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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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恩人


 広海は蓮がREDに運び込まれた時の話しをする。


 蓮が帰国後、指名手配され街で襲撃された。

 拓海が救出するも、怪我と毒に侵され危険な状態のままREDへ搬送する。

 来る途中、類には状況を説明している。

 自宅への帰路に待ち伏せされて、襲撃されてる可能性もある。そして解毒剤を部屋まで持って来て欲しいことを伝えていた。

 拓海は部屋に蓮を運び、ベッドへ寝かせた後、医師免許を持っている黒羽に連絡をする。

 急で申し訳ないが診てくれないかと。

 毒に侵されていて、腕の怪我からの出血が止まらない。解毒剤は手配していることを伝える。

 黒羽は状況を聞いて了承する。手術が必要の可能性があると思い、助手が必要だと判断した。

 寮の同室の橘に事情を説明し同行を願いでる。快く承諾した橘を連れて備蓄庫へと向かった。

 備蓄庫には医療に必要最低限のものが入ったバッグがある。それを持ち出し、隣の棟にある拓海の部屋へと訪れる。

 そして一足遅れて自宅から論が解毒剤を持って到着した。

 黒羽は手袋とマスクをして蓮の容体を確認をする。 息遣いは浅くなりつつあった。

 毒のせいだろう。

 早急に解毒剤を投与する必要があると判断し、論から解毒剤の説明を聞いた。

 蓮が創薬した薬は大体の毒には効く解毒剤の説明を聞き、そんなものがこの世にあるのかと疑問を持ちながらも、今はその解毒剤に頼るしかなかった。

 黒羽はその解毒剤を蓮に投与する。

 投与してから効果を判断するには、しばらくは時間がかかるはずだ。

 その間に出血がひどい腕の怪我の具合をみるが、目視しただけで深い傷ということがわかった。

 縫合セットを取り出しながら、橘に手袋して腕を押さえるように指示をする。

 橘は麻酔もせずに縫合するのかと黒羽に聞いた。

 緊急事態だ。縫合して出血を止めないと危険だと説明する。

 すると、論が麻酔薬ならあると言い、自分の能力とビックリ針ケースのことを話した。

 蓮がくれた麻酔薬は即効性と持続性が相まって調合されている。針を打てば1日は目覚めないだろう。

 そして論に、君の兄は天才だなと告げる。

 全身ではなく局部麻酔薬にする為、濃度を薄めて投与し、傷口を消毒して縫合した。

 そして聴診器で音を確認する。瞳孔も問題なく安定していることを告げる。

 安堵した拓海と論は、黒羽と橘に感謝の意を述べた。

 黒羽はもし容体が異変したら呼んでくださいと言い、橘と共に自室へと戻って行く。

 そして、美波から連絡が来た拓海は、類には状況を説明し論と共に現場へ行くこととなる。

 拓海から呼び出された広海は部屋を訪れ、事情を類から聞き、目覚めた蓮の事情聴取をする。


「俺が居たのはREDだよな?」

「実は……REDというのはCIPの寮の名前だ。」


 蓮は目覚めた時、論からREDへと行くには自宅にある秘密の出入り口から行き、噂に聞いたところとは全く違ったことを聞いていた。

 疑問には思ってはいたが、一族の所有地である山にCIPの寮があることを知る。


「広海さん……。俺には噂に聞いたことあるREDとか、自分は殺し屋だとか言ってましたよね?」


 蓮は広海に騙されたことを知り、怒りを露わにする。


「騙したわけじゃない。お前の知ってる噂は昔あった事実だし……寮の名前もそこからだ。俺は何も事情を聞かされないまま、部屋に行ったんだよ。拓海からは類から聞けって言われるし、類はそいつから事情を聞けと言うしさ。まさか寝ているのが蓮とは知らなかったんだ。」


 広海は弁解をしていた。何者かわからない上、REDのことと自分の存在を明かしていいのかわからなかった。何があったのか話しを聞きながら、蓮だということが判明したんだと。


「電気を付けて、何者か確認すれば良かっただろ。何で暗闇だったの?」

「それが……スイッチの場所がわからなかった。」


 麓の家で過ごすのが大半だ。寮の拓海の部屋を知っていても、訪れることはほぼ皆無だった。

 広海は自分の失態に笑顔で誤魔化しながら謝罪した。蓮は呆れながらも、状況は理解できた。

 そして、命を助けてくれた黒羽と橘に深々と礼を言う。


「ところで、なんで一族の敷地内にCIPの寮ができたんだ?」

「……それはだな。CIPはほぼ能力者だ。部屋を借りるのにも苦労することも多い。寮を作って欲しいという要望もあったからな。」


 記録されている能力者は全世界で10分の1ほどになる。能力者だと判明した場合は、国に登録することにはなってはいるが……していない者のほうが多いだろう。人口の全てが能力者に理解があるとは言い難い世の中だ。冷遇されることもあり、能力者だと知られると入居を拒む不動産もあった。


