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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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34/48

3つで1つ


 午後の昼下がりーーー。


 セルフ式のカフェで2人の男がランチをしていた。

 4人掛けのテーブルにはパスタやサンドなどが溢れるくらいに並んでいる。

 

「なぁ……メニュー全部頼んだのか?さすがに頼み過ぎだろ……。」


 長岡がテーブルに置かれた料理を見て呆れていた。


「武田警部の奢りですよ? それに……今のうちに食べとかないといけない気がするんですよね。事件が起こる気がする。」

「城田の勘は当たるからな……俺も食べておくか。」


 そう言って、長岡も食べ始める。

 2人は重要参考人の男が能力者の可能性もある為、待機していた。

 その男と武田は少し離れた席で蓮を待っている。

  


「食べないのか?」

「…………。あまり食欲がなくて。私の分もどうぞ。」


 男はテーブルに置かれたパスタを武田の方へそっと寄せ、コーヒーを手に取る。

 男が英語で話すため、武田も英語で話していた。

 おそらくアジア系だと思われるが、まだ名前も言わない。

 自分の素性を明かされないようにするためだろうか。


 男はブレンドコーヒーを飲みながら溜息を吐いた。


(はぁ……これからどう乗り切ろうか。父さんと兄貴に迷惑をかけるわけにはいかないよな。)


「武田警部でした? レンが来たら少しで良いので2人だけにしてもらえないでしょうか?」


 武田はそれを聞いて悩んだ。今のところ男は容疑者ではない為、拘束はされていない。ただ大人しく待っている。

 もし能力で蓮を人質にされる危険性を考えるが、長岡と城田も待機をしている。もしもの場合は彼等に対応をお願いすることも可能だ。

 武田は蓮が能力者と言うことはまだ知らない。だが、一族の能力しか使えない蓮は一般人の扱いでも良いだろう。


「………。1分だけだ。ただし、近くにはいるからな。」

「十分です。ありがとうございます。」


(レンに何とかしてもらおう。師匠は頭がキレる奴だって言ってたし、何が良い策が出るかもしれない。)


 

 一方その頃……蓮達は広海の車で武田がいるカフェへと向かっていた。

 病院からは車で20〜30分ほどで着くだろう。

 海星が運転し、後部座席に蓮と久世が乗っている。

 始めは久世の車で行く予定だったが、広海が襲われた時を考え自分の車を使えと言ったからだ。車のボディやガラスは防護強化されている。そして、座先の下にはいろいろと武器が隠されていた。

 久世は息子かもしれないと動揺していた。運転に支障がでることを考慮して、運転は久世ではなく海星にしたのだろう。

 ちなみに広海の車は蓮達が乗ってきた。拓海はバイクしか持っていないからだ。

 

「もし久世さんの息子さんだったとしたら、一緒に話しを聞く感じ?」

「さっきからそれで悩んでいるのだが……一緒に聞くべきなのか、隠れて聞くべきなのか。君達ならどう思う?」


 蓮と海星は久世の言葉を聞いて想像をする。

 もし、自分が警察に捕まった場合……

 

「ダメだ! 捕まった時点で死のフラグしか見えない!」

「もの凄く悍ましい光景だ……。」


 2人は何を想像をしたのか……震慄していた。

 その姿を見て、久世は能力者の一族に聞くのは愚問だったと反省する。


「すまなかった……忘れてくれ。」


 2人はバックミラー越しに目を合わせた。

 なんとか久世の力になってあげたい2人。


「そうか!確か3兄弟の末っ子だったよな。自分じゃなくて末っ子の気持ちになるんだ。」

「俺達からの立場なら論だな。論の行動……。」

「能力は無しな!」

 

 2人は考え想像する。

 論ならどうするだろうか……父と兄は警察官だとして、捕まってしまうとしよう。


 "えー。俺何もやってないよ? たまたまいただけなのに……。俺がやったっていう証拠でもあるの?"


