第二章 エピローグ
このエピローグ、実はもうちょっと長くなる予定でしたが、原文が消えてしまったので短くなりました。⋯⋯あれは精神に結構来ますよ⋯⋯。
ウェレール王国とガールム帝国の二国間の、非常に短い戦争は、王国の勝利に終わった。この戦争の情報は瞬く間に周辺諸国に広がり、そして、認知されることとなった。
──白の魔女、エストが王国と契約した、と。
現在、四人はレネの屋敷に住まわせて貰っていた。
エルトア=エストということが王国で広く知られたため、冒険者稼業なんてやってられなくなり、何より、いくら王国を勝利に導いたからと言っても魔女は魔女。一般人からの忌避感も強く、王都に滞在することは厳しかったのだ。
「⋯⋯ふー。こんなものか」
しかし、表立って行動できるということは、王国からの金銭的補助も受けられるようになったことを示す。『黒の魔女』の殺害、という名目で、その資金が王国政府よりマサカズたちに受け渡された。
「流石です、マサカズさん。メイド──いえ、執事としては完璧です」
「ああ、ありがとう」
──マサカズは、いや三人は、レネの屋敷で雇ってもらい、働いていた。
屋敷に泊めて貰うのだ。それ相応の代価が必要である。しかし、レネの財力は凄まじく、金銭的な代価ではなく代わりに、労働力という形でそれを払っていた。
「いやー、小さい頃から家事を手伝っていてよかったぜ。こうして活かせるからな」
マサカズはこう見えて、家事力はかなり高い。ユナやエストほどでないにしても料理ができ、掃除、洗濯もお手の物だ。
「だから、こんなにも手慣れていたんだな⋯⋯疲れた⋯⋯」
ナオトも一日である程度はできるようになったが、疲労はかなりある。労働という労働を、これまでしたことがなかったのだろう。
「二人とも、ご飯ができましたよ」
時刻にして夕方。少し早いが、夕食の時間だ。
「⋯⋯うおっ、すげ」
そこに広がっていたのは豪華な食事だ。別に今日は特別な日でもないので、これは普段の食事であるのだろう。
マサカズたちはそれらを口に運び、咀嚼する。
「お口に合いますか?」
「──う、美味いっ!」
美味。ただただ美味。それ以外の言葉では表せない。
「これは⋯⋯あなたが作ったのですか? 美味しいです」
ユナは青髪のメイド──マリーの料理を褒める。こと料理に関してはこの場で下から二番目のマサカズですら、彼女の腕が非常に良いことは分かるほどだ。
「はい」
ちなみに緑髪のメイドの名前はミントというらしい。
そんな食事を楽しんでいると、屋敷の扉が叩かれる。
思わぬ客人を出迎えるため、メリッサは扉に向かおうとするが、
「私が見てくるよ⋯⋯なんか嫌な予感がするんだ」
エストがそれを止める。そして、全員が扉を見ながら、エストが開けると──
「〈重力──」
「待てぇっ!」
◆◆◆
いつぞやの時みたく、エストは彼に重力魔法を行使しようとした。それをマサカズが間一髪のところで止めたのだ。
「私がキミを嫌っているのは知ってるでしょ? どうしてまた来たの?」
エストの態度はあからさまに不機嫌だ。しょうもない理由はではあるが、詳しい状況を知らないマサカズにはそれを咎める権利はない。
「フェリシアの件だ。妹がそれのお礼に、お前たちをエルフの国に招待したいとのことでな」
フェリシア──レネによって、帝国から逃げ出したエルフの国の王女様である。
「⋯⋯なるほどね。ロアはどっかに行ったから居ないけど、それでも大丈夫?」
「ああ」
エストの言うように、赤の魔女、ロアは特段この国に居る理由もないため、別大陸に向かって行った。今頃、野良の竜に喧嘩を振ってはボコボコにしているだろう。
「それで、いつから?」
「そっちの準備が出来次第、だ」
「わかった。⋯⋯なら、断る理由はないね。でしょ?」
どちらにせよ、黒の教団や黒の魔女についての情報は全く無い。それについ最近の激闘の疲れもある。一度、体を休めることもしておくべきだろう。
「そうですね。明日一日かけて準備をして⋯⋯。明後日にここを出発しましょう。それでいいですか、ドメイ」
「勿論だ。レネ」
エルフの国──正式名称はローゼルク王国──に行くメンバーは、マサカズ、ナオト、ユナ、エスト、レネ、レイ、そして世話係のメイドとしてミントが同行し、計七人だ。
「エルフの国か⋯⋯」
エルフ。そうエルフだ。美男美女が多い種族である。
──マサカズがこれまで、ユナやエストと、美女を見てきてもそれほど性欲が沸かなかったのは、単純に彼が二次元に生きる人物であったからだ。あとエストに最初殺されたためというのもある。
そして、彼がその二次元で最も愛していたのは──耳の長い、独特な美しさを持つ種族、エルフだった。
「しっ!」
彼は彼らしくもなく、一人静かにガッツポーズをする。
第二章は短かったですが、これにて終了です。
第三章の投稿は少し遅れると思われます。理由としては、プロットに不満があったためです。