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白の魔女の世界救済譚  作者: 月乃彰
第七章 暁に至る時
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7−115 揶揄い下手の魔女

 とある都市の廃墟となった屋敷の中、いつものようにエストは現れた。

 明かり一つないというのに、エストは昼間であるかのように歩き、目的の場所に到着する。そして扉を開き、第一声、


「『殃戮魔剣』の場所が分かったんだってね」


 セレディナからの報告に『殃戮魔剣』の所在があった。

 エストが過去に『殃戮魔剣』を見つけた所に、現在は無く、だからセレディナたちにその捜索を頼んでいた。


「ああ、そうだ」


 屋敷はセレディナたちが住居にしており、真っ暗なのも目立たないため、そもそも明かりが必要でないからだ。

 そんな真っ暗闇の中、椅子に座り机越しにエストと向き合う。彼女の両隣にはレヴィアとメラリスが居た。


「それは上々。で、どこにあるの? そろそろ総力戦をしても良い頃合いだと思うけど」


 戦争開始から長い時間が過ぎており、約束の一ヶ月はもう終わりに向かっている。今から決戦に入らないと時間が足りなくなるだろう。


「旧城壁都市、『デレナード』」


「⋯⋯『デレナード』? あれって廃棄された都市なんじゃないの? 五十年前くらいに魔獣の群れに襲われて」


 自然界で凶暴な一体の魔獣が誕生し、それによって生態系が乱された。結果、食料などが不足し魔獣は人里を襲った。

 それが『デレナード』が壊滅し、旧城壁都市と呼ばれるようになった原因である。


「もう調査済みだ。こっちで支配した亜人が言っていた。そこには黒の教団が居る」


「え? ってことは、黒の教団が」


「例の魔剣を持っている⋯⋯ということだ。あとそこには大公も居るぞ」


 何とも好都合な話である。魔剣を奪うこともでき、大公に恩を売ることもできる。今すぐにでも襲撃する価値はあるだろう。


「なら『ホルース』に忍び込ませてる部下に、この情報を流して終わらせようよ」


「それは私も考えたし、やるつもりだ。だが一つだけ気になる点があってな。お前を呼んだのはそのためだ」


 セレディナは一枚の写真を取り出し、机の上に置いてエストに見せた。その写真に写っていたのは一人の男。橙色のショートヘアーが特徴的だ。


「キミの言うことが真実なら、こいつは黒の教団、それもセフィラの一人だろうね。でもこれが気になること? 今更セフィラ程度、簡単に始末できるのに」


「お前から知った過去の記憶だと、セフィラの実力は魔女に匹敵するんじゃなかったのか?」


 セレディナたちにエストが見せたのは、黒の教団との決戦時の記憶が主だ。そこで見たセフィラの力はセレディナの言う通りである。だが、


「あれは黒の魔女が理由。何とかしてセフィラの力を底上げしてたんでしょ。でも今、黒の魔女は意識があるのかさえ怪しいほど弱ってる。そんなインチキじみた力使えるとは──」


「この写真に写っている男、一人で私の軍勢を滅ぼしたぞ」


「⋯⋯は?」


 エストの見立てでは、セフィラの平均値だとセレディナが作った亜人、アンデッドの軍勢を相手にすることはできない。ましてや一人でそれらを滅ぼすなど無理な話だ。唯一できそうなのはケテルぐらいである。


「先日、亜人がここに襲撃をかけた。さっき言ってた奴らだ。だが滅ぼされた。その時に大公の存在を確認できたのは収穫だが、割に合わない被害だ」


「⋯⋯おーけー。状況は把握した。⋯⋯あの魔女、本当にムカつくよ」


「お前も魔女だろ」


「そうだけど違うでしょ」


 あの黒の魔女は本当に隙がない。あの短時間、あの状況下でセフィラの強化を行うことまで頭が回るとは敵ながら天晴。そして気に食わない。


「それでどうするんだ?」


「勿論、仕掛けるよ。そういう手筈でお願いね」


 セレディナは人間陣営に忍ばせている自分の配下に情報を伝達する。


「⋯⋯それ便利だよね」


「魔法でも似たようなことできるだろう?」


「そうだけど、あれだと魔力使うからね」


 さてと、と言ってエストは席を立ち上がる。そして魔法を行使し、次の瞬間景色は変わる。

 『ホルース』の客室。窓に被さるカーテンを開き、夜の都市を見渡した。

 剣や弓を一般人だけでなく貴族も携え、振るい、射って訓練している。技術は大したことない。しかし見違えるほど良くなっている。平時であれば同じだけしても、ここまでにはならないだろうに。