 2人は安易に想像できた。


「ダメだ……あいつは論破する。捕まらない。」

「我が弟ながら恐ろしい奴だ。相手の弱みを握って駆け引きもしそうだ。」


 さっきとはまた違う意味で震慄していた。

 

(彼等は一体何を想像しているんだ……?)


「駆け引きか……そういえば彼は蓮君に話があるような感じだったね。それを条件に提案するかもしれないな。」


 2人は久世の話しを聞き冷静になる。

 もし彼がシュナイダー博士の居場所を知っているのであれば蓮は提案を受け入れるかもしれない。

 

「もしそうなったらどうするの?」

「んー……断って相手の動揺を誘う。それとも、こちらも条件をつけて受け入れる。状況にもよるがね。」


 そこに久世の携帯電話が鳴る。

 拓海からだった。

 

「どうした? 現場には着いたのか?」

『えぇ、現場には着いたのですがいないんです。』

「いない? ちょっと待て、スピーカーにする。」


 久世は蓮や海星にも聞こえるようにスピーカーにした。

 

「いないって、聖海夜達が?」

『あぁ、先にCIPから2人来て探してくれていんだが、工場内にはいなかった。携帯も繋がらない。』


 聖海夜達に何かがあったのだろうか。危険を察知して別の場所に移動したのであれば、連絡をするはずだ。連れ去られた可能性もある。

 それを懸念して拓海は久世に連絡をしてきた。

 今から会う彼等の仲間かもしれない男に、潜伏先を知っているかもしれない。


「居場所がわかればすぐに連絡をする。」

『お願いします。こちらも周りを捜索します。』

「待った! 拓海!」


 海星が運転をしながら拓海が電話を切るのを阻止する。久世は海星の方に携帯電話を向けた。


「聖海夜の護身獣の気を探れば、大体の居場所がわかるんじゃないか?」

『そんなことできるのか? やってみる。』

「お嬢にまた連絡があるかもしれない。こっちからもお嬢に頼んで伝達してもらうよ!」

『頼む。お前達も気をつけろよ。』


 拓海は電話を切った。

 蓮はお嬢に頼んで、聖海夜の護身獣に伝達をしてもらう。返事がくればいいのだが……。


「ヤバいことになってきた! 早くこっちも到着して聞き出さないと! 飛ばすぞ!」

「待った! 海星!」

「なんだよ!」


 海星はスピードをあげようとしたが蓮に止められ、思わず後ろを振り向く。

 後部座席には蓮と久世が座っているのを見て、蓮が何故止めたのかを理解した。


「あ……。」


 警察関係者を乗せていることを海星は忘れていた。スピード違反はできないだろう。


「確か……この車は広海の車だよな? あいつのことだ。武器の他にサイレンとかもこっそりと搭載してるんじゃないか?」


 久世はそう言いながら周りを見渡す。そして、蓮と海星も怪しそうなところを探し始めた。


「あっ。そういえば……父さんにここは絶対押すなって言われてたものがある。」


 海星は運転席の近くにあるシガーソケットを指した。


「押してみるか?」

「何が起こるんだろうな。」


 3人は緊張しながらも、何が起こるのか少し楽しみだった。海星は運転しながらボタンを押し込んだ。

 すると、車のルーフから赤色灯とマイクが突如現れ、サイレンが鳴り始める。そして、広海の声も聞こえた。


 "前の車邪魔だ! さっさと道ゆずりやがれ! "


 どうやらサイレンの音と共に罵声とも言える声が響き渡り、前方の車は素早く側道に道を譲り始めた。

 海星は居た堪れない気持ちになり、そっとボタンを押して音を止めた。その行動に青ざめた顔の2人もホッとする。

 

「久世さん……今の聞かなかったことにしてくれませんか?」

「そうしよう。急いでるところ悪いのだが……このままの速度を維持している方が良さそうだな。」


 車は制限速度を守りながら現場へと急ぐことにした。


 


 

