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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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再会


 一樹はカフェで二樹と再会をしていた。

 

「兄ちゃん、苦しいって。」


 一樹は二樹を確かめるように強く抱きしめ、離れようとしない。二樹はいつもと違う兄の様子に驚く。高校からバレーボールを始めたことで成長した二樹は、一樹より頭一つ分ほど大きい。見下ろしながら兄の頭を慰めるように撫でていた。

 2人の仲の良さが垣間見える。


「どこにおってん……。もしかして駅の屋上か?」

「え? せやで? 警備員さんが急に来たからビックリしたわー。」


 二樹は不思議に思う。兄が自分をテレポートさせた場所なのにどうして聞いたのだろうと。

 一樹はその言葉を聞き納得した。

 場所の特定をせずにテレポートした場合、一つ前に能力を使用した場所へと戻るようだ。

 二樹をテレポートする前、一樹は青樹と共に大阪から人気のない名古屋駅の屋上ビルへとテレポートをし、徒歩で待ち合わせであるカフェへと来た。

 幸い、今まで危機迫った状況でテレポートをしたことはなかった。今回のことでそのことを知り得たことは大きい。

 もし今、そのような境遇になるとすれば、次は路地裏へとテレポートすることになるはずだ。


 二樹はテレポートされた屋上から地上へと降り、場所が名古屋駅だとわかる。手に持ったカップの返却と携帯をカフェに忘れてきた思い、父と駅から歩いた道を思い出しながらここへ辿り着いた。


「お前だけでも無事で……ホントに良かった。ごめんなぁ、二樹。」

「え……?……待って! 俺だけでもって……何があったん? どういうこと?」


 二樹は先にテレポートしていた為、大樹と青樹に何があったのか知らない。

 一樹の腕を掴んで身体から引き離し、何があったんだとせがみだした。

 身体を揺さぶられている一樹は、まずは落ち着けと頼んだ。

 それを聞いた二樹は掴んでいた腕から手を離した。

 二樹の落ち着いた様子を伺いながら、一樹はゆっくりと口を開く。


「実はな……親父と青樹の行方がわからんねん。」

「わからない……?」

「ん……ここを出てから話す。」


 この件に関しては一族が狙われて起こった事件の可能性が高い。まだ狙われることもあり得る。

 ここで話せば関係のない店員を巻き込んでしまう。 一樹はとりあえずここを出ようと二樹に眼で訴える。その気持ちは二樹にも伝わった。

 

 2人は店員に礼を言い、店を出ようと扉へと歩き出した。


「あ、あの! 待ってください! 実はその……お2人の行方のことでお話ししたいことが……。」


 店員の言葉に2人は足を止め、振り向いた。

 

「何か思い出したんですか?」


 一樹は店員に尋ねるが、不安そうに手を胸の辺りで握りしめ躊躇う様子が見えた。

 2人は様子がおかしい店員を見て、どうしたんだろう?と目を合わせいる。


「店員さん。僕達は一応警察関係者であり、行方不明の父と叔父は警察官です。もし、話すことで危険が及ぶのならば俺達が必ず守ります。安心して話してください。」

 

 一樹は優しく語りかける。

 二樹は大丈夫ですか?と店員に近づき、落ち着かせるようにそっと店員の肩に手をおいた。


 "どうしよう? 能力のことを話さないといけないけど……やっぱり怖い。でも2人を救いたい。"


 二樹の脳内に店員の心の声が聞こえる。

 普段は決して使わない能力だが、彼女の様子を見て、心を覗けば助けられるだろうかと思ったからだ。

 一樹が警察関係者だと伝えたことにより、更に怯えた様子になったようだった。

 

(もしかして……。能力者だけど、そのことを誰にも知られたくないのかな?)