「⋯⋯向こう側に近ければ近いほど、人は強くなるのかな」


 エストは強者だ。しかし絶対者ではない。

 これからの戦いには、彼女とて死の危険性がある。メーデアという大厄災と戦うには、エスト一人の力はあまりに未熟だ。

 だがエストの能力はそう簡単には成長しない。ここ最近の進化もポテンシャルを引き出したに過ぎない。真なる意味での成長はなかった。


「そういう意味では、彼らは恵まれている。私という壁があるから。でも私には何がある? メーデア以外に、私には、超えるべき相手は?」


 イザベリア、だろうか。そう思ったが、彼女は果たしてエストを本気で追い詰めるだろうか。いやそもそも、イザベリアは壁になるのだろうか。

 そうだ。結局の所、エストはメーデアとの戦いで強くならなければならない。少なくとも現状の戦力では、メーデアは殺せない。


「まあいいか。⋯⋯やるしかない、もんね。今は今やるべきことをしよう」


 そこに扉が叩かれる音がした。エストは「入っていいよ」と言うと、彼女の従者、ノーワが現れる。


「夜分にすみません、エスト様」


「どうしたのかな?」


「はい。その⋯⋯えっと⋯⋯」


 ノーワは何だか言いづらそうにしている。

 エストはその要件を察した。まだ時間は経っていないはずだが、いかんせん情報の出処が出処なのだろう。そしてまとめ役がルークだから、ここまで速いのだ。


「大公でも見つかった?」


 ノーワは中間管理職のようなもので、その間で四苦八苦している。特に最近はエストに『お願い』として、よく人間の収監都市への攻撃に参加してもらっている。

 あくまでエストの役割は『死神』を殺すことだ。不必要な魔力の消耗を要請しているようなものだから、彼女の胃はどんどん悪くなっていっているのだろう。


「え!? な、なぜそれを⋯⋯?」


「顔見れば分かるよ。いつもより違っていたからね」


 ノーワは「なるほど。凄いですね」などと言っていたが、エストにはそんな能力はない。たださっさと話を進めるためだ。勘違いしてもらおう。


「キミはどうしろって言われたの?」


「どうしろ⋯⋯? ああ⋯⋯エスト様に同行しろ、と命じられました」


「そう。⋯⋯キミは私と、キミの上司、どっちの言葉を優先にする?」


 エストの突然の問いにノーワは唖然とした。

 分からない。それが答えだ。しかしエストはどちらか、を求めている。ならばそれに答えるのが従者の勤めだ。

 であれば、答えは、


「私はエルティア公国に住む人間です。⋯⋯しかし、今はエスト様の従者。主人の言葉に反する従者など居ません」


「よろしい。じゃあそんな私だけの従者に命ずる。キミが主になって大公を救出してね」


「は──いっ!?」


 本日二回目の唖然タイムが訪れた。


「何驚いてるの? 私の言葉は絶対なんでしょ?」


「い、いえ、いくらなんでも、適材適所というものが⋯⋯。私などにそのようなこと⋯⋯」


 明らかにノーワは動揺している。それはそうだ。いきなり公国きっての最重要人物を、敵の本拠地から救ってこいなどという命令が下されたのだから。誰だってこうなるものだ。


「私はキミができると思って頼んでいるんだ。多分私だとできないしね」


「エスト様ぁ⋯⋯!?」


 ノーワは口には出さないが目で懇願している。そんな責任重大なことをやらせないでくれと。しかしエストもエストで引けない理由がある。


「キミにこの大役を任せる理由は勿論あるよ。それはね、キミが信用できるから。人間的な意味でも、実力的な意味でもね。それに私にはできないから」


「うう⋯⋯。⋯⋯さっきも言ってましたけど、エスト様にできない、とは? あなた様にできないことがあるなんて思えません」


「凄い信頼と評価だね⋯⋯? 確かに私は大体できる天才肌だけど、できないこともあるんだよ。その一つが隠密」


 エストは長々と自分がいかに隠密に向かないかを語った。

 まず自分は目立つ格好をしている。真っ白な長髪に長身で美人という恵まれ過ぎた容姿など、目立つに決まっている。そして不可視化の魔法も絶対ではないし、痕跡までは消せない。

 なにより、誰かを護衛しながら隠密を続けるなんてエストが最も苦手とすることだ。


「私の攻撃手段は魔法。それも派手で高火力なものばかり。はっきり言って、豪快に相手を蹴散らすための魔法だ。音もなく殺すには向いていない」


 死体も隠す所なんてわからないし、護衛だって満足にできない。

 だから自分は適任でなく、しかしノーワには向いていると考えた、と何とかしてエストは説得した。

 勿論、大体嘘だ。エストならばできる。音もなく殺して死体を消し去るなんて簡単にできるし、足音を消して走るのもできる。

 というか、サーチ魔法で目標人物を発見し、転移して連れ去ることもできる。まあこれは、流石に転移阻害の結界が張られているだろうからできないかもしれないが。

 それは抜きにしても、なぜエストがやらないかと言うと理由はたった一つ。

 あっさり助けるより、命懸けで助けられた方が相手に恩が売れるからだ。

 確かにそれを行うのはノーワで、彼女が名声を高めるだろう。しかしその主人のエストの評判も高くなる。それにノーワという英雄がエストを賞賛すればより効果は大きくなる。

 ノーワに任せるメリットは沢山あるのだ。


「だからお願い。ね?」


 男女区別なく魅了する美貌による上目遣い。その破壊力は他に類を見ない。エストが長身であるから、普段は見下されているのにその相手が見上げてくるのだ。思わず劣情を抱いても可笑しくない。

