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弱虫の剣  作者: 望月 まーゆ
第4章: 銀翼の王者
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招かざる客

「この間の迎撃でさすがに冒険者ども懲りたろうよ」


「何でも人間どもの間では強者だったようだ。

もう我々に歯向かうものは人間にはいないだろう」


「遂に、我々の時代が来たな」


うっとうしい毛色の羽が舞い散る。

嗄れた声でやかましくと騒ぐ烏。


標高六千メートルに建つ、ロックマウンテンキャッスルの最上階の王の間。

高級と名の付く物を手当たり次第に集めたような部屋で優雅に寛いでいた。


三人の鳥達の手にはそれぞれワイングラスがあり、淡い紅色がゆっくりと渦を巻きながら完熟した果物の甘い香りを漂わせていた。



「何を言っているの?

これだから単細胞の鳥は始末に困る」


機械音のような声が歓喜の声を鋭く遮る。

ピンと張りつめた空気へと変わる。

烏達は羽を翻し背後を振り返る。


兎の面?

それに……いつの間に?

城には結界を張り巡らせ、更に見張りを隅々まで立たせている。

そう簡単には侵入出来るとは思えない。

しかし、目の前には兎の面をした人物が平然と立っている。

外で争った物音はしなかった。

見張りからの連絡もなかった。

いったい……どうやって……

疑問が尽きない烏たち。


そんな烏を無視するように兎の面は口を開いた。


「私が内側からアシストしなければ確実に、奴等にローチェに入られた。それにお前たちが思っている以上に人間は厄介だ。

特に、二つ名を持つ冒険者は一筋縄ではいかない」


こちらを向いているのか、いないのか。

兎の面で表情が分からない。

烏たちは身構える。


「何者だお前は?」


「単細胞のお前たちに知恵を与えに来てやった。感謝しろ!」


「ーーっんだと⁉︎」


「動くな……粉々に散るゾ」


「ーーーーーーーーーーー‼︎‼︎」


全くそんな素振りは無かった。

言われるまで全く気が付かなかった。

もし、静止してくれなければ足が捥げていたかも知れない。


足が棒のように硬く凍り付いていた。

いや……辺りを見渡す。

部屋中に氷の結晶が広がりまるで冷凍庫のように凍結していた。


「二度と言わないゾ。

我々に従えば、空の権利だけはくれてやる」


体中を巡る血までもが凍ってしまうのではないかと思う程の寒さが襲う。


「我々…」


思わずこぼれた疑問の言葉。


「余計な詮索はするな。

お前らは私たちの指示に従って動けば良いだけだ」


兎の面の人物が右手を前に出すと、カチカチと音を立てて徐々に凍っていく部分が上がってくる。足だけ凍っていたが、もう既に腰まで凍っていてまるで、身動きが取れない。


「わ、、わかった……従う……」


兎の面の人物が烏達に背を向けると、部屋中の氷が溶け出し辺りは水が滴り落ちる。


「そこの水晶でやり取りする。

肌身離さず持っていろ!」


兎の面の人物は闇に溶けるように姿を消した。


数分の出来事だが、烏たちにとってはとても数時間にも思える程、長い時間に感じていた。

元々、考えるのが苦手な烏達は何がなんだか分からずいた。


呆然と立ち尽くしていると、烏達の氷が全て溶けて動けるようになった。



コロコロと足元に水晶が転がり鳥の足に当たり止まった。


「ーーコレは?」


鳥が手に取り顔を上げた時にはすでに、兎の面の人物は姿を消していた。


鳥たちは同時に肩を落とした。

安堵した事よりも、やり切れない気持ちが大部分を占めていた。


何よりもせっかく【ディアボロス】がいなくなり、天空を支配し、このローチェの国を奪い、自分たちには敵はいくなったと思った所でこの謎の人物に邪魔されたのだ。


「…なんなんだ? あの兎ヤローは⁉︎」


怒りのままに壁を思いっきり殴る


「俺達に何をさせようってんだ?」


「し、従っていれば空は自由にしていいって言ってなかったか?」


「……ま、まあな」


「な、なら話は早いだろ? 

俺達が生き残るには争いは避けるべきだ。

今までだって強い奴には従い、弱い奴からは奪ってきた。今回もそうだ……兎には勝てない。

ここは大人しく従い、空の権利は頂く」


「…うむ」


「異議なし」


三人は通信水晶に同時に目をやった。


今は何も映らない透明な丸い結晶体が三人には恐ろしく見えたーーーー。

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