クラスの清楚系美少女がエロゲをヤりたそうな目でこちらを見ている。ヤらせてあげますか? →はい/いいえ
『いいよ……いっぱい気持ちよく……なろ?』
画面の中のヒロインに誘われるまま、俺はテキストをクリックし続けた。
『ん……はぁ……っ!』
主人公の手がヒロインの胸に触れ、ヘッドホン越しにヒロインの喘ぎ声が聞こえる。
俺がテキストを進めるたびにヒロインのグラフィックが変化していく。
制服姿からピンク色の下着姿に―――そして、何も身に着けていない姿に。
薄桃色の乳首とモザイク修正がされたヒロインの秘部を目にした俺は、マウスを連打する手を止め一呼吸ついた。
ここまで長かった。
世界消滅の危機を救うためにヒロインたちと協力し、裏社会で暗躍する悪の魔術師たちと戦うというこの18禁恋愛ADVは、各ヒロインを攻略した後でようやくルートが開ける裏ヒロインが存在する。
しかもその裏ヒロインは普通通りプレイしてもバッドエンドにしかならず、特定の画面でとあるコマンドを入力することでグッドエンドに分岐することができるのだ。(ちなみにそのコマンドはパッケージの裏にそれとなく書いてある。)
そして今、俺は裏ヒロインのグッドエンドに到達した。ようやくエロシーンに突入というわけだ。
ペットボトルに残っていた水を飲み干し、ティッシュを数枚用意する。
準備は整った。
パンツを下ろし下半身丸出しの状態で再び画面に向かう。
この瞬間に家族が部屋に入ってくれば俺、社会的に死んじゃうなあ……なんてことは努めて考えないようにしておく。
俺は震える手でマウスを握り、テキストを進めた。
その瞬間、ヒロインの嬌声が俺の鼓膜に飛び込んできた。
『あっ、んっ……あっ、ああっ……くっ、んっ……あ、あぁん……ひぁあっっ!』
ぶひゃあああああたまんねええええええっっっ‼
俺の理性は爆発寸前だった。
待て―――まだ待つんだ―――落ち着け―――フィニッシュはまだなんだ―――ッ!
が、その瞬間、俺の中に残った唯一冷静な部分が囁いた。
このゲーム、主人公たちは世界を救うために戦ってるんだよな?
冷静な囁きに俺は答える。
そうさ、ここまでシリアスな展開の連続だった! 悪の魔術師たちが錬成した最終破滅魔法は今この瞬間も発動の危険がある。だからこそ主人公たちが戦わなきゃならないんだ!
冷静な部分はなおも囁く。
そんな世界が終わるか終わらないかの瞬間に、こいつらセッ〇スしてていいのか?
右手が止まった。
確かに―――そうだよな。
最終破滅魔法はいつ発動してもおかしくない。
最悪、主人公が射〇した瞬間に発動するなんてこともあり得るんだよな。
こいつらは気持ちイイ瞬間に死ねてハッピーかもしれないけど、この世界の人たちはたまったもんじゃないよな。
そんなことを考えていると、さっきまで元気いっぱいだった俺の愚かな息子がやる気を失ってしまった。
俺は虚無的な感情を胸に抱いたまま、ただマウスを連打し続ける機械となって、楽しみにしていたはずのエロシーンを茫然と眺めつづけた。
※※※
俺、伏見悠。ちょっぴりアダルトなゲームに興味津々な高校二年生。
昨晩はエロゲのCG集を眺めながら、世界的な人口増と日本社会における少子化の関係性について考察を深めていたゾ☆
毎日のように深夜までエロゲをやっているせいで慢性的な寝不足の俺は、今日も一日朦朧としながら授業を受け続けなければならなかった。
そして放課後。
学業という苦役から逃れた俺は教室を出て靴箱から靴を取り出した瞬間、あることに気が付いた。
「やべ、筆箱忘れて来た」
机の中に入れてから鞄に戻した記憶がない。
筆箱の中には『WHITE SIGNLE2』の初回限定版を買ったときについてきたシャープペンが入っている。いつもお守り代わりに持っているもので、ペンの表面にはヒロインたちの限定イラストがデザインされていた。
万が一他人に見られたら俺の学生生活は色々な意味で終わってしまう。急いで回収しなければ。
