衝撃
準備を終えて、城壁北…前線となるであろう場所で待機することとなった。辺りには張り詰めた空気が漂っており、これから起こる事の重大さと烈しさを嫌でも予感させる。
城壁の周りは既元々あった巨大な水堀の他に、堀、鉄柵、有刺鉄線のようなものが多く設置されていた。
「ふぅ…」
どれ程のものなのだろうか、〈魔王〉というのは。これだけの準備をしたのだから、どうにか勝てるだろうと思いたいが…
「…ッ!?」
圧。凄まじい圧。まだ視界には入らないが…いる。確実にいる。あの丘の向こうだろうか。さらにもっと先だろうか。少なくともわかることが一つだけある。あれはヤバい。とんでもなくヤバい。これだけの準備をしても、ようやくなんとか戦いになるかどうか、と思わされる。
角笛の音が響き渡る。
「敵襲!!!敵襲!!!東西南部それぞれ副隊約1万!北部本隊約4万!!!本隊に魔王と思しき影あり!!会敵までおよそ20分!!!!各々十分に警戒されたし!!!」
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不届共の拠点、忌まわしき岩壁。それを守らんとする憎き者共。油断はできぬ。見慣れぬ帳が降りている。嫌な空気だ。強き者の気配感じる。それからひとつ、異様な気配も。決して油断はできないが為に…最初に士気を砕く。
『我らが威信を示す刻。【瞬天兎脚 】…【隕兎驚墜】ッ!!!』
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伝令が聞こえたのも束の間、はるか遠くから轟音が聞こえた。空気を切り裂くような音、遅れて少しの衝撃。敵陣のはるか彼方から、星のような何かがこちらに飛んで…いや、"跳んで"くる。それがなにかは分からないが…凄まじく嫌な予感がした。それは、多くの冒険者や騎士も同じだったらしく、皆方々に逃げる。
刹那、凄まじい衝撃波と共に肉片が撒き散らされた。
「は…???」
40人以上は形も残らず即死した。巻き込まれながらもなんとか生き残った者は既に無傷だが、皆一様に恐怖と痛みに顔を歪めている。空から降ってきたのは、あの圧力の正体。射殺すような目付きに、巨木のような脚、山脈のような筋肉。巨大な体躯と逞しい腕は、見るものを畏怖させる。手に持つ黄金の杖は荘厳で、畏敬の念を抱くものだ。勝ち目は無い、本能的にそう思ってしまう、ありえない怪物。そう、間違いようもない。これが魔王。【白原の恐皇「恐怖の皇兎」】。
「総大将がいきなりかよッ…?!」
決して傲慢などではない、最大戦力としての初撃。確実にこちらへ恐怖を与えるための一撃だった。
「びっ……Bランク以下総員退避ッ!!!!死にたくなければそいつの相手はするな!!!!!!」
大地の鳴らした轟音と、四十幾人の砕ける音は、なんとも不吉な開戦のゴングだった。




