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思い出した

釣り糸がカサゴだけではなく、自らの記憶も一緒に釣りあげてしまった。



クリス・バーナム 20歳


学校を出てすぐ、大都会ポートフォリオの大手商会に職を得た。

クリスが住んでいた小さな町からは、こんな大店(おおだな)に就職できた者はいない。クリスの持っていたポケットスキルが思いのほか大きく成長したので、旦那様がその能力をかってくれたようだ。


職場でケビンと知り合った。けれど後からわかったのだが、彼はその店の跡取り息子だった。

3年程は、仕事も恋愛も順調だった。

けれどクリスが18歳になった時、実家の両親が商売に出かけた先で事故に遭い、亡くなってしまう。


そこからクリスの人生が複雑になってしまった。

実家は魔道具店を経営していたため、職人を大勢抱えていた。

けれど経営者夫妻がいなくなり、誰も店を継ぐ者がいなかった。

職人たちは経営には疎いので、皆でクリスに帰ってきてほしいと言ってきた。

この職人の中には幼馴染のアイミとベックもいる。


仕事を辞めたクリスは実家に帰り、店を立ち直らせようとする。

けれど両親の信用で商売するという昔風の経営を長年続けていたので、取引先が次々と離れていき、店が立ち行かなくなってしまう。


赤字になるギリギリのところで、いったん店を閉めるしかなかった。


そんな折、隣の大陸でライシャという土地が、力を持ち始めた。

ライシャがある隣の大陸は、魔法陣開発において、クリスのいる大陸より劣っている。

そこに在庫の魔道具を持っていき、売りさばいた資金で貴重な鉱物資源を仕入れてくる。これが起死回生の商機となるのではないか。クリスはそう考えた。


これにケビンは大反対だった。

「そんな一か八かの商売は、後が続かない」そう言ってクリスの渡航をやめさせようとしたのだが、商売のことだけではなく、こういう遭難などの危険も考えてのことだったのだろう。


けれど近視眼的になっていたクリスは、これからが大店(おおだな)や両親から離れて自分の力で立つ、本当の意味での独立だと言って、ライシャへの旅行を強行したのだ。



はい皆様、お疲れさまでした。


以上がクリスの半生となります。

半生っつうより、反省の塊だなこりゃ。


前世の29歳の記憶がよみがえった今ならよくわかる。ケビンの方が大局が見えてたわ。


確かに自分が望んだ通り、ある程度の成功を収めることができた。

このポケットの中では、<魔道具>より<仕事用商品>の枠の方が大きい。つまり、自分の思っていたようにライシャで商売ができたということだ。

そういう意味では、苦労して努力してきたことは間違ってはいなかった。


でも、私は今、ここにいるんだよねぇ。


自分がすべてを背負って、遮二無二解決できると思えるのは、若さならでは。

正解は一つとは限らない。大勢の人に頼って、地道にコツコツと努力していく方が早いこともある。


すぐに成る成功は、失うのも早いという諺もある。


どうも考えが浅かったね、クリス。

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― 新着の感想 ―
[一言] 両親の信用で商売するという昔風の経営を子どもが引き継いで……(>_<; 難しいですよね。クリス、大変だったですね。
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