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R E D  作者: 弓弦葉
第1章

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4階


 4階フロアは妖艶な赤黒い炎が纏っていた。天井には火災用のスプリンクラーが備え付けられているが、停電しているせいで機能していない。防護服を着た警察官達が消化器を持って消火作業を行っている。しかし火が消える気配はなかった。消えてもまた火が蘇る。

 炎の能力者は炎に身を包み、炎と化していた。

 パァーンッと音が鳴り響く。

 久世が銃で放った弾丸は、炎の身体でコントロールし、弾の通り道を構造する。そして穴をすり抜けていった。


「なるほど。器用にコントロールできるものだな。」

「おいおい。物騒だな。銃なんか撃っていいのかよ。」

「心配するな。許可はされている。」


 銃声を聞き、急ぎ駆けつけた拓海と類。非常用階段の扉を開ける。炎の明るさで周りが見えやすい。そして熱気で額が汗ばむ。警察官達は総理のいる部屋へ近づかせないように、銃で炎の能力者に応戦していた。


「副総監。遅くなりました。状況は?」

 

 4階フロアの真ん中はエレベーターホールになっている。ホールから左側はカフェ、右側は客室になっており、客室へと繋がる通路はT字になっていた。突き当たりの右には窓、左側は非常用階段の扉へと繋がる。


 久世は能力者が見える通路から離れ、左にある非常用出口側へと移動し拓海に状況を説明した。

 総理は部屋の1室でSPと待機しており、部屋からの脱出の準備をしている。それまで部屋までの道を安全確保する為、能力者に銃で応戦しており、併せて消火作業を行っていたが難航している状況だった。


 拓海は地下の機械室で非常用電力の復旧の作業を行っており、電気が復旧すればスプリンクラーが稼働し、炎が消えるかもしれないと久世に伝える。

 拓海は蓮に無線で状況確認の連絡をした。無線は海星から合流した時に渡されたものだ。海星は無線を付けていない。


「蓮。状況はどうだ?」


"氷は溶かしたけど稼働しない 機械をいま確認しているけれど不備はなさそうなんだ 電気ショック与えれば動くかもしれない 広海さん こっちに来れる?"


"わかった そっちへ向かう "


 非常用電力には少し時間がかかりそうだ。スプリンクラーが稼働するのを待つか、能力で消火するか悩んでいた。もし、炎に防御反応があれば襲いかかってくる。警察官達にも被害が及ぶだろう。


「炎に防御反応ありそうか?」

「わからない。能力で攻撃すればわかるが……。」


 類と拓海が悩んでいるところに、海星が現場へ駆けつける。被っていたニット帽を取りながら拓海と類のそばへやって来た。


「暑いな……。火は消せないの?」


 拓海は海星に炎に防御反応があるかもしれないことを説明をする。


「パーティー会場から抜け出せたのか?」

「父さんの花火攻撃で、目が眩んでる間に脱出した。暗闇の中1人しかいないことにはまだ気づいてない。」

「気づくのも時間の問題か……。」

「そういうこと。それでさ、防御反応のことなんだけど。護身獣に聞けばわかるんじゃないか? ウィン、わかる?」


 海星は通路にいる能力者の方へ歩みよりそっと覗いた。


"うーん たぶんやけど 本体以外はないと思うで 俺より親父や祖父さんほうがわかるやろ どう思う?"


「親父と祖父さん?」

「拓海の護身獣がお父さんで、類さんのがお祖父さんらしい。で、聖海夜の護身獣が弟だって。」

「家族だったのか……それで、龍水はどう思う?」

「長老は?」


 拓海と類は護身獣に問いかけた。


"我もウィンと同じ意見だ 父上は?"

"同じく"


 護身獣達が言うには炎の能力者の纏っている炎以外は防御反応はないとみた。それさえわかれば、他の炎は能力で消化しても危険ではないだろう。


「どうする?拓海。お前の能力で消してみるか?」

 

 拓海は頷き、久世に防御反応は恐らくないことと、能力で火を消してみると伝え、久世は承諾した。

 能力者のいる通路側へと移動した。能力者はエレベーターホールの近くで、攻撃をしながらも銃弾をかわしている。身体は炎と化しているが実体だ。もし弾が当たってバランスを崩し倒れでもしたら命が危険に晒される。総理の部屋は非常用階段の近くだ。それを邪魔をして進めないようだった。拓海にはそれが違和感に感じる。


 通路へとしゃがんで進み、通路の中央近くにいる警察官の後ろへと移動した。手を壁に置き、能力者の動きを見て本体の炎には当たらないようにタイミングを見計らう。

 能力者が中央の廊下に降り立った瞬間、拓海は氷の能力を使った。水の能力者ではあるが、部分的であれば水を冷却し凍らせることができる。氷の能力者に比べれば威力や強度は劣るが、フロア全体の火を消すことはできる。

 瞬く間に壁と天井が凍り火が消え、熱かったフロアが寒さへと変化する。


「能力者!? 何故ここにいる! パーティー会場から抜け出せないはずだぞ! あいつ、何やってるんだ!」


 炎の能力者は怒りを露わにした。理由はわからないが、能力者達をパーティー会場に閉じ込める計画だったのだろう。

 海星は火が消えたと共に通路に風で竜巻を起こし、拓海は竜巻に沿えるように水を纏った。ここまで来させないようにする為の時間稼ぎだ。拓海は非常階段の通路へと戻り無線で状況を知らせる。


「4階のフロアの火は消した。ただ少し気になることがある。」


 パーティー会場の氷の能力者と4階にいる炎の能力者の2人はチームであり、自分達能力者を会場から閉じ込めるつもりだった。総理を襲撃するのであれば他にも方法はある。フロアの一面に炎に包まれていた。火を伝って総理の部屋へ行くこともできることを考えると、他に別の目的があって時間を稼いでいるんじゃないだろうかと拓海は伝える。

 その場には久世もおり、話しの内容を聞いていた。久世はこの停電を利用して何かしら事件がないか確認をする。


"わかった 俺も急ぎそっちへ向かう 会場のヤツもそっちへ行くかもしれない "


「非常用電力はどうするんだ?」


 そう拓海が言ったそばから電気が復旧し始めた。非常用電力が稼働したのだろう。周りが明るくなった。


"タク! 広海さんの怪我がひどすぎる! 至急救急車を呼んでくれ! 早く処置しないと危険だ!"


