崩れゆく
ギルドは、前よりさらに騒がしかった。
「あの、どうしたんですか?皆さんすごい気が立っていると言うか…」
「ん?あぁ、ルシルくんじゃないですか。いえね、どうにも北部での《兎軍》や首狩り兎の目撃件数が急増してるんです。それひとつやふたつじゃなく、100、下手するともっと…。おかげで、あの辺に誰も寄りつけません。それこそ、BランクとかAランクとかの冒険者さん達がパーティを組んでいかないと。」
なるほどそれは…昨日見た角兎の異様な少なさといい、今日のことといい…不穏だ。
「…さて!すいません、話が長くなりましたね。本日はどう言ったご要件ですか?」
「あ、はい。達成の報告です!えっと…これです!」
3組の銅角牛の角と毛皮をカウンターに置く。
「はい、銅角牛の討伐のご報告ですね。…はい、確かに!凄いですね、まだお若いのにたった一日で銅角牛を3頭も倒してしまわれるなんて。それに相変わらず丁寧で綺麗な解体、毛皮まで持ってきていただけるとは!こちらとしてもとてもありがたいです。」
「えへへ…死闘でした。」
ふふ、実は3頭じゃなく5頭だったし、そん中には紅角牛もいたんだぞ…と心の中で誇っておく。
「ふふ…ではこちらが、報酬、買取金合わせましての5900イルになります!」
懐がほくほく。
「ありがとうございます!それで、つぎはこれ受けたいんですけど…」
「これは…雑草。これは…雑草。あ、中毒症状緩和する草。これは…食べられるやつ。これは…雑草。」
野原で草むしりタイム。薬草採取の依頼を受注したためだ。これが案外楽しい、
「んー…?お、虫下しの草!珍しいって言ってたし高く売れそう。これは…」
元の世界で言う人参の葉っぱの部分のような植物。
「どっちだ…?」
リューに聞いた。これは、マンディーツか効果の強い回復薬の作れる珍しい薬草かの2択からしい。どちらにしろ高く売れるらしいが、マンディーツであった場合、こいつの攻撃もさることながら、周りの魔物が寄ってくる危険性がある。それも錯乱しながら。
…やるか!
「えいっ!」
即座に耳を塞ぐ…が、叫び声はなし。マンディーツの根っこの部分も着いていない。
「あたりだ、やったぜ。」
その後も、色んなところを駆け巡り草集めをしていると、いつの間にか日が落ちてきていた。
「そろそろ帰らなきゃ…ん?」
洞窟。それも、それなりに深そうだ。しかし、問題はそこでは無い。光る草や苔、そしてたくさんの薬草が生えている。
「なんだここ…?…ちょっとだけ。」
この光ってる草は確か魔術師御用達の疲労回復薬。さっきまでなかなか見つからなかった薬草たちがたくさんある。
「おっ…あ、ここにも…」
パキッ、ミシッ。
「…?」
うさ耳にハッキリと、嫌な音が入ってきた。次に、パラパラと天井から降る小石と砂埃。
「っ不味そう!!」
急いで出口に向かおうと走るが、次の瞬間には既に、大きな音と共に入口は崩落していた。
「……まじ。」
出れなくなっちゃった。
洞窟の入口がです。