清流のサラダ ーセリー
はいはい、これは前期の試験問題に出たやつですね。
セリですよ、皆さん。川辺にセリがいっぱい生えてます。
セリ鍋が有名だけど、これはシャキシャキした歯ざわりだから、手づかみサラダで食べてもいけるんじゃね?
試験では、食べられるセリと、それによく似た毒ゼリ、この判別方法が書き込み式の問題になってましたねぇ。
……さーて、どっちがどっちだったっけか??
葉柄の長短とか、丈の高さで見分けることは、なんとなーく覚えてる。でもどっちが毒持ちの特徴だったかは覚えてない。
学生だったのは、もう七年近く前のことですからねぇ。無理もない。
ふふふ、でもセリを見分ける秘密兵器があるんですよ。
それはズバリ、根っこ!
食べられる方のセリには、セリ鍋でよく見かけるあの白いヒゲ状の根が付いていて、毒ゼリの方の根はタケノコみたいな太い地下茎になっているハズ。
それでは早速、抜いてみましょうか。
「君は、どっちかなー?」
由香里が川辺からセリを一本引き抜いてみると、その根っこには白いヒゲが生えていた。
「やったー、当たりっ! 食べられるやつじゃん♪」
実食ー
「パクッ、ショリショリショリ……ふむ、爽やか。この水っぽくて癖のある香り。やっぱセリだな」
うん、セリとしか言いようがない。かなうなら鍋に入れて肉や豆腐と一緒に、タレにつけて食べたい。醬油風味の出汁のきいたタレでもいいし、ゴマ風味のコクのある濃いタレでもいい。
……そんなこと考えたら、余計にお腹がすいてくる。
食べているのにお腹がすくという不思議現象。
やっぱり植物だけじゃ飽きるな。
こうしてみると、動物性のたんぱく質や脂質って偉大だ。ダイエットの大敵だと思っていたけれど、こんな風にエセ狩猟採集生活に突入してみると、身体に必要な栄養素だということがよくわかる。
そして味!
せめて塩が欲しい!
一握りの塩が得られるなら、自宅にあるバカ高いブランドもののバッグや服といつでも交換する。
あー、しかし疲れたな。ちょっと休もう。
頭痛薬の鎮痛作用が体中にまわってきている感じがする。
林へ行く道のりはまだ半ばといったところだけど、ここまで無理を押して歩いてきたことでその疲れからくる身体の怠さが増している。
「ん……草が……チクチク……………………す……る」
ス―ス―
「ちょっとクリス、こんな所で寝ころんだらまた風邪を引いちゃいますよー」
グーグー
耳元でポランの声がしていることはわかっていたのだが、どう頑張ってもまぶたが上がらない。
由香里はあっという間に眠りに落ちていった。