異例の発表
BCターフのレース後から今後について明確なコメントがなかったアブソルートは、現役引退説が囁かれ出していた。
そんな中、オブライアン厩舎が声明を出した。
『アブソルートは現役を続けながら種付けを行います!』
この競馬界にとって前例のない発表に度肝を抜かれた!
凱旋門賞でのスーパーパフォーマンスから現役引退を惜しまれる声が多かったが、この発表にはほとんどの人がが反対の意見だった。
「種牡馬をしながら現役を続けるなんて競馬を舐めている」という意見がほとんど。
そんな中、オブライアン厩舎はアブソルートの種付けについてさらに条件を提示した。
その条件とは、アブソルートの1年での種付け頭数は10頭のみに絞られて、繁殖牝馬は現役生活で輝かしい成績を残した牝馬か繁殖として結果を残した牝馬から厳選するということだった。
世間の感想はここでもよろしくないイメージであったが、アブソルートの異次元的な能力を近くで感じていた競馬関係者はその少ない枠にも飛びつくものが多かった。
選ばれた10頭の繁殖牝馬はどの馬も現役生活でG1を複数勝った馬か、自身は勝利していないものの子供が結果を残している牝馬ばかりだった。
この異例の考えに至ったのは、アブソルートのオーナーアブドゥル王子の考えが強い馬が種牡馬生活の為に早期に引退してしまうことがあまり好きではない人だったのも大きい。
アブドゥルの夢はアブソルートとその息子が同じレースで対戦するという夢があった。
こんな無謀に思える夢だが、実際にこれより4年後にこれが実現するのだが、その夢の実現の直前に83歳で死去してしまう。
話は戻して4歳時のアブソルートは春に種付けをしたことで、復帰戦は夏のキングジョージまでかかった。
約10ヶ月ぶりのレースになったのと、このレースでは3歳で無敗の2冠馬のセカンドオピニオンがR.ジェームス騎乗で参戦していた。
久しぶりのレースなこともあり流石のアブソルートも苦戦が予想されたが、この対戦は1つ上のアブソルートがセカンドオピニオンを子供扱いで6馬身差で完封してみせた。
その後セカンドオピニオンはこの敗戦の借りを返そうと幾度もアブソルートとの対決するレース選択をしていく。
結果としてセカンドオピニオンは7歳まで走り続けて、20勝のG1も6勝することになるが、アブソルートより先にゴールすることはなかった。
アブソルートがいなければ彼こそが歴史的な競走馬と言われていたかもしれないほどであったが、この馬の存在がアブソルートのモチベーションに繋がっていたともオブライアンは後日談で語っていた。