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転生つぎはぎキメラの冒険譚  作者: ぐみうみさんば
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当たり前なひと悶着

「そろそろ着きますよ」


御者が言うと、エピとリューは荷物をまとめ始めた。それにならって、自分も荷物…大顎をしっかりと抱える。


「そういやずっと気になってたんだが、それ、坊…ルシルはどうしたんだ?」

「これですか?こいつに森で襲われて、なんとか倒せたんです。それで、何かに使えるかなと思って。」


あのまま街道も何も見つからなかったら森で暮らすしかないと覚悟を決めていたところだった。


「そうか…そりゃ災難だったな。その…聞き辛かったんだが、腕も?」

「はい…すごい力で挟まれて…」


その後接業(ツギ)剥業(ハギ)を使ったら、腕がなくなっていました、なんて言えるはずもなく…


「うひぃ…痛かったよね…よしよし___あれ、でもじゃあその傷口…」


…確かに考えてみれば、あんな恐ろしい大顎に挟まれて、こんなに綺麗にふさがった傷口は不自然だ。


「え、えぇっと…これはその」

再生(リジェネ)かなにか持ってるのかな!?いいなぁ…」


何か都合よく捉えてくれたようなので、それに乗っからせてもらおう。


「え、っと、多分…」

「あ、そっか。そういえばルシルくらいの歳だと鑑定の儀もまだだよね。」


「一応、王都に着いたら診てもらおう。だが再生(リジェネ)か。少し羨ましいな。腕が生えるとまでは行かなくとも、傷口がふさがってくれるだけでぐっと死ににくくなる、俺達みたいな冒険者にとってはそりゃもう垂涎もの…っと、リュー、ルシル。お話はここまでだ、着いたようだぞ。」


…とりあえず、上手く誤魔化せたようだ。


馬車を下りるリューとエピを追って外に出てみれば、そこには見上げる限りに続くような巨大な城壁があった。大きな掘にかかる橋は幅10mはありそうなほど広く、巨大な門の傍には何人かの鎖帷子を纏った人が立っていた。きっとこの門を守る衛兵だろう。


「うわぁ…っ!!!!!」

でかい。ひたすらにでかい。いったいどれほどの時間と労働力と予算を使って作り上げたのか、何一つ想像できない。

「ルシルは王都を見るのは初めてか。すごいよな、俺も最初見た時はそりゃあもう驚いたもんだ。こんなものを人が作れるのか、ってな。」

「はい…とってもすごいです…!圧倒されちゃってもう…!」

「ふふ、私も最初はおんなじくらいはしゃいだな。ね、知ってる?この城壁って昔のすごーーい魔法使いが作ったんだって!」

「そ、そうなんですか!?」

「そんなん御伽話だろ、こんなでかい壁を作るのにどれだけの魔力がいると思ってるんだ?」

「もう!いいじゃんそっちのほうが夢あって!お兄ちゃんはまったく!」

「あはは…」

そんなたわいもない話をしてるうちに、入国審査の番が回ってきた。

「身分証明書になるものを。」

「あぁ。」

「はーい!」

2人は何か小さなカードを門番に手渡して、門番はそれを何か水晶のようなものにかざしている。

「ふむ。お二人とも大丈夫です。ですが、そっちの坊やは…」

「あぁ、この坊主は拾い子でな。身分証になるものがないんだが…」

「そうですか。では、仮の身分証をお作りするので5000イルをお支払いください。」

「うっ…な、なあ、まけてくれよ…5000は結構…」

「無理ですね。」

「…分かった。」

エピはすごく惜しそうな顔で袋から金に輝く硬貨を5枚出して門番に差し出す。

「…ご、ごめんなさいエピさんリューさん…」

「いや、気にしないでくれ。これも大人の勤めだ…」

「んふふ、カッコつけちゃって…でもほんとに気にしないでね。」

…本当にいい人達なんだよな。最初に出会えたのがエピとリューでよかった、絶対に何かでお返ししよう。

「はい、確かに。ではこちらへ。ええと、エピさんとリューさんはお外でお待ちください。」

小門をくぐり案内された小部屋には、輝く石の取り付けられた不思議な機械があった。

「これは…?」

「あぁ、身分証を発行する機械です。そして、ではいくつかご質問させていただきます。」

そう言いながら、彼は小さなベルを取り出す。

「嘘はこちらの『サイコロジー』により看破されるので気を付けてください。続くようですと身分証が発行できなくなり、また悪質な場合拘束させていただく場合がございます…まあ、硬く言いましたがやましいことがないなら普通にしてくれれば大丈夫ですよ、坊や。」

「は、はい…っ」

「ではまず、お名前を。」

「ル、ルシルです。」

「ルシルくんね。出身は?」

…まずい。ええと…うーん…

「えっと…たぶんすっごく遠いとこです…いつの間にかあそこの森にいて…」

嘘は、嘘はついていない。

「あそこの森っていうのは、まさか黄昏の?」

「はい、えっと、クレプスクルム…?でしたっけ」

「わざわざあんなとこにまで捨てに行くなんて…けほん、それは災難でしたね。では、ご年齢をお教えください。」

「えっと…10歳…」

ちりんちりんと、サイコロジーと呼ばれたベルが鳴った。

「…ご年齢は?」

「…ごめんなさい、分からなくて…」

(肉体年齢か精神年齢どっちを答えればいいか)分からないだから…頼む反応しないで…

「…そうですか。うぅむ、少し情報が少ないですが…お連れのお二人の記録をみた限りとても善良で模範的な方々でしたし…うん、良いでしょう。」

なんとか許されたようだ。そうして手渡された金属製のカードには、大きく『ルシル』と刻まれていた。

「では、そちらのカードをこちらの機械にセットして水晶部に血液を一滴お願いします」

そう言って門番は小さな針を手渡してきた。

「…は、はい…」

言われた通りにカードをセットし、自分の指に軽く針を当て…当て……

「…すいません、片腕じゃ難しいです。」

「あ、た、大変申し訳ございません!!お手伝い致します。」

よかったわざとじゃなさそうで。

「じゃあ、お願いします」

「はい。」

門番さんが持った針が俺の手に…

「怖いぃ…」

「大丈夫ですよ!」

腕を噛みちぎられた経験があっても怖いものは怖いのだ。

「…いっ…」

「はい、もう終わりました。頑張りましたね。」

目を閉じてる間にチクっとした痛みがあったが、終わったようだ。門番さんも頭を撫でながら褒めてくれる…うぅん、なんと言うか、まあ、体は子供だから…申し訳ない…

「これがルシルくんの身分証です。持ち主の血とリンクしているので本人以外には使えませんが、無くしたり盗られないようにお気をつけください。また、再発行には5000イルかかってしまいます。」

「はい。ありがとうございました!」

「いえ。では、フォルへイムへようこそ!ルシルくん。」

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