初報酬×2
「こんばんは!」
「おや、ルシルさん。それは…あぁ!角兎を倒されたんですね。」
2匹の角兎を抱えて、カウンターの前に立つ。受付のお兄さんがこちらに気付いて、にこやかに対応してくれた。
「中々早いですねぇ、さすがはお二人が推薦なさるだけあります!では、ご確認いたしますね。」
兎と、それから5セットの角を受け取り、見ているが…不思議そうな顔をしている。
「ぽっかり綺麗な穴がふたつ…すごく綺麗な解体ですねぇ、すごいです!」
「そうでしょう!」
ふふん、俺だけ使える解体ライフハックだ。
「では角はこちらでお預かりさせていただきます。身体の方はどうしますか?こちらで買取もできますが…」
「一つ買取でお願いします!」
「かしこまりました。では、クエスト達成報酬、買取金合わせまして合計2280イルになります。」
高っ!!そんなにもらえるの…?!
「そんなに…!」
「ふふ…討伐証明にご提出いただく角は、回復薬の材料としての需要が高いんです。それも、こんなに綺麗に解体してくれてますから、不純物を取り除かなくて良いんだ!って錬金術師たちが大喜びですよ。気持ち含めて、ちょっとだけ上乗せさせて頂きました。」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ。これからもよろしくお願いしますね。…その、単純な私の興味なんですが、どうやってこんなに綺麗に解体したんですか?よろしければ教えていただきたいのですが…」
「…秘密です」
「まあ、そうですよね。」
企業秘密だ。もし教えても俺しかできないしね。
「失礼しました…改めまして、こちらが報酬です。」
「ありがとうございます!」
「はい、ありがとうございました。今後とも、よろしくお願いしますね。」
「はい!」
数枚の硬貨を懐に入れ、ギルドを去った。
兎を抱えて、宿に帰る。
「おやぁ、ルシルくん、おかえりんしゃい。」
「はいっ!戻りました!」
結局、エピとリューが取ってくれていた宿を引き続き利用することにしていた。一泊400イルと宿としては破格なのに、とても快適で、ご飯がすごく美味しい。それに、この髪がもふもふなお姉さん…もとい、ここの女将さんもとても良くしてくれている。更に、ギルドから少し離れてるからなのかなんなのか、こんなにいい場所なのに人も多くないため、静かだ。とても離れられなかった。
「ところでどうしたんだい?その立派なウサギさんは。」
「僕の初めての獲物です!」
「おぉ、そりゃすごい!冒険者の第一歩さね、おめでとう。じゃあ、お祝いにおばさんがそいつでなんか作ってやろうか。」
「やったあ!」
じゅるり。
「座って待ってて。腕によりをかけて作るから、楽しみにしておきな。」
「はいっ!!」
手を洗ってしばらく待っていると、料理を載せた盆を両手に持った女将さんが出てきた。
「ほい、おまちどう。」
「わぁ…!!」
角兎の足のグリル、角兎のシチュー、サンドイッチ!
「美味しそう…た、食べて良いですかっ?」
「うん、召し上がれ。」
「いただきます!!」
グリルは香ばしく、皮目はパリッと仕上がっている。噛む度上質な脂が吹き出し、食べる手が止まらない。
シチューは、さっきのワイルドな味とは打って変わって繊細で緻密だ。野菜の味と肉の旨みがしっかり溶け出したソースは、深みのある味で、まとまっている。それが、煮込まれて柔らかくなった兎肉にしっかりと染み込んでおり大変美味。それを食べた後にサンドイッチ。葉野菜が多めだが、ここまでの濃い味を精算するのにちょうど良い…。パンにシチューを染み込ませたり、間にグリルを挟んだり、アレンジもできて楽しい。
「お、おいひぃ…」
至福…。
「ふ、そんなに美味し?」
横で頬杖をついて、こっちを見て微笑みながら尋ねてくる。
「っはいっ!おいひいです!」
「良かった。シチュー、あと3杯くらいおかわりあるから。足りなかったら言いな?」
「いただきまふ!」
「おぉ、早いね。」
その後も食べ続けて、結局用意してくれていたおかわり分のシチューも全部食べた。
「ごちそうさまでした!」
「ん、良い食べっぷりだったね。特に君くらいの子は食れば食べるだけ育つから…いっぱい食べれて偉いぞ。」
「わっ…へへ」
手が大きい。頭ひとつすっぽり覆われて撫でられる。もう普通に心地いいと思ってしまうようになってきた。
「うしゃ、じゃあもう歯磨いて身体洗って寝な。」
「はーい。」
「1人でできるか?…おばさんが全部やってやろうか。」
「?!だ、大丈夫ですっ!」
「ふふ、そっか。」
女将さんがイタズラっぽく笑う。
歯磨きやらを自分で済ませてベッドに入ったが、自分の心臓の音で2時間くらい眠れなかった。
女将さんは顔にそばかすがあり、ギザ歯。身長は189cmで豊満、黒の跳ねボサ髪ロングです。