靴箱に靴を戻し、上履きに履き替え、俺は再度教室への道を辿った。
運動場の方からは野球部が練習をしている声が聞こえる。丸一日授業を受けた後で運動をしなきゃならないなんて、いったい彼らが前世でどんな悪行をしたというのだろう。
教室のドアを開けると、その向こうには誰も居なかった。
急いで机に駆け寄り中を確認する。……よし、筆箱は無事だ。誰かに触られた形跡もない。どうやら俺の穏やかな学生生活は守られたらしい。
俺が筆箱を鞄にしまい込むと、それを見計らったように窓から強い風が吹き込んでカーテンが揺れた。
その瞬間、隣の机から何かが落ちるのが見えた。
ばさっ、と音を立てて、一冊の本が床の上に広がる。
元の位置に戻しておいてやるかと屈んでその本を拾い上げたとき、俺の視線は本のある1ページに吸い込まれていた。
「まさか―――これ、『AER』のノベライズ版じゃないのか!?」
『AER』とはかつて18禁パッケージ版だけで20万本を売り上げた伝説のエロゲだ。
魅力的なキャラやエロシーンのクオリティはもちろんだが、その特徴は何といっても感動的なシナリオにある。
原因不明の病を克服したヒロインが町内マラソンでゴールするシーンは涙なしでは見られない。
うっ、思い出したら目から汁が―――って、大事なのはそこじゃない。
『AER』はその後、エロシーンが削除された全年齢版が発売された。この本は、その全年齢版を元に小説化されたものだ。メインライターが執筆したこともあって心情描写が細やかで、ノベライズ版で新たに明らかになった伏線もあった――――って、大事なのはそこでもなく、この本が来宮の机にあったという事実だ。
ページを捲ると、挿絵の箇所があった。
これぞエロゲって感じの萌え萌えしいキャラが描かれている。
俺はもう一度、隣の机を見た。
俺の隣―――黒髪ロングの清純派色白美少女、来宮たまきの机を。
そのあまりの美少女ぶりに、入学するや否や上級生から連日告白され続けたという、来宮たまき。
学業も優秀で、クラスでは学級委員も務めている。
そんな清純派優等生の来宮がこれを読んでいた……?
教室のドアが開く音がした。
俺は反射的にそちらへ顔を向けていた。
「あ……」
絶句した。
ドアのところに立っていたのは、来宮たまきに他ならなかった。
「あれ、伏見くん、まだ居たんだ……?」
来宮は意外そうな、そして少し焦っているような表情を浮かべた。
その視線がゆっくりと俺の手元へと移る。
来宮の頬がみるみるうちに赤くなっていった。
「ふ、ふふ伏見くん、その本っ!」
「い、いや、俺はただ、床に落ちていたから拾って元に戻してやろうと―――」
来宮は机を跳ねのけながらこちらへ駆け寄ると、俺の手から本をひったくった。
そして潤んだ瞳で俺を睨み、言った。
「中身、見たの⁉」
「いやいやいやいや見てない見てない見てない」
必死に首を振る俺の言葉に、来宮は安心したように胸をなでおろす。
「そ、そう。なら良いの。ええと、ごめんね、本、無理やり取り上げちゃって」
「き、気にするなよ。来宮の本なんだろ、それ」
「ああ、うん。そうなの。机の上に置きっぱなしにしてたの思い出して、取りに来たの。じゃあね伏見くん、また明日っ!」
来宮は慌ただしい様子で教室から出て行こうとする。
その華奢な背中があまりにも悲しげに見えて、俺は無意識のうちに呟いていた。
「ラストシーン、泣けるよな」
「………!」
来宮の動きが止まり、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「俺は―――泣いた」
「伏見くん……?」
不信感と期待感の入り混じったような目で、来宮が俺を見る。
「ごめん、中身見てないっていうの、嘘。それの元になったゲーム、俺、何回も繰り返しやってて……あ、いや、それだけだから。引き留めて悪かった」
俺は鞄を片手に教室を出ようとした。
自然と早足になっていた。
一体俺は何を話してたんだ?
