【接業】の所業
三話です
とりあえず、片っ端から使ってみよう。
そのへんの木になっている実をもいで、
「まずは…鑑定!!」
と叫んでみる。
「………」
…いたたまれなくなって、誰かがいるはずもないのにきょろきょろと周りを見渡す。
「何も起こらない…もしかして物には使えないのか?生物限定…もしくは自分限定みたいな。そうだな、例えば…」
近くの茂みを見てみれば、40cmほどの大きな蟻のようなフォルムの虫が何かの果実を運んでいる。大きさもおかしいが、なによりもそいつらは、体の2、3倍もある、肉厚なのこぎりのような大顎を持っていた。
「うわっ…さ、鑑定!」
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種族:巨蟻
固有名:なし
性別:♂
状態:通常
年齢:生後583日
技能:
引率者
跳躍
種族技能:
巨蟻の砕牙
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「なんだこの恐ろしい虫は…」
やはり鑑定は生物にしか使えないようだ。しかし、《鑑定Ⅰ》のこの『Ⅰ』も何か関係あるのだろう。技能のレベルだろうか。
それはそうと、こいつは巨蟻というらしい。技能を見るに、普段は群れで行動していたりするのだろう。
「…まあ、どうせ虫には変わりないし…無視すればどうということはな痛ぁ!?」
そいつは、その体からは想像もできない素早い跳躍をもって腕に咬みついてきた
「あだだだだ!?いっだあ゛っ!?折れる!!!!切れる!!!!」
相当食いこんで…いや食い込んでいるとか言うレベルじゃない。切れてる。このままだと腕がもってかれる…!?
「ひぃっ!?やめろお前!!!っ゛だぁ!?!!」
メキメキッと音が聞こえる。嘘だろ?!いや、そういえばどこかで蟻の顎の力は半端ないと聞いたことがある気がする。
「クソッ…離しやがれっ!!!!!」
腕を振り回し振りほどこうとするが、全然離れない。むしろ自分の体を削ってる気がする。しかし、やらなきゃやられる。肉を切られてる間に、骨どころか命を絶たなければ。岩に、木に、叩きつけまくる。
「このっ…!!!!」
小さな体ではあまり力が出ない。だが、それでも渾身の力で岩に叩きつける。
『ギッ...』
何度も叩きつけているうち、小さな断末魔のような音と共に、ようやく虫は絶命したようだ。
「はぁ…はぁ…っつつ…いった…マジで痛…って、うわっ…」
見れば、腕は半ば千切れかかっていた。なかなかな光景だ…
「って、これやばくね…?」
出血が止まらない。体から血液が無くなっていく感覚は、この小さな体にすぐさま死を予感させる。
「やばいやばいやばい、どうにかできないか!?どうにか…」
止血しようにも、そんな道具もなければ大した技術もない。となれば、あと頼れるものは一つしかないだろ…
「適応!!」
…しかし、なにもおこらなかった!!
「くっそ、だめか…じゃあ次!!ええと…異形技【接業】!!!!」
そう叫んだ時、アリの頭がメキョッという不快な音と共に胴体から外れ、千切れかかった腕にとって代わるようにくっついた。
「お…?助かった…のか?」
ひとまず、血は止まったようだ…が。
「…どういうこと?」