ep.1 よぎる記憶
こんにちは!作者です!
執筆活動の歴はあまり長くありませんが、描きたいものを書いていきたいと思っています。お時間があれば是非読んでください!
「女性は友達女性は女性は友達女性は女性は友達女性は女性は友達女性は友達、、、、」
第二期魔王討伐隊の出発式当日、1人を除いてまだ他の誰も来ていない会場でルイスは呪詛のように何かを呟いていた。
「ルイス、そろそろ辞めてくれないかい?私まで女性が苦手になりそうだ。」
そうルイスを宥めたのはライネルであった。ライネルは自身の剣の手入れをしながら話を続ける。
「今回君とパーティを組む人を決めてくれたのは君の母上なんだろ?良い人が来るに決まっているよ。」
「いや、お母様だからこそ心配なんだよ!冷静に考えてみれば魔王討伐の旅路で女性を克服するってなんだよ!そんな思考に達する人が適切な人選をしてくれるとライネルは思う!?」
「うわ、普通に喋り始めた、、、。」
ライネルは剣の手入れをやめてようやく対話ができる状態になったルイスに向き直りながら未だ続く彼の不満を聞く。
「前に色々手伝っていただいたけどその時の人選だっておかしかった!鞭を持った女性だったり、痛ぶられるのが好きな女性だったり、挙句には露出癖がある女性を連れてきたんだよ!」
「そ、それも考えあっての人選じゃ無いかな?」
「だとしてももっと、、こう、、、あるだろ!」
ひとしきりルイスが騒ぎ立てた後に、一呼吸置いてライネルは口を開く。
「こうなってしまったのも、君が女性が苦手なのも変わらない事実だ。現状を嘆くより打破する方法を考えよう、ルイス。」
「打破って言っても一体どうやって?」
「例えばさ、、、」
ライネルはいくつかルイスに方法とそれに使う物を伝授し、ルイスは覚悟を決めて残り2人のパーティメンバーを待った。
それからほどなくして第二期魔王討伐隊の参加者が続々と会場に集合し始める。
「人が、、、あぁ心配だ。」
「大丈夫!当たって砕けろだよ、ルイス!」
「白いローブと金髪剣士の2人組、、、あの!」
不意に女性に声を掛けられてルイスは小さい悲鳴をあげ、ライネルは気さくな返事を返して振り返る。そこには長い金髪のポニーテールの少女と眠たげに欠伸をする赤髪の女性がいた。
「大魔法使いさんとライネルさん、ですよね!」
「そうです。お二人がアイシャさんとカイネさんですね、よろしくお願いします。」
「ふあぁ〜、よろしく。そっちのイケメンがライネルでそっちのお辞儀してる方が大魔法使い様ね。」
「はっ、初めまして。ルッルイス・コッココンティーでしゅ。」
「あちゃー。」
ライネルは頭を抱えてルイスを見やる。貴族式の礼をしながら挨拶をすれば顔を見ずに意思疎通ができて品性もあると考えていたが、そんな道理はルイスに通じなかった。
「あはは、女性が苦手だというお話はスカウトされた時にお伺いしています。それでも私は大魔法使い様とパーティが組めて恐悦至極です!私の名前はアイシャと言います、よろしくお願いいたします。」
そう言ってフォローしてくれたのは金髪ポニーテールのアイシャの方だった。右腰には剣を下げ、左腰には魔法触媒用の小さな杖を下げており、遠近バランスの良い魔法剣士である。
「まっ癖があろうと超優秀な後衛である事には変わりないし、私武闘家で前衛だからサポートよろしくね、大魔法使い様。」
アイシャに次いでもう1人のパーティメンバーであるカイネが目尻を擦りながらふにゃふにゃとした声で喋る。そのおっとりとした印象とは真逆の刺々しいグローブが両手に嵌めている。
数秒の妙な間の後にん〜と唸りながらカイネはゆっくりと口を開く。
「それで、いつまでそうして大魔法使い様はお辞儀してるの?」
「ひうっ!」
ビクつきながら体を起こすルイスを見ながらカイネはうわァと息を漏らし、心優しいアイシャもその様子には苦笑いをするしかなかった。2人の反応を見て肩を落とすルイスにライネルは鼓舞する。
「だ、大丈夫!まだ1個目の方法を試しただけだろう?他の方法だったら、、、」
「各自、パーティごとに並んでくれ!」
ライネルの言葉を低いがよく通る声が遮る。ふと周りを見れば国家推薦されたメンバーも到着しており、出発式は今にも始まろうしていた。
「私は第二期魔王討伐隊隊長のクレインだ。この度はー」
「ルイス、シャキッとして。」
「う、うん。」
ザワザワ
「ん?」
不意に周囲の空気中の魔素が揺らぎ始めたのをルイスだけが感じ取る。背筋がチクチクする感覚に襲われる。
「場所は城壁外の草原、周りに魔素に干渉する物や生物もない。なのに何故?」
「ーーであり、我ら今団結し、魔王オスロイエスを滅ぼす時だ!」
隊長の演説もクライマックスに近づき人々の熱気も高まる中、ルイスだけが冷静に環境の変化について考える。
「ーー魔王を打倒するぞ!」
「まさか、魔族か!?」
演説が終わり、皆が一斉に湧き上がるその瞬間にルイスは違和感の正体に結論を出すと同時に周囲の魔素をマナに変換し、魔法陣を展開する。
ザワザワザワッ!
