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転生つぎはぎキメラの冒険譚  作者: ぐみうみさんば
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王都 フォルヘイム

思う通りの展開を作る、というのは難しいですね。

王都は、城壁の荘厳さもさることながら、中の賑わいもすごかった。

「そこの兄ちゃん!どうだい、銅角牛(レッドホーンブル)の肉買っていかないかい!うちのはそんじょそこらの高級店にも負けないくらい質がいいぜ!」

「そんなおっさんのとこ肉より、うちの野菜を買って行きなよ!どうだい、新鮮だろ?生でも美味しいよ!」

「いやいや!そんなオバハンの野菜よりも」

「ちょっとあんた、誰がオバハンですって?!まだ私は32よ!」

「ねえねえそこのお姉さん、占いやっていかない?一回500イルで…」

本当にすごい、呼び止められない場所がない。10mほど進むたびに5回くらい呼び止められてる。その度にエピは軽くあしらうし、リューは全部受ける。そうして牛歩の歩みながらもたどり着いたのは一つの建物だった。

「ここは?」

「冒険者のギルドだ。魔物素材とかの戦利品を買い取ってくれたり、依頼が出てたらこなせば報酬がもらえる。ま、便利屋って側面もあるがな。」

「んで、とりあえず今日は買い取りをお願いにな。とりあえず今日俺らが採ってきたヤツと…ほら、ルシルの持ってるそいつも。」

エピの指したのは蟻の大顎だった。確かに売って金にするのも良いけど…

「ううん、これは売らない。」

「んぉ、そうか?まあそうだな、気持ちはわかるぞ。俺もガキの頃初めて倒した泥人形(マドパペット)」の核、売らずに持ってるしな。」

「あたしは風刃狼(ゲイルウルフ)の牙!ペンダントにしてもらってずっと付けてるんだ、ほら」

リューは服に隠れてたペンダントを見せてくれた。

「おぉ…」

「ふふ、いいでしょ?大事なお守り。よし、じゃあ私たちのだけ売っちゃおう、あ、ルシルくんはお外で待ってる?それとも一緒にくる?」

一択だ。

「一緒に行ってみたいです!」

「うん!じゃあ行こー!ほらお兄ちゃんも!」

「わかったから押すなって…」

チリンチリンというドアベルの音と共に、冒険者ギルドの扉をくぐる。


そこには、依頼が張り出されている掲示板と酒場、受付、解体所。あまりにもありきたりで、しかし俺にとっては最高に新鮮な景色が広がっていた。

「いらっしゃい、お二人さん。何の用だい?」

「買取を頼みたい。」

「はいよ、何を売ってくれるんだい?」

「あぁ。星熊(ステラベア)の毛皮と爪、長角兎(アルミラージ)角兎(ホーンラビット)の角と、毛皮…肉も買い取ってくれるか?干してある。」

「おぉ、なかなか腕がいいな。そうなあ、2000イルだ。」

「ねえおじちゃん、綺麗に解体するの、結構頑張ったんだよ?手間賃でもう少し色つけてくれてもいいじゃない?」

「…ふむ。確かに綺麗にバラされてるし、肉の処理も良い出来だ。わかった、おまけしとくよ、2500イル。」

「うーん…もう一声!」

「欲張るねえ嬢ちゃん、…2750」

「乗ったぁ!!」

「はいよ、まいど。」

「すまんな、妹が。ありがとう…そうだ、角兎と長角兎、今日はやけに多かった。特に角兎なんかは100匹超えてたんじゃないか?一応気をつけたほうがいいかもしれん。黄昏森の北の草原だ。」

「繁殖期か?伝達しておく、ありがとうな。」

「良いって事さ、またよろしく」


取引と、軽い世間話が終わったところで、エピとリューが戻ってきた。

「待たせたな。」

「いえ、大丈夫です。」

「んふふ、良い子だねえ!よしよし」

撫でられている。…申し訳なさとこそばゆさが胸の中で渦巻く…

「さて、それでなんだが…これからどうする?ルシル。見てもらった通り、俺らは冒険者だ。ずっとは見てやれないし、こんなこと言うのもあれだが、いつ死ぬかもわからない。もちろん、拾っちまったからにはできる限り面倒は見る気だが…」

…確かに、ずっとお世話になるわけにもいかない。この優しさにずっと甘えるのも良心が痛むし、この身体のこともある…なにより、きっと俺がしたいことじゃない。

「ちょ、お兄ちゃん!え、えっとね、お兄ちゃんはこんな怖い事言ってるけど全然気にしなくて良いからね!私達だって結構稼いでるわけだし…」

「いえ、エピさんの言う通りです。その…僕は、冒険者になってみたいです。エピさんと、リューさんみいに!」

そう言うと、二人の間にしばしの沈黙が流れる。

「…残念だが、冒険にはせめてもう2,3年経たないと送り出せないな。せっかく救った命が自分で散りに行くのは見過ごせん。」

「まあ、ルシルくんぐらいの歳の子もいるっちゃいるけど…帰って来ないことの方が多いから。」

ごもっともだ。実に正しい意見だ。だが…

「それでも、冒険者になりたいんです!!」

ずいっと身を乗り出して、言葉を発する。言っても聞かないモードだ。

「いやしかし…」

「絶対に、どうしてもなりたいんです!!」

「でも、危ないし」

「それでも…!!」

「「…うーん。」」

凄く困らせてしまってるな…申し訳ない。だが、止まるわけにはいかない…!

こういう切り方が好きです

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