はじまり
ある街のどこかに無法地帯の場所があるらしい。
そこは裏社会の街と言われ、そこに辿りついた者は二度と帰ることはできないという。
凡人なら異様な雰囲気を醸しだしたこの街に躊躇するだろう。
壁は血飛沫で緋く染まり、深紅の花に囲まれていることから”RED”と呼ばれている。
今はまだ噂に過ぎない。
◇◇◇
(何でこんなことになったんだ…)
繁華街の外れた通路の物陰に身を隠すように、少年は荒い息を吐きながらそう思った。
黒のTシャツにGパンにスニーカーと軽装な格好だが、汗と血が滲み出ている。左腕には切り付けられたかのような深い傷を負い、右手で出血を抑えていた。
とりあえず何かで止血できないかと周りを見渡す。飲食店街の裏口だからか悪臭の原因のゴミ箱とそこに入りきらなかったゴミ袋に包まれた生ゴミばかりが目に入る。
ゴミ袋の山に身を委ね、埋もれるように身を隠す。悪臭はするが疲弊困憊の少年にはまるでお気に入りのクッションに座っているような気持ちになった。
スーパーのビニール袋らしきもの見つけ、端を持って引っ張った。強度を確認してから腕にきつく縛り止血を試みる。
(ヤバイな…血を流し過ぎたか……。 それとも…… )
少年は意識が遠のいていく。微かな意識の中で少年の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
◇◇◇
少年はうっすらと目を開ける。意識はまだ夢の中にいるような感覚だったが、じわじわと左腕の痛みが意識をハッキリとさせてくる。
薄暗い。外の灯りの漏れでなんとか視える感じだ。ここはどこだ?何をしてた?そう自分に問いかける。
天井を見つめ、ここは部屋と認識した。
ベッドらしきものに寝ているようだ。少年は視線を天井から周りを見渡す。
「おー。目ぇ覚めたか?」
どこからか明るい声が聞こえた。声を放った人物が近づいてくる気配がする。
暗くて姿は確認できないがうっすらと人影が見えた。
「俺はヒロだ。自分の名前、わかるか?」
「名前? ……レン……だ。」
「よし、意識はちゃんとあるな。もう少し救助が遅けりゃやばかったぞ、お前。覚えてるか?」
(救助?)
レンは自分の身に起こったことを思い出した。
(そうだ。俺は何者かに襲われたんだった!!)
体を勢いよく起こそうとしたが支えた左腕の傷に激痛が走り、あまりの痛さに声すら出ずその場に疼くまった。
( ーー‼︎‼︎ )
「まだ安静にしてろよー。応急処置はしたけどここにはあまり器具がなくってさぁ、麻酔が切れて意識が目覚めたら激痛がひどいよな。とりあえず痛み止めを飲め。落ち着く。」
差し出された痛み止めを飲んだ。いや、無理矢理、薬と水を口に放り込まれて飲まされたと言ったほうがいいだろう。案の定、レンは咳込む。
なんて雑な人なんだ………。
レンはヒロの面影に視線(睨み)をやる。
「何か聞きたげな表情だな、俺が知ってることなら話してやるよー。」
「ヒロさんは何者で、ここはどこなんだ?」
ヒロはう〜んと悩みながらも答えようとする。
「この場所かぁ…レン、お前”RED”って街の事、聞いたことあるか?」
「RED?確か、小さい頃に学校で噂になってて聞いたことがある気がする。裏社会の街で足を踏み入れたら2度と帰れない…とか…」
レンは不安そうにヒロに視線をやる。
「聞いたことがあるなら話が早い。ここがそのREDだ。で、俺は殺し屋だ。」
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