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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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兄と弟


「美波が死んだ?……どういうことだよ! 」

「俺もさっきSPから(ろん)の伝言を聞いたばかりで詳しいことはわからない。拓海からは美波から連絡があって現場へ向かうとは聞いたが、様子がいつもと違ったからな、念の為、論も現場へ向かわせた……。蓮の件とは別件だとは思うが。」


 広海には信じがたい事実だった。

 元国軍である彼女は冷静な判断、類い稀ない才能もあり優秀だった。子ができて退職をし、一般人として普通に暮らしていたはずだ。

 そして、拓海のパートナーでもある。


聖海夜(せいや)は無事なのか?」

「今調べている。」

「拓海が心配だな。あいつがCIPからSPに志願したの知ってるだろ? 怪我のせいもあるが、美波達と家族として過ごしたいって気持ちもあったんだと思うんだよな……口では絶対言わないが……。これからって時に……。」

「今はただそばにいてやれ。」

「様子を見に行くよ。それからそっちへ行く。頼人に会いたいしなー。孫は可愛いか?」

「ん? ………まぁな。それより、用心しろよ。俺達も狙われてる可能性もあるからな。」

海星(かいせい)でも連れてくよ。蓮はどうする?こっちにいた方が安全だが、とりあえず家に帰すか?」

「話さないといけないこともあるしな。あとで迎えをやる。」

「わかった。蓮はドクターに診てもらうよう手配しとく。」


 こうして、2人の通話は終わる。広海はドクターに連絡をして、蓮を診てもらうようにお願いした。蓮が眠っているのを確認し、部屋を出る。

 論に現場の場所と様子を教えてもらうようメッセージを送った。拓海よりは論の方がいいと判断したのだろう。返信がくる。場所を確認し、車を取りに自宅へと急いだ。






 深夜2時。オフィスビルが立ち並んでいる。ここは一等地にあるオフィス街だ。誰もが名を知る有名企業がこのあたりに並ぶ。もちろん類の会社もある。

 いつもならこの時間は人も車がほとんど行き交うことはなく閑散している。

 だが今日は違った。

 警察や消防、救急車が忙しなく出入りしている。

 騒ぎを聞きつけたメディアも大勢いた。


 人目の付きにくい街路樹とビルの間で、騒ぎの様子を見る人影があった。

 男は長身で黒髪をオールバックにしている。全身黒の衣装で暗闇に馴染んでいた。コートを羽織ってはいるが、引き締まった筋肉は隠せていない。

 その横にはもう1人いた。端正な顔はまだ幼い。高校生だろうか。横にいる長身の者に比べては少し背は低い。一般的に考えれば高い方だろう。細長い身体にパーカーにジーンズとラフな格好だ。ニット帽からは茶色い髪がのぞいている。パーカーの上には革のジャッケットを着ているが、少し寒そうに腕を組んでいた。


 2人は殺気を感じた。臨戦態勢をとる。

 どこからかザバイバルナイフが飛んでくる。2人は避け、間を通り越して壁に突き刺さった。と、同時に何者かが襲いかかってきた。


「これは、何の真似だ? 兄貴。」

「ん?お前が腑抜けていないか確認しただけだ。俺の勝ちだな。」


 拓海の首元には警棒が突き刺さり、右手に持っていたナイフは刃が取れていた。広海が襲う時に塞いだのだろう。

 広海は小柄だ。拓海とは20cm以上の差はある。素早さを武器に自分より大きな相手を崩す。そして童顔でもあるため、相手は子供だと思い躊躇する者も多い。肩を越す髪は1つに後ろで束ねていた。


 広海は武器を下ろした。そして1人地面に倒れる。その場にいる者は倒れた者の姿を見る。論の顔が焦っていた。


「海星は負けだな……。」

「おい……論……。こ…れ……毒…か?」


 海星は、か細い声で訴える。海星は広海の息子だ。

蓮より2つ上。蓮と1歳違いの弟、論とは年も近く、家も隣だ。幼い頃はよく3人で遊んでいた。幼馴染のような関係だ。広海ではなく、拓海と親子と間違われるくらい似ている。長身でありクールな顔立ちだ。


「ごめん。海星。痺れ薬だから10分くらい経てば動ける。広海さんも人が悪いよ。兄さんのこともあったし奇襲されたら制御は無理だよ。」


 論はそう言いながら、海星の首に刺さった針を回収し、粉々にして消した。

 論は針を飛ばし相手の動作を防ぐ。蓮のお手製のビックリ!針ケースをキーチェーンを付けて常にポケットに入れている。ネーミングセンスはどうかと思うが、論の能力に合わせて作製されている。

 論の能力は物を変形することができる。ケースの成分で針を作り出し、発射ボタンを押せば飛び出す仕組みだ。付属された5つのポケットには薬が入っている。そのポケットにあるボタンを押せば薬が抽出され、針に付着する。海星には痺れ薬を使用したのだろう。

 海星と蓮と共に幼い頃から護身術を学んではいたが、自分の身の痛みに耐えきれず、この型になった。

つまり……遠方から援護する方が自分は楽だからだ。 

 


「拓海……類のSPにつけ。そのうち辞令がくる。それまでは休暇だ。手続きやら、やるべきこともあるだろ。」

「兄貴……。けど、俺が抜けたら任務が……。」

「俺に負けるような奴に任務は任せられない。上には話しをつけてある。上司命令だ。お前の主張は一切受け付けない。」


 兄弟対決は100戦中、ほとんどが広海の勝ちである。今まで任務をこなしてきた拓海にとっては広海の言っていることは理不尽である。真面目な性格だ。与えられた任務を放棄することはできない。しかし、こうでも言わなくては納得しないだろう。兄なりの優しさなのだろうということは拓海もわかっている。渋々納得した。


「それで、今はどんな状況だ?」


 広海は小声で話しかけるように拓海に聞いた。



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