『AER』はエロゲ。それを何度もプレイしたなんてことを女子に打ち明けるなんて、どういう羞恥プレイなんだ。
我ながらバカなことをしてしまった。こんなことは忘れよう。早く家に帰ってエロゲの続きをやらなければ。
不意に左手が重たくなった。
なんだろうと思ってそちらを見ると、来宮の細い指が俺の制服の裾を掴んでいた。
「……伏見くん、『AER』持ってるの?」
「え? あ、ああ、そうだけど」
来宮が俺を見上げる。
視線が合った。
俺は思わず目を逸らしそうになったが、なんとか耐えた。
「ねえ……良かったら、私に貸してくれないかな?」
うん?
今なんて?
「す――すまん、もう一回言ってくれるか?」
「『AER』のソフト、私に貸して欲しいんだけど……」
「い、いやそれはやめた方が良いって」
俺が言うと、来宮は、はっとしたように手を放した。
「あ……そ、そうだよね。ごめん。変なこと言っちゃって。何回もプレイするくらいだもんね、他人には貸したくないよね」
「いやそうじゃなくて―――来宮、知らないのか? 『AER』って元々エロゲで……あ、ええと、エロゲっていうのはだな」
「し、知ってるよ。男の子と女の子がえ、えっちなことするゲームでしょ?」
動揺しているのか、早いまばたきをしながら来宮は言う。
「ま、まあ概ねその通り――」
「え、えっちなことっていうのはええと要するに女性器の中に男性器を挿入―――」
「わ、分かったって! 貸すよ、貸すから!」
「本当!?」
来宮は目をきらきらと輝かせながら言った。
「本当だよ。だけど、俺から借りたってことは誰にも言わないでくれよ」
「うん、絶対言わない。じゃあ、早速行こ!」
「行くって?」
え? と来宮が首を傾げる。
「伏見くんの家だけど……」
「な、なんで俺の家なんだよ。わざわざそんなことしなくても明日持ってくるよ」
「それじゃダメなの。私、パソコン持ってないから」
な、何⁉
パソコン持ってない――⁉
いやしかし確かに、スマホの普及と共にパソコンの所持率が下がりその結果としてエロゲの売り上げが激減しているという話も聞く。
あれは噂じゃなかったのか。タッチ・タイピングが出来ない若者が増えてるっていうのは本当のことだったんだ……。
そんな余計なことを考えつつも、俺の中の冷静な部分は来宮の言葉を分析し続けていた。
その結果、導き出された答えがひとつ。
「つまり―――来宮が俺の部屋でエロゲをするってこと?」
来宮が頷き、俺の両手を握る。
「あなたにしか頼めないの、伏見くん。お願い。私、『AER』の美涼ちゃんルートをプレイしたいの」
来宮の両手からその温かみが伝わって来た。
彼女の顔は俺のすぐ目の前にあって、来宮の家で使っているのだろう洗剤の香りがした。
俺は俺の心拍数が上がっているのに気が付いた。
何を動揺しているんだ俺! こんな状況、エロゲで何度も経験済みだろうが! ……でもリアルでは経験したことないから仕方ないよねえ……っ!