 2人の少年は暗闇の空間に閉じ込められ彷徨っていたが、ものすごい勢いで降下していく。


「うわあぁぁーっ!」

「何だよ! これ!」


 その先に光らしきものが見えてきた。その光に吸い込まれるように2人は落ちていった。そして勢いよく弾き出される。2人は体を重なるように倒れた。


「どこだここ? あ……ごめん。伶青大丈夫か?」


 聖海夜は自分の下敷きになった伶青から離れる。


「ん……大丈夫。」

 

 伶青はゆっくりと起き上がった。怪我はしていないようだ。


「おかしいなぁ。……2人とも来ちゃったのか。」


 2人は声がする方向に勢いよく振り向いた。

 そこには6人いた。聖海夜の自宅で会った3人もいる。

 周りを見渡すとどこかのビルのオフィスのようだ。デスクやコピー機は埃が被っていた。古びた感じからしてすでに使われていない。廃墟と化していた。


「伶青は一般人だ。今から元の場所に帰してやってくれないか。」

「俺は能力者の君だけしか入れないようにしたはずなんだけど……もしかしてそっちの子も能力者なのかな?」


(こいつ! ベランダの下にいた奴だ!)


 聖海夜は焦っていた。伶青が能力者ではないが、融合した影響で能力が使えるようになっている。

 バレると危険も高まる。ここは隠しておいた方が身のためだろう。


 2人に何か細いものが勢いよく飛んでくる。 

 聖海夜は炎を掌から出してそれを燃やそうとしたが、炎からすり抜けて身体に巻き付いてきた。

 糸のようなもので、2人は身動きが取れにくくなる。手の指と足がかろうじて動くようだ。

 

「炎でも燃えない繊維だから、無駄なことはしないことね。それに能力者じゃないとしても、ついて来たのが悪い。あたし達の顔見られたんじゃ帰すわけにはいかないしね。それでいい? 後藤?」


 そう話すのは聖海夜の部屋に入ってきた若い女だ。

 後藤という男に目をやり確認を取る。


「あぁ。俺は一族がいなくなればそれで良い。あとは好きにしろ。」

「あんたの目的は蓮って子だけでしょ。」

「やめろ! 伽耶。」


 後藤は伽耶という名の女を、話しすぎだと言わんばかりの目をしながら睨んだ。


(一族? 蓮? 蓮さんのこと?)


「この2人どうする? 別々で監禁するか?」

「そうだな。2人で逃げられると厄介だ。」


 そう言って男は伶青に歩み寄り連れて行こうとする。


「やめろよ!」


 2人ははかろうじて動く足で必死で抵抗した。抵抗も虚しく伶青の足は掴まれ引きずられていく。

 しかし、ゴムが縮むかのように元のいた場所へと勢いよく引き寄せられた。勢い余って聖海夜と頭がぶつかり2人は倒れこむ。

 

「………っ! 何だ? いきなり飛んできたぞ!」

「わかんないけど、体が勝手に動いた。」

「お前ら! 無駄な抵抗はやめろ!」

「俺は何もしてないよ。そっちの能力者じゃないのか?」


 不信に思った能力者達は聖海夜と伶青の周りに集まる。そして数人がかりで伶青を引き離そうとするが、強い引力で聖海夜の横に引き寄せられるかのように元の位置に戻る。聖海夜は何度も繰り返すうちに、戻ってくる伶青を受け止めるようになっていた。


「そんなに引っ張ったら痛いって!」

「なんで離れない?」

「2人で一心同体みたいな感じだな。」


 何度も引き離されようとすることに伶青は嫌気がさし、4人の能力者達は息を切らし汗だくになっていた。


 "リュー。やっぱり融合した影響かな?"

 "うん。たぶんだけど……護身獣って宿主が解除しないとそばを離れられないことと同じなんじゃないかな?"

 "伶青の護身獣はリューってことになるから……解除しないと離れられないってことか。"

 "そして3人は繋がっている。心の会話を伶青も聞こえていれば。"

 "聞こえてる……。"


 伶青には聖海夜の護身獣のリューは見えないが、2人を見つめながら心で会話をするという、不思議な経験をすることになった。




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