで、需要はなさそうなんだがな…」
「この世界で掛け合い漫才とかは、ないよな」
「…まんざい?」
「舞台で、2人で滑稽な仕草や会話をして、1人がツッコミのハリセンを持ち、ボケた相方を叩くとか。それで笑いをとるんだ」
「酒場で声楽隊や吟遊詩人。噂話を語る漫談や落語はあるがな」
「落語も浸透してるのか。そうだな、落語を2人でやる感じが近いかな?」
目を輝かせる2人の店員。
「なるほど。面白そうだな!ボケて叩いて笑いを取るか。新しいな!」
「兄者!猛烈にインスピレーション湧いてきたー!」
――
(ピコーン!)
異世界で空前のお笑いがブームが巻き起こり
後にこの兄弟 「ハリセン タロージロー」として
第1回 レイブル王国 R1グランプリで優勝します!
(注) 作中そこまで話しは進めません
――
「いいのか!?そのアイディア貰って!」
「あ、ああ。いいぞ」
「兄者、これイケるんじゃないか?」
「イケるな、弟者!」
「これはもう、ラノベ系初の異世界漫才ジャンル進出だね!」
「それは熱いな! これもうスピンオフ案件だろう」
「お兄さんたち、これはお笑いの革命だよ! この国を笑いの絶えない世界にしてみないか!」
「「オレたちが?」」
「モテますぜー、芸人は」
「「モテるのか!?」」
「これはもう、バカな殿さんと、ダッチョウさんクラブのお家芸を伝授しなくては!」
「おー、いいな、それ!」
「タケ兄、変なおじさんを披露だよ!」
「よし、」
<パコーン!> <パコーン!>
アヤカはハリセンで2人の頭を叩く。
「バカなことやってんじゃないわよ!」
「信じてたよ、アヤ姉!」
「昔から隙が無かったからな」
「うるさいわ!別の世界で恥晒すな!」
「お笑い革命なのにー」
「あっちに、天狗の面やナマハゲがあったわよ」
「ナマハゲあるんだー」
棚の壁。
ペストマスク。鳥の嘴型の仮面。
ひょっとこ面。鬼の面。お多福面。狐面。
般若面。能面。天狗の面。ナマハゲの面。
「各国有名どころのお面か。ナマハゲだけローカル感があるな」
「ここでは伏字しないと言えない、○ッキーさんや○ェリックスさんがある!」
本物と造型が違うネズミーのお面。
「なるほど、1950年以前はこんな感じだったかー」
「パチモンみたいな造りだな」
「違うわ、これは初期の○ッキーよ!」
「お、専門家が」
「なかなか興味深いわね」
「地球から遠く離れた地の○ッキーさんか。歴史的価値大ありだね、買う?」
「…いや、いいわよ」
「愛好家としては、垂涎の一品じゃない?」
「買っても地球に持って帰れないでしょう?」
「帰るまで、愛でまくるんだよ!」
「………」
店員がやってくる。
「お面も売れないんだよな。安くするぜ。
そういえばハリセン買った親子、一緒に天狗の面も買っていったな」
「天狗?…え!?それって」
「親子ということは、あの時の森の金髪幼女とお父さん?」
レーデルは驚く。
「金髪幼女?」
「レーデル助ける前に、アタシたちのお父さんを見かけた話ししたよね。その時、10歳くらいの幼女さんと一緒にいたんだよ」
「その子は金髪だった?」
「うん。アタシの見立てでは亜人系。自信はないけど」
レーデルは店員に、
「その親子の子供って、亜人のヴァンパイアで金髪だったか?」
「フードを被ってて、亜人かも分からないな」
「会話の後に、「のじゃ」「なのじゃ」と言ってなかったか?」
「それは、言ってたな」
「シーナだ!」
「その子ってパーティが全滅した時、キングと闘った魔術師?幼女だった?」
「そうだ。歳はオレの3倍。呪いで小さくなったんだ」
「ファンタジーきたねー」
「良かった…生きてた……」
「さすがお父さん分かってるね。連れは「のじゃ」言語のツッコミ上手のヴァンパイアー幼女。これ以上のない異世界相棒キャラだ」
「ちょっと、まだ父親と決まった訳ではないんでしょう?」
「状況的に9分9厘かな?」
胴鍋 1個 銀貨3枚(3万円)
大鍋 2個 銀貨1枚(2万円)×2
小鍋 3個 銀貨1枚(1万円)×3
木の皿 20個 大銅貨2枚(2000円)×20
木の茶碗 20個 大銅貨3枚(3000円)×20
木のスプーン 20個 銅貨3枚(300円)×20
木のフォーク 20個 銅貨3枚(300円)×20
木の箸 20膳 銅貨1枚(100円)×20
まな板 1枚 大銅貨2枚(2000円)
包丁 1丁 銀貨2枚(2万円)
○ッキー・マウスのお面 大銅貨2枚(2000円)
購入。
オマケ 天狗の面 ハリセン
「次は異世界ビンテージショップだよ!」
――
13 テオタビの街 終わり (63)
14 魔法少女マジカル冥土マイ (64)
――
次回、ゴトー編




