31話 共謀
何が引っ掛かったのか、よくわからない。でも何かが引っ掛かった。
なんだ？
よくわからないから起ったことを順に思い出してみた。最初は……そう。俺が寝坊して遅刻した日、変態……じゃなくて、刑事が家に来た。親父に用があるって言われても、当人は9年も前に死んでて会えるはずもない。散々人の部屋を荒らして、パンツを物色して変態は……もういいや、面倒だからこのまま行っちゃえ。変態2人は帰って行った。
その変態の話だと、殺害現場に親父の指紋がついたグラスが落ちていた。それで親父は 「かなり重要な参考人」 になったわけだけど、親父は9年前に死んでいる。これ、不動の事実。だから殺害現場に、事件があった夜、行くことは出来ないわけで、親父は犯人じゃあり得ない。
でも警察が言うには、そのグラスについていた指紋は、6年前、駐車違反で違反切符に、印鑑代わりに押された拇印と一致。免許証の名義は 「穂川周平」 で、住所や本籍地に嘘はなかった。
免許証そのものは本物だったとしても、親父は運転免許なんて持ってなかったから、誰かが親父の名前で取得したってことになるんだけど……そういや、ちゃんと違反金も払われてたっていってたな。更新もされてたって。更新のお知らせ葉書も宛先不明で返ってこなかったって。
うち、引っ越してないから
聞いた話じゃ、別にその更新のお知らせ葉書がなくても免許証の更新手続きは出来るんだって。んじゃ、そんな葉書送らなくてもいいじゃん。税金とか、無駄なんだけど。有効期限とか免許証に書いてあるんだし、自分で更新に行けばいいだけじゃん。
いらねぇよ、そんな葉書
多分親父の免許証を使っているのは三つ子の兄弟、庸平さんか航平さんなんだろうけど、葉書なんて受け取ってないけどちゃんと更新してるじゃん。そんで今もその免許証持ってて使ってるんだろ？
だいたい受け取れるわけないよな、うちに届いてるんだから。……ん？ ……あれ？ ちょっと待てよ？ そうだよ、うちに届いてるんだよ！ そう、更新のお知らせ葉書、うちに届いてるんじゃん！
どこにあるんだよ？
そうだよ、うちに届いた更新のお知らせ葉書はどこに行っちゃったんだよ？ まさか周平さん……は親父だ。
間違えた！
庸平さんか航平さんか知らないけど、更新が近づくたびにわざわざうちまで来て、葉書が届いていないかポストをのぞいてたなんてあり得ないだろ？ それこそ毎日？
いやいやいやいやいや、あり得ねぇって、絶対。だってそんな不審者がいたら、絶対に誰かが気づくって。それこそ清隆に見つかればフルボッコじゃん。
あいつ、加減知らないから……
でもそんな目に遭った奴がいないってことは、葉書は間違いなくうちに届いてる。そんでもって誰かが、親父の振りをしてる庸平さんが航平さんの代わりに受け取っていた。
誰だよ？
清隆？ そりゃ可能性がないわけじゃないけど、あいつ、親父が三つ子だってことも知らないんじゃないのか？ だったら不可能だし、そもそも俺や母さんに気づかれないよう郵便物を隠すなんて細かい芸が出来る性格じゃない。乱暴者だけあって、やることなすこと大雑把だから。
そのくせ部屋は俺より片付いてるけど……
……1人だけ……1人だけいるよな。俺や清隆に気づかれないで、家に届く郵便物を隠せる奴が……あ、奴とか言ったらヤバいかな。絶対怒られるよな。晩飯抜かれるよな。
やめとこ
1人だけ、たぶん、じいさんの次に……いや、ひょっとしたらじいさんと同じくらい親父のことを知ってる奴……じゃなくて、人物がいるじゃん。その人物なら親父が三つ子だってことも知ってるかも。
次の日、俺は学校をサボった
つづく……これは不可抗力！ だって俺は皆勤目指してるんだから！
ってかさっさと終われよ！ もうあとちょっとじゃん！ これ以上脱線するなよ！
