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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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念話2


 海星の護身獣であるウィンは念話についての詳細を話していた。

 行方不明である3人に連絡を取れるかどうかは相手が能力を開放しているかが鍵となる。

 能力の源である護身獣と繋がっている状態なのであれば、開放されている状態であり、念話はできる可能性が高い。

 もし繋がっていないとしても、主と護身獣との繋がっている時のように、能力をオーラのように纏っていれば可能だ。

 しかし能力のオーラを常に纏う状態は至って簡単ではないだろう。

 日頃からの鍛錬はもちろん、オーラを出す調整も必要だ。

 うまく調整できず溢れでてしまう状態になってしまうと、いざ能力を使うことになった時は何もできなくなる。

 

 「一樹は3人が護身獣と話してるところ、見たことあるのか?」


 広海は3人を良く知る一樹に聞く。


「うーん……わからへん。そもそも護身獣と話せるなんて知らんかったしな。」


 広海は考える。

 一樹が護身獣と会話ができることを知らなかったのであれば、二樹も知らない可能性は高い。

 しかし、二樹の家出事件の時、一樹と二樹が念話ができた。

 そして仮説を立て始める。

 家出をしたということは誰にも見つからないようにしたはずだ。

 二樹の能力は自身を透明にすることができる。

 能力を使い開放状態だった。

 一方の一樹は二樹を探す為、心当たりがある場所へテレポートの能力を使う。

 そして、微量のオーラを纏っていたことで、双方の意識がお互いに向き、タイミングが合致して念話ができたのではないだろうか。


「3人との念話する望みは薄いか……? とりあえず念話やってみよう。」

「え? いきなり? どうやって?」

「俺もやったことないからな……。海星と聖海夜で念話やってみろよ。護身獣との念話は何度もやってるだろうし、目の前にいる相手ならやりやすいんじゃないか?」

 

 広海に言われ、海星と聖海夜は念話を実践してみることにした。

 まずは聖海夜が海星に意識を集中して話しかける。

 

"おーい。聞こえる?"

"聞こえるよ。海星じゃなくて僕にね。"

「あれ? 海星じゃなくてリューだった……難しいな、これ。」

「んじゃ、次。俺がやってみるな。」

"どうだ? 聞こえるか?"

"海星も、俺に念話してるで。"

「あれ? おかしいな。」


 いつも護身獣と念話していた2人は、別の相手と念話をする切り替えが難しいようだ。

 交代で何度かやっているがうまくいかない。

 広海は念話していた2人ならできるかと思っていたが、護身獣ではない相手だと難しいのかと考えを改めた。


「2人の念話には時間がかかりそうだし、俺達も試しにやってみるか。黒羽と橘も2人ペアでやってみろよ。」


 ウィンの説明では、一族は連絡する手段として念話をしていた。しかし今は携帯電話やメール、無線など連絡手段があることから、念話は緊急の時に利用するようになっていったようだ。

 能力を開放しているのが念話の条件ならば、能力者であればできるはずだ。


「念話か……面白そうだな、橘。」

「先輩。いつもそれくらいのやる気を出して下さい。」


 しかし、2人は今のところ護身獣と繋がっていない。念話をする為には、護身獣と繋がるかオーラを纏う必要がある。

 

「一樹は誰と組む?」

「え? 俺が決めてええの? 蓮でええよ。」


 (蓮が能力者ということはすでに知っているか……大樹も知ってるしな。)


「わかった。蓮と組め。ところで、蓮は一樹の能力でテレポートできるんだろ? どれくらいの距離なんだ?」

「どれくらいやろ? 蓮ならわかるか?」


 一樹は距離と聞かれ、横にいる蓮に尋ねようと振り向いたが、浮かない顔をしていた。


『俺は一樹の能力使ったこと言ってないぞ?』

『でも能力はバレてんだろ? 別にええんとちゃうの?』

『それとは話しが別だ。以前より一樹が俺の能力知ってたことが今ので知られた。』

『最近使ったことにすればええやん。』

『無理だ。俺がこっちに帰って来て、まだ3日も経ってない。俺と会う余裕がなかったのは広海さんは知っている。』

『つまり……?』

『……雷が落ちる。気をつけろよ。』


 一樹は蓮の言葉を聞き緊張が走る。そして、蓮は何かがおかしいと、あることに気づく。


「今の……俺の声聞こえてた? 口で話してなかった気がする。」

「え? あっ、ホンマや! ってことはこれが念話か!」


 2人はいつのまにか念話ができていたことを知り、喜び合う。周りもそれを聞き、おぉーっと拍手喝采だ。

 

「念話できたのか? どうやって?」

「コツは?」

 

 未だに苦戦している海星と聖海夜は、すごい剣幕で質問をした。しかし、無意識にできていたという2人の答えを聞き、また念話への特訓を開始する。


「それで、俺の質問の答えは? ()()して決まったか?」


 広海は満面の笑みで2人を見つめる。


「でもさ、俺って護身獣と繋がってないだろ? 何で念話ができたんだろ?」

「確かにそうだよな。オーラ纏ってんのかな? 俺には見えないなー。」


 広海の質問を焦るようにはぐらかす2人。

 蓮は一樹の全身を凝視していた。

 

 "微量だがオーラを纏っているな 目を凝らせばお前達も視えるはずだ これは驚いた できる者は滅多におらんぞ "


 広海の護身獣であるトラオが驚き、珍しいモノを見るかのように一樹を見つめていた。

 それを聞いた蓮はと広海は意外のあまり驚く。


「すごいな、一樹! オーラ纏ってるって。滅多にできないらしいぞ。」

「マジか! 特訓の成果かな。」

「特訓?」

「能力のな。いつでも使えるように常に意識しておけって……」

 

 話しの途中で、広海は雷でできたロープを一樹に向けて攻撃した。

 狙われた一樹は危機を感じ、瞬時にテレポートをする。ロープは一樹の居た場所を通り抜け、隣にいた蓮に直撃し体に巻きついた。

 

「俺の攻撃をかわすとは、危機能力が優れているな。オーラを纏っているからか? ところで、あいつはどこへ行った?」

「それより広海さん……ピリピリする。早く解いて。」

 


 テレポートした一樹は見覚えのある場所へと来ていた。

 広海からの思いもよらない攻撃だった為、場所を特定する余裕があまりなかった。

 ここってさっきの路地裏か?

 辺りは暗くメインストリートの街灯の光が路地裏へと入りかろうじて見える。一樹が覚えている印象とは少し違った。

 一樹は路地裏から道へと出た。

 そして右側を見ると数メートル先に、"隠れ家カフェ Angie"と書かれた壁面の電飾看板が見える。

 さっきいたカフェだ。

 そこに1人の男が店に入るのが見えた。

 つまり、咄嗟の判断でテレポートをすると1つ前にいた場所へと行くってことか?

 とすると…….二樹も?

 

「ん? 待てよ。もしかして!」


 一樹は何かに気づき、カフェの方面へと全力で走り出した。

 心が高揚し、早く確かめたいという思いが募る。

 そしてたどり着いたカフェの扉を開いた。

 少し息の荒い一樹の目の前には、知っている人物がいた。

 

「兄ちゃん……?」

「二樹ーっ!」


 一樹は目の前にいる弟の姿を確認し、喜びのあまり抱きしめた。

 


 

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