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君と僕の秘密の三ヶ月  作者: 明星
君の夢
3/3

僕らの努力

夏休みが明け何週間かたった今日ついに実力テストの二週間前となった。この学校は一応進学校なので、テストで赤点を取ったらしっかりと放課後に補習があるのだ。

そして、宿題の量も増える。そのため普段みんな勉強していなくてもテストが迫ると勉強に熱心になる。僕も普段は勉強をする方ではないが最近は徹夜で勉強している。また、僕は彼女と一緒に放課後勉強をしているのだ。なぜかというと、何日か前の昼休み彼女からあるお願いをされたからだ。


静かな屋上で彼女と弁当を食べる。最初は気まずいこともあったけど、最近この空間に慣れてきた。あの日以来彼女と夢の事について話していない。きっと近頃夢を見ていないのだろう。僕は昔眠りが深いと夢を見ず、眠りが浅いと夢を見るとどこかで聞いたことがある。なら、良く寝れているようで何よりだ。それにしても今日はいつもにまして心なしか彼女がそわそわしている気がする。

そんなことを思っていると、急に彼女がこっちに振り向いてきた。何かを言いたそうに口をパクパクしている。まるで、餌を食べる魚のようだ。

「そんな魚みたいな顔されても困るんだけど」

「魚とは失礼だなー」

「魚に失礼だと思うよ」

私は魚以下ではありません、というように頬をぷくっとしてきた。しかし、すぐに真剣な顔になった。普段笑っていることが多い彼女が真面目な顔をすると、僕も自然と真面目な顔になってしまう。そうして、沈黙が僕らを包んだ。僕は彼女が口を開くのを待つことにした。三分程たち、彼女が何かを決心したようで話始めた。

「実は、昨日夢を見て…」

「その夢がどうかしたの?」

「うん」

これほど落ち込んでいる彼女をみたことがない。きっとすごく辛い夢だったのだろう。僕は覚悟を持って聞いた。

「どんな夢?」

「それが…私がテストで赤点を取る夢」

「えっ、それだけ?」

僕は彼女の様子から、てっきり誰かが事故に巻き込まれてしまうとかそういう夢かと思っていた。彼女は態度は大袈裟すぎる。

「それだけってひどいなー大変なことだよ」

まあ、でも彼女みたいな友達が多くてよく遊びに行く人にとっては大変なことかもしれない。もし赤点を取ってしまうと補習を受けないといけないため、友達と遊ぶことが少しの間できなくなる。そう考えると、赤点を取る夢を見た彼女は今とてもピンチの状況なのかも。だが、赤点を取らない方法はある。

「そんなにテストがやばいなら、勉強を一生懸命すればいいんじゃないの?」

簡単なことだ。赤点を取らないように勉強を頑張ればいい。うちのテストはそんなに難しくなく、勉強をしていれば大体は解ける。

「そうだよね。私もそう思って頑張っているんだけど、私の見た夢が現実にならなかったことがほとんどないから不安なんだよね」

彼女の夢は確実に当たるらしい。ということは彼女がどう頑張っても次のテストは赤点を取るのだろう。彼女が横で大きくため息をつく。こっちまで暗い気持ちになってきた。すると、いきなり彼女が、にこにこしながらこっちを見てきた。すごく嫌な予感がする。

「と、いうことで私に勉強教えてください!!」


それで、放課後勉強を教えているが、如月さんの実力には驚いた。国語や英語の文系科目は僕よりはるかにできているのに、数学や化学の理系科目が全く理解できていなかった。幸いにも僕は理系科目が得意なので教えることができるが、正直厳しい。

「もー今までの私何してたの‼︎あと、二週間しかないよ〜」

如月さんも自分の危機に気付いたようで過去の自分を恨んでいる。けど、こうなったら以上テストギリギリまでできることをするしかない。僕らはさらにペースを上げ、放課後も学校が閉まるギリギリまで勉強した。普段は行かないが、分からないところは先生に聞きに行った。先生は僕らを見て驚いた目をしていたが、嬉しそうに丁寧に教えてくれた。そして、教えてくれた後に頑張れよと言ってくれた。僕は今まで先生に分からない問題を聞き行く時にこんなのも分からないのとかこれ授業でやったでしょと思われたら嫌で聞くのが怖かったが、これは大きな誤解だったようだ。これに気づけたのは如月さんのおかげだ。

そうして、テストまであと一週間となった。如月さんの成長はすごく、基礎問題はもちろん応用問題も少しずつ解けるようになっている。これは、きっと如月さんの努力の結果だろう。このままいけばテストはなんとかいけそうだ。僕も如月さんに負けないよう過去一勉強した。


「あー疲れた〜」

昼休み、僕の横で大きく伸びをする如月さん。

「流石に疲れたね。で、テストはどうだった?解けた?」

そう、今日はテストの日だった。午前中に如月さんにとって山場となる数学と化学のテストがあった。

「それが…」

そこで如月さんが言葉を止める。やっぱり夢には逆らえなかったのだろうか。僕が落ち込んだ顔をしていたのだろう。如月さんが僕に向かってにこっと笑った。

「びっくりするぐらい過去一解けた‼︎」

その言葉を聞いた瞬間、一気に緊張が解けた。まだ、テストが返却されたわけではないので安心はできないが、ほっとした。

 

次の日は国語や英語があったが如月の得意科目だったので、特に問題はなかった。そうして、テストが全て終わった。僕らの努力は無事報われた。そう信じていた。

が、現実は残酷だった。


テストが終わって二週間たったある日、如月さんのところへ帰ってきた数学のテストはまさかの赤点だった。なんと、途中から回答欄がずれていたのだ。こんな初歩的な間違えをするとは二人とも考えてなかった。その日、如月さんは僕に申し訳なさそうに何度も謝ってきた。きっと一番悔しくて落ち込んでるのは如月さんなのに…僕は、如月さんの努力を知っている。だが、友達の少ない僕にはこういう時にどんな言葉を言ったらいいのか分からなかった。


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