 能力者であることを隠しているとなれば、厄介なことになるかもしれないからだ。

 能力者であるものは国に申請することが義務付けられている。

 登録をすることにより能力の使用を認可され、

 満15歳以上となるとライセンスカードが発行される。そして国の任務の依頼を受けることになっている。

 依頼内容はS〜Fとランク付けされており、適正、能力によって任務が振り分けられ、専用のアプリにて出動命令の連絡がくる。出動可否を送信し、出動が可能な場合は詳細が知らされ任務へと就くことになる。緊急の場合は電話連絡が多い。

 依頼を受けるかは命の危険が伴う任務も多いことから、任意となっている。しかし3回以上断った場合、10年以下の懲役、または500万円の罰金、認可取消となる。

 一族の場合は暗黙の了解の上、任務は必須だ。

 能力者は脅威だという思想があるゆえ、重い罰則となっている。

 こういった関連もあり、能力を隠し登録していない者が多いことも事実だ。もし故意に隠していたとすれば……さらに重い処罰が下される。

 蓮が能力を隠していたことが大事になったのもこれが原因だ。

 一族ともなれば国との関係性上、不祥事と見做され、罪はさらに重くなるだろう。

 

 

「あ……あの、もしかして……能力者ですか?」


 人と話すのが苦手な二樹は、勇気を出して店員に問いかけた。

 二樹の言葉に店員は驚く。一樹も同様だ。


「二樹? 何を言うてるんや?」

「えっと……。なんとなく……? 店員さんが話すことに動揺しているようにみえたから、もしかして能力者で無申請なのかなぁ……って思って。」

「…………。」


 一樹もそれは考えたが、可能性は低いと考え除外していた。もし二樹の言う通りであれば、話すことに躊躇う理由に納得がいく。


「店員さん。俺達はただ父と叔父を助けたいだけなんです。もし、行方を知っているのなら俺達を信じて話してくれませんか? お願いします。」


 一樹は頭を下げる。兄の行動を見て、二樹も横に並び頭を下げた。

 それを見て焦った店員は、頭を上げるように2人に必死でお願いをした。

 そして重い口を開く。


「お察しの通り……。私は能力者です……。」


 店員は小さく呟くように話し、それに一樹は疑問をぶつけた。

 

「俺達も能力者ですが……あなたの護身獣は見えないのはなぜですか?」


 そう、一樹が店員を能力者の可能性が低いと思った理由は護身獣が見えなかったからだ。

 蓮の護身獣も見えない。あり得ないことではないとは思っていたが、にわかに信じ難かった。


「それには……実は、理由がありまして……。とりあえず、席に座ってお話ししませんか?」

 

 カフェの店員はそう言って2人を席に案内した。

 ごちそうするので何でもいいですよとメニューを渡す。

 一樹はお気持ちだけいただいてちゃんとお支払いはしますと言ったが、気にしないでくださいと言われてしまう。二樹がここは店員さんの好意に甘えようよと、2人の間に入り話がまとまった。

 2人はさっきと同じ物を注文をする。

 一樹は手に持っていた紙袋を思い出し苦笑いをする。

 テイクアウトしたものの、そのことをすっかり忘れていたのだ。

 俺も気が動転してたのかな……と一樹は思った。

 そして携帯を取り出し広海に連絡をした。

 二樹と合流したことを知らせるためだ。

 

「もしもし。広海さん? 二樹と合流した。」


 一樹は思わず携帯を離す。広海の驚いた声は前に座っている二樹にも聞こえるほど大きかったからだ。

 

「カフェでお茶してから二樹を連れてそっちに行くわ。え? テイクアウト? ちょっと待って。」


 一樹は席を立ち、作業をしている店員のそばへ駆け寄り、テイクアウトができるか確認する。

 テイクアウトメニューを店員に渡されたが、読むのも面倒だなと思い写真を撮って広海に送った。

 電話越しからはあれよこれよと騒がしい声が聞こえる。

 9人分の注文を終えて一樹は二樹が待つ席へと戻った。


「広海さんにテイクアウト頼まれたん?」

「そう。念話してたら疲れたからって、9人分な。」

「9人? 広海さんって確か入院中やんな? 病室にそれだけおるってこと? 念話って何? それで父さん達はなんで行方不明になったん?」


 状況が把握できていない二樹は、一樹に質問攻めをする。

 一樹は自分も理解できるように、まず父と叔父が行方不明になった出来事から時系列の順番で話しを始めた。


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