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異形の使徒

ロボット物が書きたいという衝動を発散するために書いただけです。

ワンシーンだけなので、続きが読みたいという方には申し訳ない。

 地球統一歴110年、人類が宇宙へ進出して100年が経過した頃。


 空には無数のコロニーが浮かび、そこには多くの亜人達が詰め込められた。





「こちら警邏隊、異常なし」


 軍服の上に毛皮のコートを着込んだ二人組の男が大量に並んだ倉庫の外を歩いていた。倉庫の大きさは大型の旅客機が入るほどの巨大な物である。


 周囲は有刺鉄線のフェンスと電気柵の二重に囲われた高い壁が存在し、内部は一つの街のように工場まで存在する。


 警邏をしている人間はこの二人の男以外にも常に数十人体制で見張りが存在する。それ以外にも一般に普及する赤外線やマナ感知、果てには重力感知センサーなんて物がそこら中に張り巡らされ、地球上でも上から数えた方が早いほど厳重な警備網が敷かれた巨大基地であった。


 もちろん、ここで製造されている物を知る者なら誰もが頷くだろう。


 そんな街とも言える基地内部で夜警の当番になった軍人は自分の任務を忠実に遂行していた。――一部を除いて。


 何十年と平和が続けば平和ボケした軍人だって現れる。例えば今日、警邏を担当している男がそうでもおかしくはなかった。


「センサーが無数に在って、監視室にも何人も詰めてるのに……。自分達が警備する意味なんてあるんですかね、先輩?」


 後輩である男は手に持ったライトで足元を照らしながら、白い吐息と一緒に愚痴をこぼす。


「任務中は私語を慎め」

「――っといいましても」


 真面目な先輩は適当な後輩にため息をこぼして、雑談に付き合うことにした。


 夜番は長い。眠気を飛ばすためにも、口を動かすのが効果的であることを知っているからだ。ただし眠気と誤魔化すためと言い張るには、夕方の六時では説得力は皆無であろう。


「はあ、仕方あるまい。ここにあるのはMG(マシンギア)の動力コアとなる純正コア集積場だ。一つでも盗まれれば何に使われるか分かってもんじゃない」

「巨大ロボ……いいっすよね。自分も適正があればそっちに所属できたのになあ。MGのパイロット部隊に配属されれば軍人でもモテますよね」


 広大な宇宙にまでその勢力圏を広げた人類の軍隊。昔は戦車や戦闘機乗りが軍人の花形と言われたが、今ではMGと呼ばれる巨大兵器のパイロットにその座を譲った。


 全長10mから、大きいモノでは18m以上にも及ぶ兵器群が宇宙を我が物顔で闊歩しているのだ。


「お前の性格じゃどっちにしろ無理だろ」

「いやいや、そんなことないです」


 宙や禁域と呼ばれる領域で戦うMG乗りに憧れる後輩とは違い、生真面目な先輩はあまり興味が無さそうにしている。


 宇宙での亜人ではないヒューマンなぞ、居心地が悪いだけだからだ。他者を見下すのが好物な人間にとって宇宙部隊は自らの自尊心を満たせる天職だろうが、この男にとっては気分が悪いだけであった。


 さらに付け加えると禁域なんて論外、あそこはエースパイロットのみが入れる場所だ。


「宇宙なんて俺らヒューマンには――」


 いつもと変わらない警邏の時間。しかしその平和な時間も唐突に終わりを迎える。


「緊急事態発生、繰り返す。緊急事態発生」


 これは訓練ではない。そう続いた無線通信機からの緊急通信に基地内は緊張感に包まれた。


「先輩! ――あれ」


 空に向かって幾条も上がる光の帯。後輩が指さす光の中に巨大な人型兵器の姿が浮かんでいた。


「MGが空に浮いている……だと? それにあれは飛行なんかじゃない、浮遊しているぞ。推進力は一体何を――」


 その巨人は全長18m前後。一般的な統一軍のMGと比べれば大きい部類で、背部のバックパックと思われる場所には左右に八本の可変ウィングが広がる。


 『異形の使徒』


 それはウィングから光の粒子を降らせ、まるで後光を差す天使を彷彿とさせる。――ただし頭部はそのイメージからかけ離れていた。天使の頭部には龍を意識させる造形をしていたからだ。


 飛行型MGは存在してもあのような大型、しかもその場に浮遊するMGなんて聞いたことが無い。


 男たちは自らの見た物を信じられず、無意識に開いていた口にすら気づかなかった。


「翼の生えた赤いMG――亜人が作ったとでもいうのか?」

「先輩、司令部と通信が繋がりません。マナ粒子の濃度が高すぎて一部の通信機器が沈黙しています」

「外部からの散布か? まさかあのMG一機でマナの無線通信に妨害を起こしているわけ――」


 真面目な男は首にかけた双眼鏡を持ち上げ顔に当てた。


 赤いMGの額には『alter Rezel』と文字が刻まれている


「アルターレゼル?」


 それがあのMGの名前なのだろうか。


 所属不明のUnknown機は沈黙を保ち続けている。


 何かを待っているのか。不気味な静寂とどこからか聞こえてくる怒声が戦場となった基地の混乱を如実に表していた。

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