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弱虫の剣  作者: 望月 まーゆ
第2章: 黒い森の蟲王
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変異種

ピキピキ・・・と、洞穴の入り口を塞いでいた半透明な壁に、ひび割れが生じる。


「マズイにゃん。そろそろ【干渉遮断領域】の魔法が解けるにゃん」


みんなひび割れている壁を見つめる。


「ね、ねえ・・・奥の方、でっかいのがこっちに向かって来るよ」


クレアが指差す方向に、今いる洞穴からでもその大きさが分かる。


「ーー我々は【Spielplatz】〈シュピールプラッツ〉は森の最深部を目指す。そこに、今回の〈蟲の大量発生〉と〈変異種の発生〉が関わっていると考えている」


「なら、僕たちも一緒にそこを目指します!」


エルの言葉に、ロキが眉間にシワを寄せる。


「お荷物になられちゃ困るぜ! まあ、蟲の足止めの餌が良いところだな」


「ロキ! いい加減にしろよ、ボクのエルが足手まといとでも言いたいのか?」


アイナがロキを睨みつける。

アイナの怒りを無視して、ロキは続ける。


「ーーお荷物かどうか、そいつらであの〈変異種〉を倒してもらいましょうよ」


ロキは「どうぞ」と、右手の掌を変異種の方向へ向けた。


「わ、分かったわよ。やってやろうじゃない!」


エリーナの顔は引きつっている。


アイナは、エルたちのメンバーの顔を見ながらエルの服を引っ張る。


「エ、エルの力は正直信じてる。あのシュナイデルを倒す実力者だから。だけど・・・」


アイナは心配そうにエルを見つめる。

そんなアイナの肩にポンと手を置き、


「大丈夫! コレでも僕たちは沢山稽古したり、連携を磨いて来たんだから」


エルはアイナに「心配ないよ」と笑顔を見せた。





バリーーーン。


魔法の壁が砕け散った。


【干渉遮断領域】が解かれた事により、人間の呼吸や心音は蟲に筒向けになった。


「ーーさて、お手並み拝見と言ったところかな」


「ーーんだよ! ヘレンズも興味あったのかよ」


「ええ。アイナが惚れた人物ですからね。

どれほどの実力者か見て見たいなが本音です」


「チッ、俺ばっか嫌な役回りを押し付けやがってーー」


ロキは地面に唾を吐き捨てた。



☆★☆★☆★☆


八本足の巨大な蜘蛛の魔物。

六本足以上から蟲の強さは桁違いに上昇する。


蜘蛛〈スパイダー〉別名【森の暗殺者】


・鋼糸と粘糸を使い分けて獲物を獲られる。

・溶解液を口から吐き、獲物の息の根を止める。


攻撃パターンはこの二つだけだが、糸に捕まればほぼ解く事は不可能だ。



エルとクレアが一目散に巨大な蜘蛛を目掛けて駆け出す。


その様子を見ているエルフの少女のサラが、

眼鏡を押し上げながら、


「その先、いくつか〈トラップ〉が仕掛けられてるのに、気が付かなければアウトよ!」


サラの魔法【空間座標把握】〈ロケーション〉このエリア一帯のマップ及び魔物の位置、財宝の場所などありとあらゆるものを空間で感じ取る事の出来る魔法である。

ほぼ、サラの特殊能力に近い部類の魔法である。


「エルなら大丈夫、この位の〈トラップ〉なんて躱せるよ」


アイナは自信満々に行ってみせた。


アイナの期待通り、エルとクレアは蜘蛛の糸のトラップを避けて巨大な蜘蛛へと接近する。



先に仕掛けたのはクレアだ。


「やあああああああ〈トリプルバッシュ〉」


レイピアから放たれる三連続の突き。

更にそのまま反転しながら、急加速からの突進の突き。


「たああああっ‼︎〈アクセルスナイパー〉」


ダメージを受けて巨大蜘蛛は、クレアを振り払おうと八本ある足の内の三本の足を無動作に動かす。


クレアは後方に回転しながら回避する。

入れ替わるようにエルが巨大蜘蛛に向かう。


「お兄ちゃん気を付けて!」

「うん! 任せて」


巨大蜘蛛はエルに向かって溶解液を噴射するが、的を絞らせないようにジグザグに走りながら回避する。


ここから一気に【超加速】する。

右手に握る短刀を逆手に持ち替えて、巨大蜘蛛の周りを縦横無尽に駆け回りながら、斬り刻む。縦、横、縦、横の連続攻撃。


「ギイィィーーーーーーーーーーッ‼︎」


巨大蜘蛛から緑色の液体が、至る所から滴り落ちる。


エルの八連撃。〈バーストラッシュ〉


「エル兄ちゃん離れて!」


ミレアの声とともに、エルは巨大蜘蛛から離れる。


「不死鳥よ 我が声に耳を傾けたまえ 爆炎豪火球(フレムフュージョン)