 CIPに所属している者達の多くは、自分の能力で能力者の犯罪を撲滅したいという思い、願いから志願している。人員が足りないCIPにとっては、寮ができることによって志願する者が増えたことは良い傾向となっていた。


「まぁ、俺達にも所有地に寮を作ることに実はメリットもあってだな……。」


 寮がある山頂の跡地は、以前は一族が居住していた場所だった。山の頂上で暮らすには現代社会の生活において支障を来たし始め、居住地を麓に置くことにしたのだ。ただ、石碑を動かすことは決してしてはいけないと代々言い継がれていた。

 毎日交代で石碑を警護するも、仕事にも支障がでる。

 そこでCIPの寮を建設することにより、寮の住居の条件として寮の敷地内を守ることとした。

 セキュリティには防犯カメラにレーザーなどが設置し、侵入があれば警告音が麓にある一族にもわかるようになっていた。部外者の侵入を防ぐ為に共に守っているのだ。今のところ侵入者は犬や猫の動物しかいない。


「でもCIPの寮に侵入か……住民が能力者に警察官だろ? 怖くて行けないな。」


 蓮は寮の話をし聞き率直に思った。聖海夜と伶青も頷き納得している。

 

「そんな簡単な話しじゃないぞー。昨日みたいな能力者が現れたらどうするんだ? 能力は使えないだろ。」

「あ……。」

「聞きましたよ、昨日の事件。広海さんの怪我の原因ですよね。能力が使えないって本当なんですか?」


 昨夜の事件は、すでに橘達にも伝わっているようだ。防衛反応を出す能力者は他にもいるだろうが、そうそう出会うことは稀だろう。


「俺は二度と会いたくないわー。」

「俺も……。何にもできなかったし。」

「逃げるのに精一杯だ。タクがぶっ飛ばさなかったらどうなっていたことか……。」


 昨日の事件を思い出し、一族の3人は溜息を吐く。弱音を吐く姿を見て、現場にいなかった者達は壮絶だったんだろうなと理解できた。

 

「お前らなー、辛気臭いこと言うな! また出会したらどうするつもりだ? これを機に、対策できるだろ。」


 広海の言葉に3人は、この人はいつもポジティブだよなー、と尊敬の眼差しを送る。

 

「まぁ、確かにそうですよね。もし寮に侵入されたとして、能力が使えないとなると……被害者が増えますよ。何か策を考えないと。」

 

 話を聞いて橘が考え始める。


「かといって……俺にも策はないんだけどなー。ってことで次の会議までにみんなで考えておいてくれ。通達はしておく。お前ら3人も出席な。」

「え? 俺達も!?」

「次の会議って寮の会議のことですか? 明日ですよ?」


 寮の会議は隔月の最終週の火曜日に行われていた。仕事や、やむを得ない事情を除き、全員参加となっている。議題は騒音の苦情だったり、コンビニを置いて欲しいや、家賃の値下げ、球技大会の開催についてなどと様々だ。

 会議が行われることで、寮内が団結し連帯感ができる。これも広海の計らいなのかもしれない。


「なぁ、黒羽、橘。指名手配の奴を住まわせても問題ないか?」

「藍丸さんのことですか? 副総監の息子さんですしね。もし、俺らが護衛することになるのなら、寮に居てもらった方が助かります。」

「問題ない。」


 広海は2人の意見を聞き、久世に連絡をした。

 久世に藍丸が蓮と同じように裏の指名手配になったことを告げた。驚いた久世の大きな声が携帯電話越しに聞こえる。容疑者になって間もない息子が、次は指名手配されたのだ。驚くのも無理はない。

 どうする?と広海は尋ねるも久世は悩んでいるようだ。

 広海は久世から藍丸に代わって欲しいと言われ、携帯を渡した。そして父子の会話が始まる。とりあえず容疑が晴れ次第、家へ帰って来い。それから今後のことを話し合おうとのことだった。

 寮に匿うのかと思っていたが、その話は一切切り出さなかった。

 

「副総監に寮のことを言わなかったのは理由があるんですか?」


 皆の心の声を代弁するかのように、橘が広海に尋ねる。広海は橘を見て語った。


「副総監なりに考えもあるはずだ。俺の考えも含めてな。それに……久しぶりに帰国したんだ。実家で家族と話し合いながら決める方がいいだろ。その前に容疑を晴らさないとなー。」


 そう言いながら、広海は黒羽から自分のパソコンを受け取り、操作し始める。

 そしてパソコンを武田へと渡した。いきなり渡された武田は戸惑いながらもパソコンの画面を見る。


「広海さん? これって……。」

「昨日の防犯カメラの映像だよ。俺のパソコンに送るように頼んでおいた。これで確認すれば容疑は晴れるだろ?」


 広海は類から連絡をもらった時に、防犯カメラの映像をお願いをしていた。

 武田はすぐに確認すると言い、どこかに座るところがないかとあたりを見渡す。

 それに気づいた聖海夜達は席を立ち、武田に座ってくださいと譲った。武田はありがとうとお礼を言い、隣に座っていた藍丸と防犯カメラの映像を確認する。

 

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