表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
high tension  作者: 藤瀬京祥
5/39

5話 決定的!

 かなりっていうからには、普通じゃないんだろうな。そのくらいの違いは俺にもわかる。でもさ 「かなり重要な参考人」 って何? 普通に重要な参考人とは違うってこと?


 そもそも参考人って何?


 容疑者とか犯人とは違うってこと? なんか不親切な奴らだよな。相手が高校生だってわかってて、小難しい言葉使うなんて。

 それとも何か? わざと小難しい言葉を使って、どうせわからないんだろうなんて心の中で俺のことを馬鹿にしてるとか? この可能性が1番高そうだな。うん、きっとそうだ。


 わかった


 そっちがそのつもりなら、俺にも考えがある。どうするかといえば、もちろん知ったかぶる。これしかないだろう。わかった振りをして、対等な立場を維持するのだ。


 知ってる振り


 そう、わかってる振りをしてやるのだ。これで立場は対等だ。こんな変態たちに足下を見られたら、どんな目に遭わされるかわかったもんじゃない。


 それこそ足を踏まれそうだ


 あ、踏まれたら踏み返せばいいのか。いや、踏み返したらきっと 「公務執行妨害」 だな。逮捕されるぞ。それはちょっと怖いな。じゃ、仕方ないから踏まれても我慢してやるか。

 ま、知ってる振りをしておけば足を踏まれることもないから問題ないな。

 いや、問題はそこじゃない。根本的な問題が別にあるじゃないか。


「親父の指紋って、どういうことですか?」


 だってあり得ないだろう? もう何度も言ってるけど、親父は死んでるんだ。もう骨だけなんだよ。死体には指紋もあるだろうけど、皮、焼けちゃってないから。肉と一緒に焼けちゃった……というか、焼いちゃったから今は骨だけ。


 骨に指紋なんてないだろ?


「倒れていた被害者のそばに、穂川周平さんの指紋が付いたグラスが落ちていたんです」


 決定的証拠じゃん!


 いや、親父の決定的犯行証明じゃなくて、親父がその殺害現場って場所にいた間違いない証拠。ほとんど聞き流していたけれど、確かその殺害現場ってどこかのスナックだっけ。じゃ、何? 親父、酒飲みにその店に行ったってこと?

 だってスナックっていうからには酒飲む場所だろ? 確かカラオケとかも出来るらしいけど、俺未成年だし、行ったことないからよくわからないけれど、綺麗なお姉ちゃんとかがいて接客してくれるような場所かな?

 いや、それは結構高級な店だな。あの親父の小遣いで行けるような店なんて、こう、寂れたっていうか、くたびれた感じの薄暗い店だ。そうに決まってる。で、やたら化粧の濃いおばちゃんママが、煙草をふかしながら酔っ払いを適当にあしらってるんだ。煙草の煙をプカーと吐き出したりしてさ。きっと親父もあしらわれたに違いない。で、顔に煙をふきかけられて、ゴホゴホむせ返ってるんだ。


 まさか……


 酔っ払ってパンツ脱いだりしてないだろうな? せいぜいおばちゃんママとカラオケデュエットで我慢してくれ。頼むから、これ以上母さんを怒らせるようなことはしないでくれ。もうさ、俺は自分の部屋を片付けるだけで手一杯だから、夫婦げんかの仲裁まで手、まわらないから。


 親父も人生のリセットボタン、要る?


 ま、そんなわけだから、母さんに殺されない程度にボコられてくれ。清隆は絶対、仲裁なんて入らないから。あいつ、その辺は凄いクールだから……って、親父はもう死んでるんだってば!


 ここ、肝心


 親父はもう死んでいる。まずはここを基本に考えてくれ。そう、親父はもう死んでるってことを不動の事実として考えると、その殺害現場の、場末のスナックに親父は行っていない。行けるはずがないんだから。骨に足はあるけれど、筋肉がないから歩けないし。


 幽霊?


 幽霊が酒飲むのか? いや、問題はそこじゃないか。幽霊に人を殺せるかってことだよな。腕力ないし、包丁とか握れないし。そもそも幽霊じゃ、グラスに指紋は付かないだろ?

 でも変態刑事2人は、親父がその場にいたと言っている。証拠は、殺された人のそばに親父の指紋が付いたグラスが落ちていたってこと。


 どういうこと?


 不動の事実はテコでも動かないから、親父が死んでいることは間違いない。金だって持ってないんだから、酒だって飲みに行けるはずがない。だいたい足だって骨しかないんだ、1人でフラフラ歩けるはずがないんだ。骨壺からだって出てこられねぇよ。上に重い墓石だって乗ってるし。

 墓荒らしにでも手伝ってもらえれば別だろうけど、うちの墓は狙われるほど立派なものじゃない。てなわけで墓荒らしの手伝いは期待出来ないから、親父は墓から出てこられない。


 だいたい指紋がないんだよ。もし、もしもだよ、あくまで仮定だけど、親父が犯人だったとして、足跡は残るだろうけれど、指紋はぜったいに残らない。皮がないんだから。


 これはひょっとして証拠の捏造ってやつ? 死人に口なしを利用して、親父に罪を着せようとしてるってこと?


 でも、誰がなんのために?

 つづく……なんか俺、今回まともなこと言ってね? ちょっと頭良さそうだよな。

 でも雲行きがすっげぇ怪しくなってきてるんだけど……どうなるわけ?

 あれ? ひょっとして俺がまともなことを言ったから、怪しくなってきたとかっ? え? 俺の責任なのっ?

 あ、そうそう。この物語はフィクションだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