大気中の空気が生暖かくなる、 あたりは静寂に包まれる、 パチパチと無数の小さな火花な弾ける。


巨大蜘蛛がこちらに向かって来ようとした瞬間ーー。



爆音とともに、噴き上げる豪火。

巨大蜘蛛を炎が包み込む。


「一連の流れは、素晴らしいね。本当にお手本のような連携だね」


ヘレンズは周りに集まってくる蟲の魔物を、討伐しながらエル達を感心している。


「ーーしかし、それだけだ。詰めが甘過ぎる。単純に攻撃力、破壊力、魔力量が低いんだよ。全部が軽い」


ロキはふんっと、鼻で笑う。

サラは自身の目に浮かぶ〈ロケーション〉のマップを確認する。


「ヘレンズ、余りクズクズしてられないわよ。ウジャウジャと集まって来るわよ」


サラは少し離れた場所で、待機しながら周りに指示を出している。


「仕方ない、俺が助太刀をーー」


体格の良い大男のレグルスが、エル達の元へ行こうとすると、「いい、俺が行く」とロキが先にエル達の元へ駆け出した。


その姿を見てレグルスは、ヒューーと口笛を吹き「ロキくんカッコイイ!」と茶化した。



☆★☆★☆★


炎に包まれた巨大蜘蛛。


エル達は安堵の表情で見つめている。


「ミレアやったね!」

「クレアも技と技の連撃凄かったよ!」


クレアとミレアはお互いの掌と掌を合わせて喜んでいる。


エルが巨大蜘蛛からゆっくりと歩みよりエルとエリーナが顔を見合わせた時、水色の疾風が駆け抜ける。


「全くおめでたい奴らだ!」


その声だけを残して、ロキが炎に包まれた巨大蜘蛛に飛びかかる。


炎に包まれながらも、巨大蜘蛛は再び動き出す。


「う、嘘⁉︎ まだ生きてるよ!」

「完璧に直撃したハズなのに・・・」


双子姉妹は唖然として、巨大蜘蛛を見つめて固まる。


ロキは巨大蜘蛛の鋼糸の糸の攻撃を大鉈で回避する。


火花を散らしながら、ロキは巨大蜘蛛に近くと、高い跳躍力からの大鉈を振りかぶる。


「るああああああああああああああっっ‼︎‼︎」


振り下ろした大鉈で、巨大蜘蛛を一刀両断。

真っ二つに裂かれた巨大蜘蛛はズルッと上下にズレて崩れ落ちた。


水色の髪の狼の少年ロキの武器は大鉈。

普段は、服の後ろに隠しているため分からないが、自分の背丈ほどある大鉈をどうやって隠しているのかは、謎だ。


ロキがぺっと、地面に唾を吐き捨てこちらに向かって歩みよる。


背後では、巨大蜘蛛の死体が灰となり消え。後に〈魔結晶〉だけが残った。


ロキがエル達とすれ違う。

エルに緊張が走るが、ロキはそのままエル達と視線を合わせること無く歩いて行った。



「みんなには、エル達はどう映った?」


アイナが唐突に【Spielplatz】〈シュピールプラッツ〉のメンバーに聞いた。


「粗削りだが、磨けば光ると言ったところかな」


ヘレンズがアイナの問いにそう答えた。

ロキは?とアイナがそのまま視線を動かす。


「・・・イイんじゃねえの?」


ロキの相変わらずの態度に、アイナはそれを褒め言葉として捉える事にした。


「ーーヘレンズ!」


アイナは再びヘレンズに視線を戻す、ヘレンズはアイナと視線が合うと微笑む。


「ええ、一緒にこのクエストを完遂しましょうか!」


アイナは嬉しそうにエルの元へ駆けて行った。





これが序章に過ぎないとまだ、誰も知らなかったーー。

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― 新着の感想 ―
[一言] エリーナ!仕事しろ~www エリーナの活躍期待してますよ。 さすが眼鏡エルフ サラちゃん!!索敵重要!
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