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弱虫の剣  作者: 望月 まーゆ
第2章: 黒い森の蟲王
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朝刊

世界新聞社より大スクープが号外された。

この記事により、シュナイデル・グリューネのエリーナ姫監禁容疑により牢獄入りが確定した。


現役領主であり☆3冒険者の牢獄入りは、世間に衝撃を与えた。


また、☆4冒険者アイナ・アウグスタ・ロレーヌの誕生も世間の話題になった。


あの勇者フローラの再来だと世間は大いに盛り上がる事となった。



☆★☆★☆★☆


宿屋の食堂にパーティーメンバーが仲良く朝食を囲んでいる。


木製のアンティーク調のオシャレな丸テーブルが二つ、六人がそれぞれ適当に分かれて座っている。


「おっ! アイナのレベル4になったの世界新聞の記事になってるぞ」


レグルスは挽きたてのコーヒーを口に運びながら新聞を読んでいた。


「私もその記事読んだわ。まるでレベル4を最初から予言していたような感じの記事ね」


エルフのサラが眼鏡を押し上げながら、朝食のパンをひと摘み千切ると、口に運んだ。


「実際にレベル3になったばかりの時に、アイナの元に来て取材をしていたの覚えているニャン」


朝食を食べながら喋る猫娘のシャルル。ポロポロと口からいろんな物が溢れる。


「シャルル汚いわよ。食べるか喋るかどちらかにしなさい!」


サラがムッと、シャルルに注意する。


シャルルは「にゃーん」と耳が垂れ下がった。


「ーーだが、一面を飾ったのはアイナじゃなくてこのシュナイデルを倒した少年の記事だぜ! アイナ読むか?」


「ボクそう言うの興味無い」


アイナは興味無さそうに片手を上げた。


「英雄の誕生、白銀の髪の少年がエリーナ姫を救う・・・か! カッコイイぜ!」


ガハハハと笑うレグルス。


「白銀の・・・髪の・・・少年・・・」


「アイナ?」


アイナは椅子から腰を上げると、レグルスから乱暴に新聞を取り上げた。


「お、おいアイナ・・・」


目を丸くして記事の絵を見る。

写真のように鮮明な絵には、白銀の髪の少年がシュナイデルと戦闘を繰り広げているワンシーンが描かれていた。


アイナは胸がいっぱいになる。

見間違える訳がない。

間違えない!ずっと捜していた人物だ。


「・・・エル・・・」


アイナは新聞を抱き抱えた。

「おい、俺の新聞!」とレグルスは叫んだ。


アイナはレグルスの言葉を無視して、固まっている。



「ーーアイナ?」


アイナの目に涙が溜まり、今にも溢れそうなほどだ。


「・・・やっと、やっと見つけたの」


「見つけたって、アイナの捜してた人?」


エルフのサラは食べる手を止めてアイナを見つめている。


アイナは頷き、抱きしめていた新聞を広げる。


「私のずっと捜してた人・・・エル・オルブライト」


アイナの新聞を持つ左手の薬指にはめてある、銀の指輪がキラッと光る。アイナにとって命より大切な指輪だ。








「はあ? 蟲のクエスト辞めて人を捜す⁈」


アイナは無言でただ頷いた。


「お前なあ、俺やヘレンズがどんな思いをして、森を歩き回ったと思ってんだ!」


ロキと言われている狼の亜人の少年。

つり目に水色の髪に八重歯が特徴的である。


「アイナ、考えを改めてもらえないだろうか?」


セント・ヘレンズ。魔法と剣術を同等に操る魔法剣士である。金髪、青い瞳の美少年という名が良く似合う。


アイナは首を横に振りながら、


「ボクは、ずっと彼を捜してた。彼のために冒険者になり、同じ夢を叶えるために頑張って強くなった。やっと彼の手がかりを見つけたんだ。ここで足踏みは出来ない」


パーティーメンバー全員が、アイナが大事な人を捜しているのは知っていた。


所属パーティー【Spielplatz】〈シュピールプラッツ〉は、現在の世界トップクラスのパーティーである。所属メンバー全員が☆3以上の冒険者である。探索・攻略を目的にした最前線の冒険者パーティーだ。


アイナはエルを捜すために、この最前線の最強パーティーのメンバー入りを志願した。


捜している彼もきっと、勇者のパーティーを目指しているから同じように最前線のパーティーにいるに違いないと。


アイナの熱意に負けた【Spielplatz】のメンバーは快くアイナを向かい入れてくれた。


そこからのアイナの成長は、メンバーの予想をはるかに超え、あっという間に☆3に到達したのだ。


「アイナお前の気持ちは、痛いほど分かる。

けど、パーティーの方針は知っているだろ?

【一度手を付けたクエストは必ず攻略する】

これが私達の誓いだ」


アイナは握っている新聞の、白銀の髪の少年の絵に視線を落とす。


やっと見つけた彼の戦う真剣な眼差しに胸が苦しくなるのが分かった。


「・・・分かった。このクエストだけは攻略する!」


その言葉にパーティーメンバー全員がホッと、胸を撫で下ろした。


「ーーだけど‼︎ このクエストが完了したらボクは、このパーティーを抜けて彼を捜しに行く!」


くしゃっと、新聞を握る手に思わず力が入るアイナ。

「し、新聞が・・・」誰かの悲痛な声が聞こえた。


そんな彼女の肩にポンと手を置き、微笑むヘレンズ。


「ーーその時は、パーティーメンバー全員で一緒に捜そう」


「ヘレンズ・・・」


上目遣いで手を置いた人物を見つめるアイナ。


「チェッ、捜すの手伝ってやるからとっとと、蟲退治しちゃおーぜ!」


鼻の下を人差し指で擦る水色の髪の狼の少年。


「・・・ロキ」


周りを見るとみんな笑顔でアイナを見つめていた。


「ーーみんな、ありがとう」


幼い面影を残す彼女の顔いっぱいに、笑みが広がっていた。




* * * * * * * * * * * * *


朝食の準備を終えて、新聞を手に取ったクレイ。


テーブルの上には、目玉焼きとサラダ、焼きたてのパンが3人分置かれている。


「お、おい! フローラ来てくれ」


新聞を持つ手が震え、記事を読んだクレイが思わず叫んだ。


「ーー何よ、朝から大声上げて」

「パパ・・・うるさい」


眠い目を擦りながら、フローラとセシルが寝室から顔を出した。


「この新聞読んでみろよ!」


クレイはキッチンの椅子から立ち上がると、フローラに新聞を手渡す。


言われるがまま新聞に目を配ると、フローラの目が止まる。


「ーーこれはまた、随分と過大評価してくれたわね」


フローラは口元に笑みを浮かべた。


「☆4よりも大きく扱われているぜ。記事を書いた人物は、現場でエルの戦いを見たんだろうな」


「分かる人には、分かるのよ。あの子の無限の可能性がね。この先の未来をこの子に賭けてみたくなるのよ。そう思わせてくれる人物がやっと現れたのよ。それは一面にしたいのが分かるわ」


「ーーこりゃあ、今後注目されまくりだな」


「強くなればなるほど、注目はされるわ。

今のうちに慣れておけば良いのよ。良い経験だわ」


フローラはセシルを抱き抱えて、椅子に座らせると、


「さあ、冷めないうちにご飯たべましょうね」


「はーーい」と、子どもの声。



テーブルに畳まれて、置かれた新聞のエルに向かってクレイは、「エル、頑張れよ!」と誰にも聞こえない小さな声で呟いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] シュナイデルの件でエルにお咎めなしなのかな~と思ってたら、シュナイデルが監禁犯になってたんですね。
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