「防護魔法!」
「キャーー!」
「うおぁーー!」
ルイスが防護魔法を展開した時にはすでに出発式は阿鼻叫喚に包まれていた。
「何ですか、、、これ?」
「これは欠伸してる場合じゃあ無いねぇ。」
魔法の障壁の外では人より大きい鴉が人々を襲い、何処かに連れ去っていく惨状が広がっていた。その中で笑い声が一つ響く。
「カカーカカッ!ほら、飛んでけ人間共、そして俺の名前に恐れ慄け!俺の名前はペトス様だ!」
「何でこのタイミングで魔王四天王の1人がっ!?」
ライネルは鞘から剣を抜きながら叫んだ。目の前のペトスと名乗る男は唾を飛ばしながら叫び続ける。
「開幕必殺キックってとこさ!テメェらがここで散り散りになりゃ俺の仕事も減る!」
気付けば辺りにはペトスとルイス達4名しか残っていなかった。たった数秒で第二期魔王討伐隊は崩壊したのである。
「あ?何でテメェら4匹残ってんだよっ!」
「どど、どうしましょう!?」
4人を見て激昂するペトスを見てアイシャは涙目になって動揺し、カイネも戦闘体制はとっているものの腰が引けていて、先頭に立って剣を構えているライネルの手も少し震えている。
「ライネル、下がって。」
「へ?」
ルイスは深呼吸しながら覚悟を決める。
ルイスの頭の中には目の前の魔族との勝負での勝算はない。ただその胸中では、ありし日の守れなかった者とライネルを重ねていた。
「カリン、、、僕は、、、。」
「1人ずつぶっ飛ばしてやっからな!まずはヒョロガリローブのテメェだぁ!」
ペトスは背中から翼を生やして人の目では追えないスピードでルイスとの距離を詰める。ペトスの動きを視認できないのはルイスも例外ではない。
「そらよ!一人m」
「拘束魔法!」
突如として地面に魔法陣が浮かび、青い魔法の鎖がペトスの体を拘束してペトスの拳がルイスの鼻先スレスレで止まる。
「なっ!?俺の動きが見える人間だと!?」
「見えてない、魔力探知さ。直線的な距離の詰め方で助かったよ。」
ルイスは冷静にそう言い放ちながらペトスの首に手をのばし、詠唱を始める。
「イア・クスム・レウプ・エシr」
「ペッ」
「っ!?」
ペトスは油断し切っているルイスの目に唾を吐いて詠唱を妨害し、緩くなった拘束魔法を強引に振りほどき、ルイスに回し蹴りを浴びせる。
「がっ!」
「俺をコケにしやがって!最初に殺してやるよっ!」
ペトスはそう叫びながら再びルイスとの距離を詰めようと翼に力を込める、がそれは叶わない。
「クソッ、またコレかよ!?」
ぺトスの足には青い鎖が再び絡みついていた。
「こんな物!」
一瞬にして引きちぎられ音を立てて鎖は弾けたが、その一瞬の間はルイスにとって大きな隙となる。
「切断魔法、落石魔法」
「ちっ!」
切断魔法によってペトスの腹部に切り傷が幾つか出来るが、その傷を見ながらペトスは嘲笑う。
「効かねぇな。」
「それはジャブだからな!」
ルイスが指を弾くとペトスの頭上から大量の追尾する岩が落ちてくる。大きく横に飛んでペトスはその全てを避け切り、高笑いをする。
「本命が当たってねぇぞ下手くそ、、、ってまたかよっ!?」
「本命はこっちだからな。イア・クスム・レウプ・、、、」
ペトスは再三拘束魔法で捉えられ、身悶えするなかルイスは切断魔法の完全詠唱を唱えながらペトスの唾が掛からない距離まで近づいて止まる。
「待て、待て待て待て!話が違う!」
「エシルス、我が魂に応えよ!」
「い〜〜!」
不可視の斬撃がペトスの首に当たる寸での所で鎖の拘束が緩み、ペトスは天高く舞い上がる。
「思い上がるなよ人間ごときがっ!テメェの顔覚えたからな!」
そう叫んで黒い翼は空の彼方に消え去った。
「今回は、、、守れた。」
ドサッと膝から崩れ落ち、ルイスは女性恐怖症を患った日の事を回想していると不意に何者かに右肩を触られることに気づいた。
「神の慈悲をば彼の者に。武功と勇心に拝領は与えられん、治療。」
「ほえぇ!?」
右肩に触れて治療の祈祷をしていたのはアイシャであったことを認識したルイスは赤面して、白目を向いて気絶した。
ー 勇者アイシャの英雄譚第一巻 序章『出会い』ー
それを見て大慌てのアイシャと爆笑するライネル、一連の流れに困惑するカイネの姿までは後世の英雄譚には記載されていない。
この度はお読みいただきありがとうございました!
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