「わ、分かったよ。貸すよ」
俺は絞り出したような声でそう答えるのがやっとだった。
※※※
「こ――これが『AER』の初版なんだね!」
俺の部屋。
俺のパソコン。
俺の椅子―――に座っているのは、来宮だった。
ディスプレイに表示された『AER』のタイトル画面を見て、驚嘆の表情を浮かべている。
両親は仕事で夜遅くまで帰ってこない。
誰にも咎められることなく、俺は来宮を自宅へ連れ込むことに成功した――もちろん下心は微塵もない。
「まあ、好きにプレイして良いよ。だけどノベライズ版のストーリーは基本トゥルーエンドをなぞってるから、最初からやろうと思ったら多少時間がかかるけど」
「そ、そうなんだ。私ゲームとかやったことないからあんまり分からなくて……。操作とか、どうしたらいいの?」
来宮が俺を見上げる。
彼女が座っている椅子がやたら大きく見えた。俺の体格に合わせて買ったものだから、小柄な来宮が座るとそう見えるのも当たり前かもしれない。
「そんなに難しくないから。基本はクリックかエンターでテキストを進めていくだけ。あとはときどき選択肢を選ばなきゃいけないのと、セーブくらいかな」
「せんたくし……? せーぶ……?」
きょとんとした顔をする来宮。
どうやら本当にゲームのことが分からないらしい。
「気にしなくていいよ。とにかく始めて見たら?」
「ど、どこを押したらいいの?」
「エンターキー」
「こ、これね」
来宮はまるで爆弾の起爆スイッチに触れるように、恐る恐るエンターキーを押す。
画面が切り替わり、『AER』のプロローグが始まった。
離島に流れ着いた主人公がヒロインと出会うシーンだ。
俺は何度も周回しているから見慣れた場面だ。むしろスキップしてもいいくらいだが、今日プレイしているのは来宮。無粋なことはせず、心ゆくまでプロローグを楽しんでもらおう―――と、隣を見た瞬間。
「う……うぅ……ぐす……っ」
「な―――なんでもう泣いてるんだ、来宮っ!?」
「だってこうして普通に話している美涼ちゃんだけど、本当はこのとき既に病気が彼女の身体を蝕んでいたんだよね……っ! でも誰にも心配かけたくないからそれを隠してるんだよね……っ! 健気すぎるぅぅぅっ!」
ぼろぼろと涙をながす来宮に、俺はティッシュを差し出した。
「まあ、拭けよ。今からそんなじゃ身体が持たないぜ」
「ぅあ――ありがとう。ううう、美涼ちゃん……っ!」
来宮は号泣しながらテキストを進めていく。
このティッシュは俺が普段愛用しているものだが―――それで女の子の顔を拭かせるのは背徳的な何かを感じなくはないが―――気にしないでおこう。
「あ、ここの台詞は伏線だから覚えといたほうがいいよ」
「えっ、見逃しちゃったかも。どこ? もう一回初めからやり直さなきゃ!」
「いや、一応テキストの確認機能あるから。読み直せるから」
「えーっ! すごいすごい、めっちゃ便利!」
俺がゲームの機能を説明するたびに、来宮は目を輝かせながら反応してくれた。
そんな風にして時間はあっという間に過ぎ去っていった。
※※※
辺りが暗くなってきたので、俺は来宮を家まで送り届けることにした。
「あー、面白かったぁ! ゲームだとフルボイスだしBGMもマッチしてるし、本で読むのとは全然違うんだね!」
来宮は伸びをしながら言う。
「ああ……まあ、そうだな。エロゲは総合芸術だから」
「総合芸術……! その通りだよ、伏見くん!」
突然、来宮が俺の両手を握った。
来宮の手の柔らかさと温かさがダイレクトに伝わって、俺は大いに動揺した。
「あっ、えっ、うん、来宮もそう思ってくれるのか?」
「だって感動したもん。えっちなゲームなんて今日初めてプレイしたけど、なんかすごいなって思っちゃった」
「まあ……今日やった分はシナリオの途中までだったから、なんか中途半端な感じになっちゃったけどな」
「でも、楽しさは十分伝わったよ。ありがとう、伏見くん」
俺の手を握ったまま、来宮はこちらを見上げはにかんだように笑った。
「ま……まあな。俺も『AER』の話が出来て楽しかったよ」
「うん、私も……って、ごめん! いつの間にか手、握っちゃってた!」
来宮は慌てたように俺から手を放す。その顔は熟れた林檎みたいに赤くなっていた。
「い――いや、気にするなよ。送るのはこの辺までで良いか?」
