僕はまだ
祭りに行こうと誘われてダルさを振り払い、左右を何処までも並ぶ提灯の道を歩いて、活気ある出店を横目で見ていた
目的地は、兵事祭りが行われる地元の神社なのだが、未だに待ち人を見つけることができずにいた
少し歩き回っているとズボンのポケットのスマホがバイブを鳴らす。内容は待ち人からのドタキャンメールで「マジかよ…」と口についてしまうが
しつこく誘われて来てみて、誘った当の本人は用事が出来たから行けなくなったとなれば不機嫌にもなるだろう
誰と居るわけでも無いのでそのまま帰宅しようかと考えるのだが、ここまで来たのだからもう少し出店を回ってみようとも思い、見慣れた祭りを歩いていく
歩いていると通りから外れた所に人集りが出来ていることに気づいた
近づいて行くと人集りの中心に少女が倒れ込んで居たのだが、何故か周りの人は揺り起こそうとも、安否の確認をしようともせず、ただ心配の目を向けながら立っているだけ
秋人は少女の所へ行き起こしてあげようと思ったのだが、
バチッッ!!
人混みをかき分け近づこうとした時、なにかに弾かれる感覚と共に大きい音が響く
秋人は弾かれた感覚が長く残っているという違和感に気を取られ、少女が起き上がっていることに気づかなかった
「なぁなぁ、それでその後どうなったんだよ」
「俺も覚えてなくてさ、学校から帰ったのは覚えてるんだけどそれからの記憶が無くてさ?気づいたら俺の部屋だったんだよ」
学校の昼休み、学食で唐揚げ弁当をつつきながら秋人は正一と話していた
「それって本当にあった話なのか?寝落ちして見た夢とかじゃないのかよ?」
「それも思ったんだけど、なんか現実味があるって言うか…本当にあったようなそんな気がするんだよな」
「ふーん、まぁ話してもその先は行き詰まりそうだし話変えるんだけどさ」
真剣に正一が向き直り話そうとするさまに秋人は少々吃る
「な、なんだよ」
「俺こう見えても真面目じゃん?」
「真面目か?」
「しかも容姿端麗成績優秀運動神経抜群じゃん?」
「いや、合ってるところ運動神経だけじゃん」
「そんな事はどうでもいいんだよ!」
「あー、その先の話はだいたい分かったからそれ以上話さなくていいよ」
「はぁ?なんで秋人に俺の話が分かるんだよ!」
「その続きはあれだろ?いつもみたいになんでモテないんだろうとか言うんだろ?」
「ぐっ…」
「見抜かれた気持ちをわざとらしく声に出すなよ」
そんな話をしながら雑談をして昼休みを過ごした。午後の授業を受けている時、いつもは感じない眠気が秋人を襲っていた
なんだよ、昨日もしっかり寝てたのになんで眠いんだ?
毎日生活リズムをほとんど崩さない秋人には珍しい事だったのだが、最近の疲れでも溜まってるのか?と考えながらもしっかりと授業を受けていた…が気づいた時には頭部は項垂れ秋人は意識を手放していた
気が付くと差し出されていた両手に目線が行く
その両手は細く白く一目で女性の手だと分かったが、持ち主の顔は靄がかかっているようにぼやけていて誰なのかは分からない
差し出された両手が何を指しているのか、何を求めているのかは分からないが、その手を引かなければと思ってしまう
無意識に差し出された両手を取り引くとその女性は軽く体を預けるように倒れ込んできた
秋人の目が覚めたのは教師の投げたチョークが頭に当たった衝撃だった
「おい結城、授業は寝るな」
「いってぇ…すいません…」
「寝るならバレないように寝ろ?」
『バレなきゃ良いのかよ』
秋人の席は窓際の後ろから2列目、よく教卓から遠い俺にチョークを当てられるのか
他の人に当たったらどうするつもりだったのか…
先生が前を向き授業を再開した時、隣から肩を叩かれた
「秋人、お前が授業中に居眠りするなんて珍しいじゃん寝不足なのか?」
「原因は分からないが、恐らく正一みたいに夜更かしして寝不足なわけではないな」
「ひっでぇ、俺はいつも夜更かししてるわけじゃねぇのに…」
「悪かったよ、バカみたいに運動して疲れが取れきれない時とかもあるよな」
「バカみたいには結構だ!」
正一が少し大きな声で叫んだ時 秋人の目線の端には白い物体が飛んでくるのが見えた。
その白い物体、通称『チョーク』は真っ直ぐ正一の頭へ直撃する
「おい佐波!うるせぇぞ、次叫んだら職員室に来てもらうからな!?」




