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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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一族の許可


「なぁ……俺って入院中だよな? 次から次へとなんでこんなに忙しいんだ。」


 病室にぞろぞろと4人が入って来た途端、ベッドで携帯を操作している広海はそう言った。

 入れ替わりに次々と連絡や人が来ればそう思っても仕方がない。

 今は聖海夜の件で連絡が途絶えないようだ。

 怪我は頼人が治してくれたが、表向きは入院患者である。

 久しぶりの長期休暇をゲームでもして満喫するつもりだったようだが、そうはさせてくれなさそうだ。


「父さん、聖海夜は無事なのか?」


 海星が心配そうな顔で尋ねた。

 拓海からの連絡で、一族の気を護身獣に確認してもらい名古屋にいることがわかった。

 ここからだと電車で2時間以上はかかる。まだ西の一族の西宮司家が近い。


「大樹が名古屋署と連携して現場へ向かうと連絡があった。拓海達も向かうはずだ。聖海夜の護身獣からの連絡はないのか?」


 広海は蓮に視線を向けたが首を横に振っていた。

 未だに連絡がない。お嬢からの伝達は聞こえているはずだが、伝えることもできない状況なのだろうか。

 病室内に不安が募る。せめて無事だと連絡が来ることを願うばかりだ。


「それで……藍丸だったか? 容疑は晴れたのか?」


 広海は新参者の藍丸を見た。事情は久世から連絡があったようだ。

 藍丸は初めましてと会釈をし挨拶をした。

 武田が今後について説明する。


 久世は会議があるからと車で仕事へと戻り、そして残りの4人は頼人を迎えに広海の病室へと来た。


 藍丸の容疑はまだ晴れていない。パスポートのスタンプで入国日は昨日だと確認は取れているが、空港への問い合わせ、ホテルの滞在記録を確認中だ。

 そして武田と共に天宮司家へと行き、防犯カメラの記録で昨日の供述の確認することになっていた。

 容疑が晴れれば自由の身となる。


「これって新生児用のベッド?」

「看護師さんに頼んで借りた。俺のベッドから落ちたら大変だろ……。」

「そうだ……藍丸。さっき話した頼人のペンダントのことなんだけどさ。」


 藍丸は新生児用ベッドで寝ている頼人の方へと寄り、胸元に掛かっているペンダントをじっと見つめる。


(このペンダントは……。)


「それはアメリカから逃げる時にはすでに掛かっていた。博士が関与しているとは思うけど……藍丸の物と同じものなのか?」


 藍丸は蓮に聞かれ答えるべきか悩んだ。

 自分の物と同じだったからだ。

 そして……恐らくは誰かの能力がペンダントに込められている。


 博士がやったのならば理由があるはずだ。

 ここで話していいべきなのかわからないな……。


「うーん……詳しいことは博士に聞いたほうが良さそうだね。」

「そっか……。もしかしたらこれにも能力が込められるのかなと思ったんだけど……。」


 蓮は藍丸からペンダントの作用について聞き、頼人のペンダントにも能力が込められていると1つの仮定として考えた。

 アメリカでのマンションで火事があった時、頼人は博士のスカーフに包まれペンダントをしていた。

 博士が関与しているとなれば、藍丸と同じように誰かの能力が込められていることも考えられる。

 蓮や広海の怪我を治した回復の能力が……。


 蓮は知っていた。

 一族の能力は12人しか与えられないことを……。

 蓮は特例として、一族にはすでに12人の能力者がいる。頼人に一族の能力ではないことを考えると辻褄が合う。


「待て待て。このペンダントには能力を入れられるのか? 能力が倍増するんじゃなく?」


 ペンダントの効用を知らない広海はどういうことだと疑問に思う。

 藍丸は蓮達に車内で話した内容を広海にも説明をした。

 別の者が持っているのはレプリカで護身獣しか隠せず、オリジナルのペンダントには能力が込められており、能力者でない自分も使用できると。

 

「じゃあ、俺の能力もここに入れられるのか?」


 まだ実験段階の為、1つのペンダントには1つの能力しか入れることができない。新たに能力を入れるのであれば、ここに入っている能力を持ち主に戻すか、新しいペンダントに入れる必要がある。

 