「う、うん。ありがとう」
「じゃあまた、明日学校でな」
そう言うと、来宮は小さく頷いた。
俺は彼女に背を向け、元来た道を戻ろうとした。
そのときだった。
「伏見くん!」
来宮の声に俺は足を止め、振り返った。
「どうした? 何か忘れ物か?」
「ううん、あのね―――」
来宮は恥ずかしそうに前髪を触りながら、言った。
「また明日も行っていいかな、伏見くんのお家」
「え……」
「だ、だってまだ美涼ちゃんルートが途中だし、実は『AER』の他にもやりたいゲームいっぱいあるし―――とにかく、また明日も行きたいの」
俺の目の前に居るのは清純派優等生の来宮たまき。
眉目秀麗、成績優秀、将来有望な美少女で、間違っても俺のような陰の者が関わっていい人間じゃない。
―――しかし。
彼女は俺と同じ、エロゲを愛する者でもある。
同じ愛を持つ者として、来宮さんの頼みを断るわけにはいかない。
「……分かった。明日も俺の家に来て良いよ」
「本当!? やった、ありがとう伏見くん!」
「だけどそれでいいのか、来宮は」
「……え、どういうこと?」
「見ての通り俺はエロゲが好きだ。同時にクラスでは浮いた存在でもある。そんな俺と関わると、来宮さんの評判を落とすことにならないか?」
俺の言葉に来宮さんは口を噤んだ。
――――仕方のないことだ。現実世界の友人たちと輝かしい学校生活を送る彼女と二次元美少女の恥部を求めて日々を生きる俺とでは、あまりにも住む世界が違いすぎる。
「俺と一緒にいると多分、来宮は不幸になるぜ」
「そ、そんなこと……」
「パソコンを買ったら教えてくれよ。そしたら『AER』を貸すからさ」
黙ったままの来宮をそのままに、俺は再び彼女へ背を向けて歩き出した。
来宮はいつか俺を軽蔑するだろう。エロゲという虚像でしか己を満たすことのできない、俺という存在を。
さようなら来宮。今日は俺も――楽しかったよ。誰かとエロゲをやるなんて初めてだったから。
俺は歩調を速めた。
その瞬間、来宮の大きな声が聞こえた。
「それでも―――明日はまた、伏見くんの家に行くから! 一緒に『AER』をやるから! 伏見くんと一緒にいて、私、不幸になんてならないから!」
同情されたのかな、と俺は思った。
少しだけ振り返って来宮さんに手を振り、俺はそのまま帰路についた。
※※※
次の日も来宮は俺の家に来た。
一緒に『AER』をプレイした。
ゲーム中のイベントが起こる度に来宮は泣いたり笑ったりして、トゥルーエンドを迎えたときは二人で涙ながらに喜んだ。
エロシーンはめちゃくちゃ気まずかった。シーンが終わった後の変な空気を、俺は一生忘れることがないだろう。
『AER』をプレイし終えると、次は別のゲームをやった。新作が出ると二人で買いに行ったりした。来宮もパソコンを買ったので、お互いにお勧めのゲームをプレイして、感想を言い合ったりした。
高校を卒業し、俺たちは同じ大学に行った。俺は一人暮らしを始めた。それでも来宮は俺の家に通い続けた。その度に一緒にゲームをした。
そして。
「伏見くん伏見くん、『かぎそふと』の新作が出るってよ!」
「それは大変だ! 予約しなければ!」
「大丈夫だよ! もう初回限定版を予約してるから!」
「初回限定版!? 特典は!?」
「声優さんのドラマCDとアフレコ台本(複製サイン付き)だって!」
「でかした来宮!」
俺が言うと、来宮さんは頬を膨らませた。
「もう、まだ来宮って呼ぶの?」
「あ……ああごめん、たまきさん」
俺の動揺した様子が面白かったのか、来宮は喉を鳴らして笑った。
「冗談だよ。でも、私はもう『来宮』じゃないんだから」
ソファの上。
俺と来宮だけの部屋で、彼女は俺の手を握る。
その薬指には指輪があった。ついこの間、俺が贈ったものだ。
壁には『AER』のポスターが貼ってあった。
来宮のお腹には子供がいる。お医者さんの話では女の子らしい。名前は『美涼』にする予定だ。
「ね? 私、伏見くんと一緒にいて不幸になんかならなかったでしょ?」
来宮の笑顔を見て、俺は思う。
三次元にもトゥルーエンドってあるんだな、と。
どうも、ぶんぶんスクーターです!
初投稿です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
これからも応援よろしくお願いします!!