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high tension  作者: 藤瀬京祥
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34話 真実(2)

 両親を事故で亡くした三つ子の兄弟、長男の周平、次男の庸平、三男の航平は施設に引き取られた。その施設から一番最初に出たのが末っ子の航平さんで、引き取られた先は結構なお金持ちだったらしい。


 でも養子を引き取るには理由がある。まぁ普通そうだよな。その理由が、航平さんが引き取られた先は結構厳しかった。

 倉橋航平、それが雪緒の父親の本当の名前なんだけど、この倉橋家には子供がいなかった。ここまではなんでもないんだけど、夫婦の仲はとっくに冷え切ってて、旦那には愛人がいて、その愛人に子供までいた。いわゆる昼ドラのドロドロの世界だったわけだ。主婦は好きだよな、こういう話。


 どこが面白いんだよ?


 ちょっと俺には理解出来ない楽しみだな。理解したくもないし、楽しみたくもない健全な高校生男子です。


 そんな家に航平さんが引き取られたのは、旦那が愛人の子を跡取りとして引き取るって言い出したことが原因だったらしい。ところが面白くない奥さんは、どうせ子供を引き取るなら、いっそ全くの他人がいいって言い出して、そんで航平さんに白羽の矢が立ったわけ。ここまではいいんだよな、ここまでは。


 そ、ここまでなんだよ


 航平さんが引き取られてすぐに奥さんが死んじゃって、旦那は愛人と再婚。血の繋がった跡取りが出来りゃ航平さんは用なしだ。んで家を追い出されたってわけ。


 ひでぇ……


 一応世間体もあるから高校までは卒業したらしいんだけど、航平さんもすっかりひねくれてて。ま、そんな環境で育てば俺だって脇道に逸れちゃうよな、きっと。


「一度、航平さんが周平さんの保険証を狩りに来たことがあって。

 多分免許証はその時に取ったんだと思うけど」


 ってか親父、保険証とか貸しちゃ駄目でしょ? それ、貸し借りしていいもんじゃないでしょ、親父! 大人のくせにそんなこともわかんないのかよ? だからこんな面倒なことになってんじゃん。

 母さんがそのことに気づいたのは、免許証の更新お知らせ葉書が届いた時。見てすぐにわかったらしい。でももう、その時には親父も亡くなってたし、怒るに怒れなかったらしい。


「周平さんはお人好しだったから。

 それにずっと気に掛けてたしね、航平さんや庸平さんのこと」


 大人しい次男の庸平さんが次に引き取られたのは、親父が勧めたそうだ。引っ込み思案な弟を施設に残しては行けなかったんじゃないかって、母さんはいう。


「そういうところ、あんたと周平さんは似てるのよねぇ」


 やめてくれる? よりによってあんな親父と似てるなんて、言わないでくれる? 言われたくないし。迷惑だし。すっげぇ嫌だし。


「じゃあ何? 母さんは全部、始めから知ってたわけ?」


「警察だって知ってるわよ」


 あの日、警察に行って全部話してきたって……なに? それ? つまり、その、つまりさ、俺が1人で勝手に暴走してただけってこと? もう、なんなのさ、それ! とっくに昔に親父は 「かなり重要な参考人」 じゃなくなってたっこと? んじゃ俺は、休み潰して、無駄に小遣い使ってあんな田舎まで行って何してたわけっ?


 穴があったら埋めてくれ……


 ただ気になること……っていうか、まだ片付けなきゃならない誤解っていうか、問題は残っている。雪緒のことだ。雪緒の父親は 「穂川周平」 つまり親父じゃなくて倉橋航平さん。その事実を誰がいつ話すのか。

 ここはやっぱ本人、つまり倉橋航平さんが話すべきなんだろうけれど、警察に 「かなり重要な参考人」 として追われている。しかもまだ見つかっていないらしい。


 どこ行ったんだよ、おい


 さっさと見つかってくれりゃ話は早いのに。それこそ犯人かどうかも、それではっきりするはずだ。雪緒のためにもそうして欲しいところなんだけど……。


「ああ、清隆からよ」


 席を立ちかけた母さんは、携帯電話を見て笑う。なんか嫌な予感がして俺も自分の携帯電話を見てみたら、清隆からメールが届いていた。


 ぶっ殺すぞ、てめぇ

 つづく……はぁ結局俺、何してたわけ? ひたすら1人で駆けずり回って、なんなのこの結末は!

 って、まだ終わりじゃないのか。ってかもう終われよ、ほんと。

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