蓮
「ルーズヴェルト…」
レンは怪訝そうな顔をしながら呟く。
名前は間違ってはいない。海外の留学先で使用してはいるがまだ2年も満たないはずだ。
つまり、留学先の国から誰かが俺を指名手配したということなのか?
「どうした?何か気になることでもあるのか?」
ヒロは手配書の内容を見つめながらレンに問う。
「いや、その名前なんだけど留学先だけでしか使用していない名前なんだよ。まだ2年位かな。だから自分の名前ではないよう気がして少し違和感がある。あと、年齢も19歳じゃなくて18歳だ。」
「つまりこの名前は本名ではないんだな。本当の名前は?」
レンは嫌そうな顔をする。言いたくないのが本音だ。
「天宮司 蓮」
蓮の容姿は父親の外国人の要素が受け継がれている。いわゆるクォーターだ。この容姿のせいで色々と不愉快な思いもした。初めて会う人は英語で話しかけられたり、見た目や名前のギャップに驚くか、ヒロのように腹を抱えて笑うか、どちらかが多い。
このやりとりも慣れているであろう蓮だが、特に笑われるのはとても不愉快である。彼は日本人なのだ。
「すまん。悪気はないんだ。」
謝罪しつつも笑いを堪えている。
「笑いすぎだろ。」
蓮はいつものこととはいえ呆れていた。
「えーと、話を戻すぞ。留学先で使用していた名前が手配書になったと。それでこっちにはいつごろ戻ってきたんだ?」
蓮は天井を見つめながら考える。
「こっちの家に夕方頃に着いたと思う。親父が激怒してて、物は散乱するし、家が壊れそうだったから逃げるように街に出てきたら襲撃された。」
今は夜中の1時頃だ。蓮が襲撃されて、隠れていた場所からここまで車で約30分。そこから数時間ほど眠りについていたとすればまだ半日も経っていない。昨日の出来事となる。
「話し聞くかぎりでは、父親はすごく怒ってるな。何をしたんだ?もしかしたら指名手配したのお前の父親だったりしてな。」
冗談っぽくヒロは言ったが、蓮は納得している顔をしている。
「そうなのかなぁ。俺が大学院を退学したことについては、相談もせずに勝手に提出したから怒ってるんだろうとは思う。でも、子供ができたことは電話がなかなか繋がらないし、仕方なくメールで報告したはずなんだ。けど…。」
レンの顔が曇る。
「それが、日本語と英語が入り混じって理解不能な文章だったらしくてさ。俺に子供ができた、パパになるって言いたかったんだけど、puppy(子犬)という単語があったから、親父は犬を飼うと思ったらしい。それにシュナイダー博士に提出するレポートまで送付していたから、余計にややこしくなった。」
ヒロは呆れて何も言えなかった。
(18歳で大学院にいける頭脳なのだから天才といううやつなんだろうなー。しかしだ!大事なことをなぜややこしくする。子供ができたと一言で済む話だろ?
そりゃ父親も怒るわ。ツッコミどころが満載でこいつの話を真剣に聞いてるとこっちまでペースが乱されそうだ。冷静になろう、俺。このままだと任務が終わらない。)
「留学先で襲撃されたり、何か変わったことなかったのか?」
「襲撃はなかったけど、家が燃やされた。」
(それを先に言えよー。)
「その日は何をしていたのか教えてくれるか?」
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しばらく蓮の追憶編が続きます。