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弱虫の剣  作者: 望月 まーゆ
第2章: 黒い森の蟲王
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天使の翼

「パーティー名は・・・まだ決めてないです」


エルが苦笑いを浮かべる。

エルを真っ直ぐ見つめたまま、ヘレンズは首を傾げた。


「クエストを受けるには、パーティー申請が必要な筈だよ。必ずパーティー名を記入することになっているんだが?」


「え?」と首を横に向けると、ミレアが申し訳なさそうに、


「ご、ごめんなさい。パーティー名を何度もエル兄ちゃんやエリーナお姉ちゃんに聞いてもパーティー名はまだ決めてないって言われらたので・・・その、勝手に・・・」


「それでパーティー名は?」


「天使の翼〈エールダンジュ〉です。先生の所属パーティーから一文字と私たちがこれから新しい世界に羽ばたけるようにと、願いを込めて、この名前に」


ヘレンズは説明を聞きながら微笑みを浮かべた。


「うん。いいパーティー名だ」



* * * * * * * * * * * * *



ギルド連盟本部。


「それは心強いな! もう1パーティーは?」


それがーー、




「それが聞いたこのない最近出来たばかりの天使の翼〈エールダンジュ〉と言うパーティーらしいのです」


「ーーそれは危険だ! 至急救助を要請する」


ギルド本部の会長の言葉に、ギルド職員の男性は渋い表情を浮かべる。


「そ、それが・・・全く参加パーティーが集まらない状況です」


「なっ、あの高額報酬にもかかわらずか⁉︎」


「は、はい・・・ゆ、唯一の参加パーティーは【月華の茶会】です」


「よりにも寄ってあそこか・・・」


「は、はい。色々と面倒なところはありますが、実力だけは世界でもトップクラスのパーティーですので、問題はないかと思うのですが・・・」


「単独で1パーティーだけで〈アラートレベル5〉のクエストに行かせる訳にはいかないだろう」


「そ、それが報酬を全額くれるなら、問題ないとーー」


「う、うむ。 こ、この際仕方あるまい、パーティーの救出を最優先にクエスト要請しよう!」


「【月華の茶会】に連絡し、救出に向かわせます!」



☆★☆★☆★


会長室から出て来た職員を待ち伏せていたかのようなタイミングで声をかける男。

ギルド職員の制服は着ている。


「申し訳ない。今ちょうど会長から先ほどの出来たばかりのパーティーの詳細が知りたいと連絡があった。資料を見せてくれないか?」


「見かけない顔だな? 身分証を拝見させてくれ」


ギルド職員の男性は疑いの眼差しを向ける。


「最近、地方から本部へと移動になったんだ」


男は肩をすくめてながら「構わないよ」と身分証を見せた。

ギルド職員の男性は身分証を受け取り、身分証を確認すると、特に変わった所は何もなかった。


余り納得はいかないが、身分証を返すのと一緒に先ほど言われた資料も一緒に手渡すと、男は会釈しその資料を食い入るように見つめた。


全ての資料に目を通し「ありがとう」と、言葉だけを残してその場から立ち去った。





☆★☆★☆★


小型通信用水晶が、ぼんやりと輝く。

水晶の中に黒いローブを着た人物が写る。

すっぽりとローブで隠れていて、顔は認識出来ない。


「やはり思った通りだったよ。例の白銀の髪の少年とまだ一緒にいるよ」


言葉を発したのは、先程のギルド職員の制服を着た男だ。


水晶に写る黒いローブの人物に先程見た資料の内容を伝える。


『やっぱり! 現在の居場所は?』


声が幼い女性である事が分かる。


「喜べ、お前が今遊んでいる場所に偶然にもいるぞ。ただし、そこには☆4のパーティーと数時間後には厄介な〈雷帝〉が合流することになる。遊んでられるのも時間の問題だ」


『ふむふむ、報告ご苦労様。 とりあえず今回は〈ホンモノ〉かどうか見極めておくよ』


水晶の光が消えて、映っていた映像も消えた。


男は水晶をしまうと、薄暗いギルド本部の廊下の奥へと消えて行ったーー。



* * * * * * * * * * * * *


〈黒い森〉の洞穴。


シャルルの【干渉遮断領域】により、魔物からは人間を感知出来ない。また、あらゆる攻撃を遮断する。しかし、効果は数分で消えてしまう。


「正直、この森での戦闘は死に直結する。特に一撃で倒せない場合は厳しいと思った方がいい」


ヘレンズは渋い表情で、森を見つめる。

先程の騒ぎで蟲達が群れを作り集まって来ている。


「音に敏感だって聞いたから、足音を立てないで移動してたのにさ。急に蟲が襲いかかって来たんだよね」


クレアが口を尖らせる。

ヘレンズはそのクレアの言葉を聞き、ロキとアイコンタクトを取る。


ロキは頷き口を開いた。


「俺とヘレンズはこの森を探索した。

その時、〈アサシンウォーク〉という特殊スキルを使用していたんだ。それでも奴らは俺らの存在に気付いた。その意味が分かるか?」


アサシンウォーク〈暗歩〉は、主に盗賊や暗殺者が足音をたてないように移動する歩行術である。


「音は関係無いって事?」


エリーナの答えに首を横に振るヘレンズ。


「音に反応するのは確かなんだが、何の音に反応しているかだ」


「何の音? 足音以外の音なんて・・・」


首を傾げるクレナ。


ミレアは全員をぼんやりと見つめながら、

ハッとなりその答えに気付く。


「まさか・・・心音? または、呼吸?」


ミレアの答えに「正解!」と微笑むヘレンズ。


「そ、そんな・・・絶対に発見されちゃうじゃないか」


エルは呆然とする。


「ああ、それに魔物はただの〈蟲〉だけじゃない。巨大な蟲〈変異種〉もこの森には生息している」


「〈変異種〉?」


「巨大な蟲でコイツに至っては、音だけじゃなくおそらく、体温に反応する」


一同衝撃な発言に固まる。


「た、体温って・・・それじゃあ、魔物が逆にこちら側に寄って来るってこと?」


「ああ、クエスト達成条件の〈魔物殲滅〉とはよく言ったものだな」


「コレはただの〈アラートレベル3〉の緊急ミッションじゃない。〈アラートレベル4〉以上の高難度クエストだ」



エルたちは高難度のクエストに巻き込まれてしまったーー。

一部修正しました。


【Drecksack】〈ドレイクザック〉から【月華の茶会】にパーティー名を変更してます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] TRPGを文章化した感じですね。 王道のファンタジーだと思います。 [気になる点] 他作品との差別化ができていないというか、この小説だけにしかない特徴が欲しいと思います。 [一言] これか…
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