初恋
「エルは何でそんなに頑張るの?」
少女は、一生懸命剣を振る白銀の髪の少年に声をかける。
「いつか父さんのように、勇者さまのパーティーに入って、魔王をたおすんだ!それが、僕の夢なんだ!」
目をキラキラさせて夢を語る少年に見惚れる少女。
「ねえ、エル。その時はボクも一緒に勇者さまのパーティーに入れてよ。ボクもエルと一緒がいい」
自分のことを「ボク」と呼ぶのがお似合いの短いショートカットの少女は、すがるような瞳で、白銀の髪の少年を見つめる。
白銀の髪の少年は剣を置き、少女の手を握る。
「・・・える?」
目をぱちくりさせる少女。
「父さんが亡くなる前に言ってたんだ。これを大切な人にあげると、ずっとずっと一緒にいられるって」
白銀の髪の少年は、ポケットから小さな銀の指輪を取り出すと、少女の細い左手の薬指にはめた。
「える・・・コレ・・・」
少女は頬を紅く染めながら、はめられた指輪をじっと見つめる。
「こ、これ。ぼ、ぼくが削って作ったから、不恰好だけど・・・」
顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべる白銀の髪の少年。
「うんん、嬉しいよ。ありがとエル、だいすき」
白銀の髪の少年の唇に、少女の桃色の唇が重なった。
柔らかい感触に時間が停止する。
「ぼ、ぼ、僕ずっとずっと一緒にいたいから、もう誰ともお別れしたくないから」
「うん。ボクはどこにも行かないよ。ずっとずっとエルの側にいるよ。だから一緒にエルの夢、叶えようね!」
少女の中のエルという、白銀の髪の少年と過ごした記憶はどれも鮮やかで、思い出すたびに絵本をめくるような気分になった。
甘酸っぱくて、淡い少女の恋心をくすぐるそんな時間だった。
エル・・・ボクは今でも君が好きだよ。
新章突入です。ブクマ、感想等頂けますと作者のモチベーションに繋がります。応援宜しくお願いします。




