表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱虫の剣  作者: 望月 まーゆ
第4章: 銀翼の王者
87/113

パーティー会談

五組のパーティーによる会議が水の国サザンビートのギルドホールにて行われていた。

それぞれ代表二名が出席していた。


「ーーでは要件を聞こうか」


多忙な中、出席したアリアが仏頂面で尋ねる。

冒険者パーティーランキングの上位メンバーを集めた今回の五パーティーの中でも、ラヴィ・アリアの存在感は一際目立っていた。


集められたパーティーは以下の五パーティーだ。


==============================


・アリアカンパニー【2位】 

・Drecksack〈ドレイクザック〉【9位】

・ラピスラズリ【5位】

・リッターオルデン【7位】

・アリュシナシオン【6位】


==============================


しかし、一組がまだ姿を見せていない。


冒険者パーティーランキング5位のラピスラズリのリーダー、ルーカスが今回の首謀者だ。

世界一の貿易機構のアリアカンパニーの代表であり、一流の冒険者であるラヴィにルーカスも逆らうことは出来ない。

一組がまだ到着してはいないが、ゆっくりと立ち上がり口を開いた。


「今回の【三怪鳥レイドイベント】に参加しているほとんどのパーティーがローチェに辿り着けずに離脱したのは知っているか?」


「そんなに山越えはキツいのか?」


ラヴィがテーブルに置かれたまだ湯気のたつコーヒーを口に含みながら首を傾げた。


「いや、三怪鳥が現れてから、飛行系の魔物が活発化している。特に竜族が厄介だ。

ディアボロスの残党を手先にしている」


ルーカスは一息吐き、コーヒーを口に含んで更に続けた。


「あの【龍神】率いる竜狩りを専門にしているドラゴンスレイヤー達でもやられた」


「りゅ、龍神がなぜ?」


冒険者パーティーランキング7位のリッターオルデン、リーダーのイグニスが驚きの余り開いた口を閉じれないでいた。


…ざわざわ…ざわざわ


憶測でアレやコレやとそれぞれが喋り出した。

そこで一喝。

パン!パン!と、ラヴィが無言で手を二回叩いた。


一瞬で静寂となる会議室。

ラヴィが無言でルーカスを見つめると、

コホンと軽く咳払いをしてルーカスが続けた。



「ーー内輪揉めらしい」


「内輪揉め……だと?」


「あれだけ統率のとれた竜騎士団が、内輪揉めなどあるのか?」


首を傾げる一同に、ルーカスの顔色が変わる。


「ーーここからが本題のようだな」


ラヴィが両肘をテーブルに付け、それに顔を乗せて前のめりにルーカスを見つめた。

ルーカスはそれを見て軽く頷く。


「竜騎士団副団長のセリスが裏切り、騎士団員に急に斬りかかったそうだ。

ドラゴンとの戦闘中に統率を失った竜騎士団は一気に敗北へと向かったそうだ。あの【龍神アルベルト・ロバート】も生死を彷徨う重症だそうだ」


「セリスは…何か錯乱するような魔法や術が掛かっていたのか?」


イグニスのその質問にルーカスは首を横に振り、


「それは無かったそうだ」


「ーールーカス、私は時間が惜しい。

完結に要件を話せ!」


ラヴィが回りくどい説明に少し苛立ち始めていた。


「生き残った騎士団員の話だと、セリスがいつもと少し言動や行動が違ったと話ていた。

最初は今回のレイドイベに対して集中していたからだと思っていたが、今思えば不自然だったと話している」


「ーーつまり、何が言いたい」


「セリスは別人の可能性が高い」


「ーーーーーーーーー!!?」


その言葉に一同喉を詰まらせる。


「そ、そ、そんな事が……」


「……根拠は?」


「姿、形を変えられるモノの情報を得ています。その他、不審な面を被った存在が各地で目撃されています」


「情報源はどこからだ?」


「冒険者パーティーエールダンジュから猫の面、烏の面の情報を得てます。更に、月華の茶会からも同じような情報が入ってます」


「雷帝か。…エールダンジュ?確かに最近良く耳にするパーティーだな」


「エールダンジュはあの爆炎の剣姫が最近加入したーーーー」


ルーカスの説明途中に、それを遮るように勢いよく会議室の扉が開いた。


「ワリー遅れたわ!」


派手な銀髪のモヒカンの頭、黒の皮のジャケットに同じく黒なタイトなパンツを履いている。

その隣には二メートルを優に越す大男が一緒に会議室に入ってきた。


「フィリップ遅いぞ!」


「わりーっす姐御」


その言葉にラヴィが掌をひらりと一払いすると、フィリップが壁に吹き飛んだ。


「ラヴィさんか、社長と呼べ!」


「…….す、すいません。姉サマ……」


苦笑いを浮かべて、唇から血を流すフィリップを見つめて、フンッと鼻で返事を返すラヴィ。


「ーーところで、そいつは?」


「ああ、デカイだろ?

