交わる糸
さっきから自分の手が迷いなく動いていく。
クリスは、毛をむしり取って丸裸になった鴨の足にツルを結びつけ、川沿いの張り出した木の枝に逆さまに吊るすと、戸惑うことなく短剣を持ち、今度は解体を始めた。
こんな作業は今まで何度もやってきているので、手早く作業を進めることができる。
クリス、本当に私はクリスとして、十何年もこの世界で生きてきたのね。
由香里は自然に動く身体を不思議に思いながらも、やっと本来の自分に戻れたような、奇妙な感覚を覚えていた。
先ほど編んでいた籠ではないけれど、前世の糸と今世の糸が絡まり合い交じり合って、自分が元に戻っていくような気がする。
ただクリスの方の糸にすべての記憶が寄り添っていかない。記憶があちこち抜け落ちて不完全な斑模様になっているようだ。
そのことがもどかしくてたまらないが、こうやって少しずつ記憶が戻ってくるのを辛抱強く待つしかないのだろう。
解体後の後始末を終えた地面を確認した由香里は、大量の食材を入れた籠を持ち上げて背負った。
帰りは焚き木を拾いながら、林を抜けて帰ろう。ちょっと西の草原に寄って、おやつの野イチゴを摘まんでくるのもいいな。
昼ごはんがシャジッポだけだったので、少々お腹がすいている。
けれど、今夜はごちそうだ。
まさか鴨の丸焼きが食べられるとは思わなかった。
それに、ポケットスキルの接続制限が変わってきている感じがする。クリスの記憶を一部取り戻したことによるものなのかはわからないが、スキルが成長していくというよりも、元に戻ろうとしているような動きを感じる。
テントに帰ったら、することがいっぱいね。
由香里は短剣で藪を払いながら、林の中に入っていった。