蓮から無線が入る。今まで暗闇で広海の怪我の状況がわからなかった。電気が点いてはっきりとわかったのだろう。蓮は大学院で医学系の研究をしていた。蓮の慌て具合から広海の怪我がよほどのことだとわかる。


「久世さん! 至急救急車を頼む! 兄貴の怪我が危険な状態らしい!」

「至急、救急車を要請する。」


 拓海の慌てようからも、久世や類と海星も広海が危険な状態だと察知した。この場から離れて様子を見に行きたいところだが、まだ能力者達がいる。現場を離れるわけにはいかない。ただ無事を祈るしかなかった。


「すまない。こちらの状況も悪い。今は能力者の力が必要だ。皆を無事に家族の元へ帰す任務が私にはある。しばし付き合ってくれないだろうか?」


 久世は一族の気持ちを汲んだ。皆、それぞれの思いを募らせ任務へと就く。




 地下駐車場の機械室では蓮が広海の応急処置をしている。

 聖海夜は広海が自分のせいでこうなってしまったことにショックを受けていた。

 広海のふくらはぎらへんには氷の刃が刺さり貫通している。出血もひどい。太ももで止血はしていたが、蓮はさらに強く縛る。幸い、地下に洗濯ルームがあった。シーツを包帯くらいの大きさに破り、足に巻いて固定していた。


「広海さん……。いつから?」

「ん? わかんねぇ。」

 

 蓮は聖海夜には聞こえないように広海に伝える。


「早く処置しないと手遅れになる。」

「……。」

「それでも行くというのなら理由を教えてくれ。」

「確かめたいことがあるだけだ。」


 広海の顔は真剣だった。蓮は広海に背中を向け背負った。落ちないように2人の身体を布で縛った。


「蓮に背負われる日が来るとはなぁ。」

「俺は止めたからな。どうなっても知らないよ。」

「わかってるよ。それよりさ……俺を運べるのか?」

「広海さんぐらい、俺だって運べるよ。」


 広海は小柄だ。体重は蓮よりもないだろう。

 蓮は広海を背負いながら立ち上がろうとする。しかし、微動だに動かない。


「俺の体重はそんなに重くないけどな。蓮の場合、体より頭を使ってるからな。ただの運動不足だ。」


 代わりに広海と同じ体型で小柄な聖海夜が背負った。身長も体重も蓮の方がが勝っている。まさかの出来事に蓮は頭を抱えてショックを受けた。


「マジでありえない……。」

「俺は部活で背負いダッシュとかよくしてたから、4階までならなんとか大丈夫だ。」

「落ち込んでないで、早く行くぞ。」

 

 蓮は無線でタクに伝える。


「タク! このわからず屋の兄貴を今からそっちへ運ぶから! 俺はちゃんと止めたからな! そっちへ行っても絶対安静だ! あとよろしく!」

「俺を背負えなかったからって、拓海に八つ当たりするなよ。」


 こうして3人は地下駐車場から4階のフロアへと移動する。エレベーターは稼働しているかもしれないが、また停電が起きると厄介だ。非常用階段で上へと急いだ。


 

 4階のフロアでは竜巻と水が回転し続けていた。炎の能力者は攻撃をしているようだが、こちらまでは到達できずにいた。

 いつ攻撃が来てもおかしくはない。一族も合わせ、全員銃を構えて射撃姿勢をとり、牽制射撃をしている。

 拓海は警察官なので勿論のこと、類と海星についてはCIPに所属している為、18歳以上の者は講習を受ければ銃の使用許可が得られる。


「兄貴がこっちに向かってる。」

「怪我は大丈夫なのか? 危険な状態なんだろ?」

「蓮は止めたらしいが、無理だったようだ。」

「父さんが素直に言うこと聞くわけないしな。」


 3人は無理矢理にでも救急車に乗せるしかないだろうと意見は合致していた。


 非常用扉から広海を背負った聖海夜が入ってきた。息づかいが荒く、汗だくになっている。急いで階段を駆け上って来たのだろう。扉から離れたところで広海を降ろし床に座り込む。


「あれ? 蓮は?」


海星は銃声音がするフロアの中、2人のことに気付いて急ぎ近寄った。周りを見渡しても蓮がいない。


「今頃、3階ぐらいで息切れしてる頃だ。海星、俺を久世のところまで運んでくれ。」


 海星は広海の怪我をみる。傷口は手当てをされていて、どの程度の傷までかはわからない。だが覆われた布は赤く染まっていた。不安をよぎりながらも、指示をしている久世のところまで背負って運んだ。

 拓海と類も広海が合流したことを知る。

 

「久世、話したいことがある。」

「ここでは副総監と呼べ。それより何をしている。早く救急車へ乗れ! 上司命令だ!」

「話ししたら乗るから聞いてくれよ。」

「なんだ? いい案でも浮かんだのか?」


 広海は不適な笑みを浮かべた。

 また、突拍子もない作戦なのかもしれない。

 

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