「もしさ……蓮の能力みたいに意図的に奪えることもできるのなら、能力の奪い合いになるんじゃねぇの?」


 ペンダントのことを知っていれば、能力の欲しさに狙ってくる者がいるだろう。そしてそれを我が物にする為に争いが起こることを広海は言いたいのだ。

 広海にとっても能力者を逮捕する場合、重宝するだろう。

 藍丸は痛いところを突かれたかのように顔を歪める。

 仕様によってはできないとも言い切れないからだ。

 研究の成果によってできることがわかっている。

 このことは博士と藍丸にしか知らない。


「もしかして、博士はこれが理由で狙われたのか?」

「わからない。話すと危険だからって俺にも教えてくれないんだ。蓮君の手紙にも知れば危険だって書いてあるはずだよ。」


 藍丸はアメリカの大学で博士の助手をし、このペンダントの研究を手伝っていた。

 研究の意図は詳しくは聞いていないが、世の中を救う為だと藍丸は聞いていた。

 そして博士の研究室が爆破されるという事件が起きる。

 博士と連絡が取れない藍丸が心配し、研究室に着いたのは爆破された直後だった。

 それを見た藍丸は無我夢中で火の嵐の中に飛び込んだ。

 幸い、藍丸が倒れている博士を発見し、崩壊寸前の建物から抜け出したことで命は救われた。

 今は回復して話せるまでにはなったが、事の発端については口を閉ざしたままだ。

 そして、蓮に伝えて欲しいとお願いをされ、連絡が取れない蓮に会いに日本に来たわけだ。


「博士には会って聞きたいけど……。」

「必ず親の承諾を聞いてから連れてこいって言われてるからね。独断はダメだ。」


 蓮が博士に会う為には親の承諾がいる。藍丸が類に説明して承諾がなければ、博士のところには連れて行くことはできない。


「親の承諾か……類はどうするんだろな。危険になるって言っても蓮は指名手配中だろ。一族も狙われてるし、大して変わりないけどな。蓮が博士に会いたいのなら俺も説得してやるよ。」


 広海の笑いながら答えた。

 一族を狙う者は今までに何度もあった。今更増えたところでどうってことないだろうと楽観的な意見だ。

 蓮にとっては心強い味方だろう。

 そして少し気になることがあると言いながら、広海はノートパソコンを開き操作する。

 

「ところでさ、一族って何の一族?」


 藍丸は能力者の一族のことを何も知らないようだ。

 蓮は説明をするのが面倒だから久世さんから聞いて欲しいと内心思いつつも、能力者の一族でみんな能力を持っていると説明した。

 

「蓮の説明、簡易すぎじゃね?」

「じゃあ、海星が説明すればいいだろ。」

「え……昔話から? いや……実は俺も詳しくは知らない。蓮の家が本家の守人で俺らが分家だろ。分家はみんな警察官だ。そして親戚。」

 

 海星も昔のことを話すとなると長くなると思い、簡単に説明をする。


「こんなご時世に、そのような古い習慣が?」


 藍丸の一言で、聞いてくれよと言わんばかりに2人は藍丸に詰め寄った。そしてこれまでの鬱憤を晴らすようにそれぞれ愚痴を言い出す。

 ソファーに掛けている武田は、拓海から同じことをよく聞いていたなと懐かしんでいた。

 

「うるさい! お前らそんな悠長なこと言ってる場合じゃないぞ。これを見ろ!」


 広海はそう言ってパソコンを持って、4人が掛けているソファーまでやって来た。

 そこには蓮の指名手配書の画面だった。


「父さん……蓮が手配されているのはみんな知ってるよ?」


 広海は真面目な顔になり、もう一つあるタブにマウスでクリックした。

 すると……見覚えのある顔がでてくる。

 皆はその画面をみて指名手配されている者の顔を見た。

 当人は信じられないような顔をしながら、パソコンを勢いよく掴んだ。画面を静かにじっと見つめる。


「なんで……俺が?」


 久世藍丸 500万ドルと書かれていた。


「博士が狙われてるって言ってただろ。蓮の指名手配もそれに関与しているのであれば、博士のそばにいた藍丸も狙われるんじゃないかと思ってさ……。」


 藍丸は静かにパソコンのキーボードに触り、博士の名前を入力して検索した。

 

 エリアス・シュナイダー 1,000万ドル


「はぁ……。」


 藍丸は溜息をしながらノートパソコンをそっとテーブルに置き、天を仰いだ。

 皆は置かれたパソコンの画面をみる。


「博士か?」

「うん。」


 1000万ドル……日本円にすればいくらになるだろうか。ルートにもよるが10億になる可能性もある。

 誰が指名手配をしたのかはわからないが、2人が指名手配されているところを見るとペンダントが関わっていることは一目瞭然だろう。

 博士が言っていた。話しを聞けば危険な目に遭うという意味が理解できた。


「藍丸……博士は……大丈夫なのか?」


 放心状態の藍丸に蓮は聞いた。


「……ん。さっき蓮君に会ったってメールしたら返信が来たから今のところは。偽名で入院しているけど……。」

「救出に向かう必要があるな。」


 藍丸に変わって広海が代弁した。


「急がないと! 博士が危ない! 」


 蓮は勢いよく立ち上がったが、それを見た広海はとりあえず座れと促した。

 救助に行くとしてもやることがある。

 藍丸の容疑を晴らし、類の許可を得て、SPである拓海の同伴だ。

 聖海夜のことも気がかりでもあるが、蓮のSPとなった拓海を連れて行かないわけにはいかない。

 指名手配者が蓮だけではなく、さらに2人増えることになる。


「拓海だけじゃ負担が大きいな。俺も退院するか。」

「でも父さんは深刻な怪我をしてるだろ?」


 広海をの怪我が完治したことを海星はまだ知らなかった。広海は蓮に視線を送る。

 そしてその時に広海の携帯に着信があった。

 登録していた名前が画面に映し出される。


 聖海夜からだった。


 広海はちょっと待て、と手で制止しながら電話を取る。


「聖海夜? 今どこにいる? 」


 広海の言葉に聖海夜からの電話だとわかった。

 無事だったのかと皆は安堵した。


「わかった。すぐに行く。」


 広海は聖海夜と話した後電話を切った。

 そしてまっすぐ向き、皆に伝える。


「よくわからないが……聖海夜はここの病院の救急室にいて、拓海が呼吸困難を起こしたらしい。」



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