Let’s 冒険者
俺は今、冒険者ギルドの前にいた。そう、今日から俺は冒険者になるのだ…!
「た、たのもー」
小さな声でそう言いながらギルドの扉をくぐる。中は相変わらずの喧騒だ。
「えっと、受付は…」
あった、あそこだ。
「すいませ「おいおいどうした坊主!パパでも探してんのか?」…ん…」
大柄の筋肉質な男がデカい声で話しかけてきた。
「おぉい!この坊主の保護者は!」
そのデカい声のままギルド内に呼びかけようとする
「ち、違います!!冒険者になりにきて…!」
「…冒険者に?」
おかしな者を見る時のような、怪訝な顔で見られる。
「おいおい、冗談よしてくれよ…いいか?おうち帰ってパパママの手伝いでもしてろ。」
む…なんだとこのやろう。しかし、すごく真剣なまっすぐな目で見てくる…
「冒険者に、なりにきたんです。」
「…はあ、何か事情があんのか。まあ止めねえけどよ、死ぬぜ。」
「…ご忠告ありがとうございます」
けっ!!
…まあ、悔しいが仕方ないだろう。やはり、見た目が見た目だからな…あの大男も親切心で言ってくれていたのだろう。
気持ちを落ち着けて、改めてギルド受付に向かった。
「すいませーん」
「はい、ようこそ冒険者ギルドへ!」
「冒険者に!なりたいです!」
「かしこまりました、ではまずはこちらの書類に必要事項の筆記をお願いします。」
「はい!」
「…はい、ありがとうございます。お名前は、ルシルさん…あぁ!エピさんとリューさんからのご紹介の方ですね、実力等に関しては申し分ないとお聞きしました。お若いのに凄いですね!」
ほう?
「本来ならば冒険者になるには試験を受けていただく必要があるのですが、軽い検査だけ受けていただければ結構です。」
「ほんとですか!」
なんと、そんなことまでしてくれていたのか…。本当に2人にはおんぶに抱っこだ。
「他の冒険者の方々だとそうもいかないのですが、あのお二人はギルドでの試験官もしていただくこともあるほど、ギルドからの信頼が厚い実力者なので。」
あの2人、結構すごい人だな…
「お聞きした話ですと、一部技能しか使わずの試験ということでしたので、発行するギルドランクはFランクとなります。」
Fランク、というのは八段階で下から二番目。妥当…というか、むしろ1番下ではないことに驚きだ。
「では、検査と登録を行いますのでこちらへどうぞ。」
受付のお兄さんについていき、着いた部屋でちょっと血を取られたり髪を抜かれたりした後、別室で待つように言われた。そして、しばらく待っていると、何かを持ったお兄さんが入ってきた。
「お待たせしました、こちらがルシルさんのギルドカードになります。」
そう言って手渡されたのは、青錆色の、ちょうどスマホくらいの大きさのカードだった。名前と、ランク。それと、何をどうやったのかわからないが顔写真のようなもの。これが俺のギルドカード…!
「こちらのカードですね、ルシルさんの血液に魔術的にリンクしています。成長、老化、負傷した際にこちらに血液を少量垂らしていただくことで、こちらの姿絵をそのときの姿に更新できます。」
「へぇ…!」
すごくハイテク。なるほど、写真と違うぞ!となってもそれで本人から別人か分かるわけだ。偽造対策としても本人確認としてもなかなか優秀じゃないの。
「ギルドカードをご紛失なされた場合、再発行には2000イル頂きますので、ご注意ください。ではギルドカードの発行も完了致しましたので、本日から冒険者として、よろしくお願いしますね、ルシルさん。」
「は、はい!お願いします!」
こうして俺は、晴れて冒険者となった。