地下にいたんだ」


ゆっくりと立ち上がり、ジャケットとパンツに付いた埃を払いながらフィリップは答えた。


「地下?幽閉されていたのか?

良く見ると鳥人族か?

片羽はどうした?

闘技場でやられたのか?」


珍しくラヴィが大男に興味を示していた。

ラヴィは利益を得る事以外に余り興味がない。

自分やパーティーにメリットが無い事には、とことん無関心である。

そんなラヴィが珍しくこの大男に食いついた。

謂わゆるラヴィの【勘】が働いたのだ。


「いや、もともと最初からだ。

コイツに初めて会った時から片羽だったぜ。

何でもコイツは今話題のローチェ出身だ」


ガハハハハと高笑いするが、まわりはそれとは対照的に一気に深刻な雰囲気に変わった。

フィリップも「あれ?」と、その洒落になっていない事に気付いた。


「聞かせろ!」


ラヴィの迫力にフィリップと大男も背筋が思わず伸びた。


元王妃の殺害の罪をきせられる。

元国王によりリベリオン牢獄に幽閉となる。

元国王が殺害される。

三怪鳥が国を乗っ取る。

それと同士に姫が行方不明になる。


大男から語られたのはこの様な内容だった。

何者かの陰謀が隠されているのは明らかな内容だった。


ただ、この語られた内容が真実ともまた限らない。


「ーーなるほど、分かった」


それだけ言うと、ラヴィは席から立ち上がった。一同、ラヴィの行動を凝視する。


「これより【三怪鳥攻略作戦】を開始する!

アリアカンパニーが全力でバックアップする。賛同するパーティーはこの後、私に続け!」


ラヴィが会議室から出ようと、扉に手を掛けた。


「あっ、あね…いや、ラヴィさん!」


フィリップの声が会議室に響いた。

その声に足を止めるラヴィ。


「お、俺のドレイクザックも賛同します。

その……今回のパーティーに二名の囚人を追加召集させて下さい」


フィリップは九十度に腰を曲げ頭を下げた。

滅多に人に頭を下げない男が、必死にラヴィに頭を下げていた。


「……あとでアリアカンパニーに追加召集する者の詳細のリストを送りなさい。決めるのはそれからよ」


そう言い残し、ラヴィは会議室を後にした。

それに続くように他のパーティーもラヴィの後を追うように会議室を出て行った。


残ったのは一番最後に遅れて来た、フィリップと大男だけになった。


「ーーアンタはもっと嫌なヤツだと思っていた」


「あん?」


「闘技場で無理矢理囚人同士を闘わせたり、それを掛けにして金儲けしたり、弱い者を痛め付けたりと、本当に救いの無いヤツだと決めつけていた」


「フンッ、別に間違いじゃねえよ!」


「いや、アンタのおかげでローチェにまた戻れる……汚名を晴らす機会を与えてくれた、ありがとう」


「それは、お前がローチェで活躍して汚名返上してあそこから抜け出す事が出来てから言ってくれ!」


「活躍すれば、無実が認められるのか?」


「バーーカ、それはお前のこれからの行動次第じゃね?認めるのは俺じゃねえし、それはお前を見るまわりの人たちだつーの」



後日、ラヴィの元に届いたドレイクザックのパーティーメンバーに追加召集メンバーのリストが届いた。

追加メンバーは二名だった。



ーー イカロスとシュナイデル ーー

【アリアカンパニー】サザンビート

50名の構成員からなる世界最大のパーティー


・ラヴィ・アリア☆4 (爆風の舞姫)

・マリアナ☆3 (ヘソ出しファンキー)

・アガタ☆3 (黒スーツ・煙草)

・リンクル☆3 (エルフ)

・トマス☆2 (鷲鼻・アフロ)


ラヴィ自信が〈代表〉を勤めて経営している企業でありパーティーである。

冒険者パーティーのリーダーであるラヴィは、世界に名を轟かせる、〈雷帝〉〈爆炎の剣姫〉に次ぐ〈暴風の舞姫〉の名を持つ冒険者なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