3.ゴリラだったようです
ゴリラ&和菓子な話です(雑なあらすじ)。
私はゴリラだった。
物理も魔法もカンストする勢いで育っている。Lv99ってなに?ドラゴンでも倒せってか??
しかもアイテムポーチまで健在だった。
神器級の武器やら防具やらアイテムやらが溢れんばかりに詰まっている。
……これはいわゆる、能力チートってやつか…。
転生悪役令嬢ゴリラ(能力チート持ち)とは。
ちなみに一縷の望みをかけて私付きの侍女に一般的な7歳児のレベルを聞いたら皆さんご想像の通り低かった。Lv3とかだった。私のデコピンで倒せるレベル。
……喧嘩とか気を付けよう…。
兎にも角にも店だ、店を開こう(現実逃避)。
最悪アイテムポーチ内の品々を売ればいいけど、それじゃあなんとも味気ない。どうしようか…。
そこで私のお腹の虫が鳴った。
腹が減っては戦ができぬ。
ということで私は自宅の厨房に乗り込み、和菓子を作ることにした。
この世界には前世で洋菓子に分類されていたお菓子はあったものの、和菓子を見かけたことがなかったのだ。
和菓子屋で育ち毎日のように和菓子を食べて育った前世を思い出した私にはそれが耐えられなかった。
和菓子が食べたい。
商売とか今はとりあえずいいからとにかく和菓子が食べたい。
今の私を突き動かすのはその一心だった。
「ってえ!?ないの!!?小豆!!和菓子と言えば小豆でしょ!?あんこ!あんこはどうするのーーっ!?」
ここは我が家の厨房。
和菓子を作ろうと乗り込んだ私に突き付けられたのは、小豆はないというなんとも残酷な知らせ。
小豆がなければあんこができない。
あんみつもどら焼きもまんじゅうもみんなみんな作れない……。
「…お嬢様、お嬢様が欲しがっているのは豆?なんですよね?アズキ、というものは知りませんが最近仕入れた珍しい豆があるのですが、一度見ていただけませんか?」
落ち込んでいた私に声をかけてきたのは料理長のシーザー。
金髪マッチョで顔が良い(今は関係ないが)。
「……まめ?………ってこれ!白いんげんじゃない!でかしたわシーザー!これで白あんが作れる!!!!!」
「そ、そうですか…」
あまりの嬉しさについ叫び声をあげた私に若干引いたようすのシーザー。
うん、ごめん。
「よし!早速白あん作り開始よ!ところでシーザー、この豆、定期的に仕入れることはできる?」
「そうですね…、なんでも最近近郊での栽培に成功したようで、やっと定期的に卸すことが出来るようになったなどと言っていたので恐らくは可能だと思います」
白いんげん確保、つまり白あん確保!普通のあんこがないのは惜しいけど白あんも大好きだもの!やった!
「ぜ・ひ・これからも定期的に仕入れてちょうだい!これから調理法を教えるから!!」
こうして公爵令嬢による白あん作り講習が開催された。
「出来たわ……!」
白あん、夢にまでみた和菓子に、私の心は喜びで一杯だった。
そのまま食べてもいいけど何に加工しよう…出来るだけ簡単でうちの料理人もすぐ覚えられるようなものがいい、そしてあわよくば毎日のおやつに強請るのだ…。
こうして邪な考えも持ちつつ私が作ることにしたのは、某青タヌキも大好きなあれ、どら焼きである。
早速どら焼き作り講習会を開催し、出来たどら焼きを皆で食べる。
今世初どら焼き、うま………!
まだまだ前世の両親の腕には遠く及ばないけど、美味い…久しぶりの和菓子……!!
料理人達にも好評みたいで、というか洋菓子しかなかったこの世界では随分と目新しいもののようで、皆大袈裟なくらいに驚いていた。
そこで私は閃いた。
よし、和菓子屋を開こう、と。