初めてのクエスト
外見8歳、右前腕の無い、サラサラ白赤ボブのショタです。
「ふむ…」
ギルドでの登録も終わり、早速依頼が貼り出してある掲示板の前に立っていた。
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『角兎討伐 F~』
『平原南の調査 E~』
『小醜鬼討伐 E~』
『薬草採取 G~』
『雷霆猛虎の討伐 C~』
『黄昏森の調査 D~』
『サターニエへの書簡の配達 D~』
……
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今の俺が受けれるのは『薬草採取』と、『角兎討伐』だけか。うーん…じゃあこっちかな。
「これ、受けます!」
剥がした張り紙を受付に渡す
「はい、角兎の討伐ですね。受注いたしました!」
ぺたん、と受注済みの判を押したお兄さんが、こちらをふっと見る。
「初めての冒険ですね、ルシルさん。外は危険がいっぱいです、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
フリフリと手を振りながら、にこやかな笑顔で見送ってくれた。
「は、はいっ!ありがとうございます!」
なんだあのイケメン…惚れてまうやろ…
依頼を受けて、再びあの巨大な門をくぐり、平原に出る。当たり前だが、城壁の中とは打って変わって静かだ。鳥の囀り、虫の鳴き声。風で草がそよぐ音ががよく聞こえる。
「気持ちいいな…」
王都に来るまでは感じる余裕もなかった感覚に心を軽く踊らせて、角兎がいるという平原の西の方へと向かう。
途中で赤い角の牛の群れやらデカい鷹やらを見ながら、しばらく歩いていると、見つけた。緑の上に佇む白い塊、角兎だ。
「見つけた…鑑定!」
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種族:角兎
固有名:
性別:♂
状態:健康
年齢:5年8ヶ月
筋力:G
体力:G
持久:F
敏捷:E
技量:G
魔力:F
精神:G
耐性:
毒F
暑G
寒E
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ふむふむ…いや、思ったより強い。互角と言ったところ…いや、あいつの方がちょっとだけ強いか…?
「だけど、やるっきゃない!」
まだこちらに気付いていないうちに飛びかかる
『キュッ!!』
…が、さすが野生動物。そう簡単には行かない。
「こいよ、お昼ごはんにしてやる」
しばらく睨み合いの時間。先に動いたのは角兎、ぐっと脚に力を入れたかと思えば、いきなりドロップキックをかましてきた。
「っとッ!?」
速ッ!?すんでで避けれたが、流石の脚力…ブォンと風を切る音が聞こえた。その勢いでその質量当たったら死んじゃうって普通に。
『キッ』
隙は与えんとばかりに切り返して今度は突進をかましてくる。が…
「分かりやすい直進攻撃ほど狩りやすいものはないっ!剣技《強撃》!」
『ギュッ?!』
突進してきた兎に力強く剣を突き出すと、兎は勢いのままに剣に突き刺さった。
角兎を倒した!
ぱぱらぱっぱっぱっぱー。
…レベルが上がるファンファーレなんて鳴るわけもなく。手には、ウサギに剣が食い込んでいく感覚と、その感覚をもたらした串刺しのウサギがあった。
「うーん…まあ当たり前だけど、あまり気持ちのいいものではないな。」
なむ…しかし、まあ必要なことなのだ。許せよ。
角兎の討伐証明はその小さな角なので、丁寧に解体…の前に。
「異形技【接業】」
試さずにはいられない。
ずず、と角兎の角が抜け、頭に取り込まれる。そう来るか…
えぇっと、効果は…
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〈獲得部位技能〉
聖魔法Ⅰ
『聖魔法ランクⅠ ミニキュア《肉体を少し回復する》』
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〈獲得部位〉
角兎の小角 魔力+2
角兎の長耳 聴力に補正
角兎の尾
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ほう、聖魔法!
回復はいつだって腐らない。ありがたいありがたい。
そして、ついでにと付けて見たふたつ…
頭にうさ耳、お尻にとっても可愛い小さなふりふりぽんぽん。
「俺がケモノショタだ!」
本物のケモナーに怒られそうだからやめておこうか。
「しかし、技能とかステータスとかでなくてもバフはあるんだな。」
尻尾には何もなかったが、耳には聴力強化が付いていた。確かにさっきまでに比べると、いろいろな音が聞こえてくる。
「うん、うん…中々よさそうだぞ」
足音もよく聞こえるおかげで何かしらの生き物がどの方角にいるのかが大まかにわかる。
「角兎の足音は…こっちだ!!」
間違い無い!
『ンモォ。』
「…ん。」
牛。
その後、夕方まで狩りを続けて、その後の成果は兎が5匹。初日にしては悪く無いんじゃないか?
また狩りをしていく中で、いくつか分かったことがある。
まず、角兎の角をいくら自分に接いだところで、一つ分の効果しかなかった。顔と腕とげとげ人間になっても何も意味はなかったのだ。
次に、同じ魔物でも結構個体差があるということ。いや、当たり前なんだが…その個体差によって、部位の効果に多少ブレがあるのだ。と言うのも、今回狩った中で1匹だけ、角の能力が魔力+3の聖魔法Ⅱになってるやつがいた。それにより、ミニキュアだけでなく、『レスト』という解毒魔法も使えるようになった。
少しめんどくさいが…これからはいっぱい倒したら余裕があればできるだけ能力は確認していこう。
そして最後に…接業で身体につけた素材を剥業で外すと素材が綺麗に取れるので解体に結構便利ということ。ほんと、すごい綺麗にポロポロ取れるので楽しい。
そんな感じで解体を済ませて…できる限りの素材と、頭のやつ除いて5セットの角を持って街に戻ることにした。
角付きうさ耳しっぽショタです。