 ノーワだって思わなかったろう。同性に対して頬を赤らめるとは。可愛いと心の底から思うとは。心を揺さぶられ、そして決心にまで至る。


「⋯⋯はい。⋯⋯分かりました!」


「よし。その答えが聞きたかった。はい。じゃあ、これとこれとこれあげるね」


 エストは空中に開いた闇の中から幾つもの武具を取り出した。

 衝撃吸収鎧ショック・アブソーバー・メイル治癒小手(ヒーリング・グローブ)反射魔法指輪マジック・リフレクター・リング、そして複射魔法弓インクリーシング・アロー。他にも〈不可視化(インヴィジブル)〉、〈無臭(オーダレス)〉、〈通話(コール)〉の魔法巻物(スクロール)を収納済みの無量収納首輪インフィニティ・ストレージ・チョーカーを取り出した。


「あの、これらって」


「魔具⋯⋯魔法武具だよ」


 全部私が作りましたと言外に自慢するエスト。

 一般的に高価とされる魔具。それも魔女ほどの魔法使いが作ったとなれば、その価値はどうなるのか。

 到底、ノーワが目にすることさえないほどの物だろう。あのナイフと同等のものだ。


「いや。いやいやいやいやいや! 受け取れませんって! もし失ったり壊したりしたら、私弁償できませんって!」


 魔具とは道具に魔法を込めるのが重要とされがちだ。勿論、間違いではない。魔具の価値を決める大きな段階だろう。

 だが、魔具の製作は魔法を込める前──何も込められていない道具を選定するところから始まっている。

 極論、魔女の魔法をそこいらの鉄剣に込めようものなら、一振りで壊れてしまうだろう。それに相応しい純度、魔力伝導率を誇る素材でなければ、魔具は作れない。だから魔力を纏わせることがあるのだ。


「大丈夫、大丈夫。そうなった時はキミに体で支払ってもらうから」


「それどういう意味ですかっ!?」


 ノーワの顔が真っ赤になる。恥ずかしがっている。エストの言葉は()()()()()()にしか聞こえなかったからだ。


「キミぃ〜、何か勘違いしてなーい?」


 エストは分かってて言って、揶揄った。


「私は魔力を貰うって意味で言ったんだけどねぇ〜。まさかこの私がキミの体を性的に求めてると思ったのかなぁ〜?」


 本当に楽しそうにエストは笑う。ここ最近、人を見下すことや嘲ることはあっても揶揄うことはなかった。その点でノーワは揶揄い斐のある女の子だ。とても楽しい。


「──っ!? エスト様がそういうふうに言ったらからじゃないですか!? もう、エスト様の破廉恥! エロ魔女! だからそんなに太腿とか肩とか晒してるんですね!」


「エロ魔女!? 肩とか足とか見せてるのって駄目だった!? 可愛いと思ってたんだけど⋯⋯」


「分かりました! 分かりましたよ! 着れば良いんでしょう、着れば! もし壊したり失ったりしたら、私の体を好きにしてくださいよ! その代わり責任とっ──」


「⋯⋯えぇ⋯⋯と、エスト様、従者ノーワ・スレイン、エインシス戦士長がお呼びです」


 こんな下らない言い争いをしているものだから、エストとノーワはいつの間にか居た兵士に気づかなかった。普通、部屋に部屋主の許可なく入るのは御法度だ。だが何度も呼び掛けても返答がされず、仕方なく入室した。それを責めるのは酷というものだ。


「ぇ⋯⋯ス、スミマセン⋯⋯はい。分かりました」


「⋯⋯見なかったことにします。聞かなかったことにします。では」


 男の兵士はそれだけ言ってそそくさと退出した。


「──エスト様ぁっ! 勘違いされたじゃないですかぁっ!」


 やり過ぎた、と思うエスト。しかし反省する気がないのが彼女だ。ただ、それはそうと半泣きのノーワを慰めなければ自分の評判が地に落ちそうだ。

 魔女は一人の少女の涙を拭った。でもしばらく話を聞いてくれなさそうだった。

 私ps4しか持っておらず、ずっとmhriseできなかったんです。でも調べてみるとどうやらps版があるらしい。ということなので買ってやりました。

 mhはxx以来やっていなくて、実に四、五年ぶりにやったのですが楽しかったです。でもオロミドロはクソモンスです。多頭クエとは言え、まさか里クエで三十分近くかかるとは思いませんでした。オウガ君までは良かったのに最後のオロミドロで集中力切れて被弾しまくりましたよ、ええ。やっぱ長時間のゲームは疲れますね。

その翌日に集会所のヌシアシラが出る百竜夜行の緊急クエをソロでやったのですが、あいつ火力可笑しくないですかね? 一応ナルガ装備してるのに一撃で七、八割消し飛んだんですけど。あんなダメージ超特殊許可以来ですよ。

 でも全体的には楽しかったです。春頃にサンブレイクが出るとかで、その時までにはhr解放しておきたいですね。

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