結成、討伐軍
いつも通りご飯を食べて、ペゾカトル…は中々人前では持てないから残光を持って、ギルドに出かけた。
「…?」
門扉を開けると、ギルド内には、いつも以上に人がいた。今まで見た事もないような、とても強そうな人もいて…異様に、空気が張りつめていた。
何事かと掲示板を見ると、張り出されている依頼は一つだけだった。
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緊急招集
《恐怖軍》の殲滅及び、魔王種【白原の恐皇「恐怖の皇兎」】の討伐作戦
報酬 成否に関わらず、出撃報酬500000イル
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「…!」
魔王種。それはたった1匹で国を落とすほどの強大な力を持つ"個体"の総称。破壊の象徴たるそれが、王都の近くに出現したことを知らせるたった1枚の紙。きっと、それ1枚で何万人をパニックに陥らせることが出来るであろう代物だ。
その掲示板の前に、一つの影が歩み出る。
「冒険者諸君。お集まり頂き感謝する。私は王都フォルヘイム冒険者ギルド本部総監、フォルテリア・グラトスである。」
そう名乗ったのは、全身鱗と2対の翼、竜のような顔を持つ、大柄の男だった。
ギルド内が少しざわつく。
「ぐ、グラトスギルド総監って…」
「龍破戦争の英雄…一人で1万の龍を落としたとかいう…」
聞こえてきた内容はにわかには信じ難いほどのものではあるが…目の前にある圧は、それを嘘とは言わせない力を持っているように思えた。
「静かに。」
一言で、場の喧騒を押しつぶす。
「ありがとう。現在、王都の歴史上最大の危機が訪れている事は、既に全員理解しているだろう。そこで、我々ギルドは王都守護騎士軍と協力し、この危機を乗り越えんとしている。言いたいことはわかっているだろう…どうか、勇猛なる君たちの力を貸してくれ。生まれ故郷を守るために。我等の暮らしを侵させぬために。」
巨体が、腰を折った。その願いは、命を捨てろと言うのと何ら変わりはしない願いだということを承知していない者は、その場にはいなかった。
彼らにも、大切な人や家族はいる、そんな人を悲しませることになることも知っている。
「おう、頭を上げとくれやグラトスさんよ!!」
だが、そんな人達を失う事は、きっと悲しませることよりもっと辛い事だということも知っていた。
「俺らの暮らしは、俺らで守んなきゃな!!!」
「1体どうして人に頼まれて家族を守らなきゃいけないのさ!!言われなくてもだよ!!」
「忌々しい奴らの腹に香草詰めて食ってやるぜ!!」
冒険者達は、勇敢だった。勇猛なる戦士たちは、武器を上げ、叫ぶ。腰を折っていた巨体は、いつの間にか前を向いていた。
「ありがとう、諸君…。我等の領域を!!!兎共に踏み荒らさせてなるものか!!!否!!!!畜生共に愛する人々が食い荒らされる様を黙って見過ごす訳には行かぬ!!!!冒険者達よ!今こそ立ち上がるのだ!!!!!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉォォォォォ!!!!」」」」
ギルドが揺れ、倒壊するんじゃないかと思うほどの声が、熱気が、空間を包んでいる。
「うぉーー!!」
熱気に呼応して、体は自然に腕を上げ彼らと共に叫んだ。
「よしッ!!!役職ごとに作戦の詳細を伝える!!!所定の場所につき、聞くように!!!!!」
「了解ッ!!!!!」
そう言って、彼らはギルド職員の案内に従い各々の出来ることをやりにいく。自分は…どちらかと言うと前衛だろう。あっちだな。




