偽善者とエイプリルフール 後篇 2019
エイプリルフール。
四月は君の……云々はおいておくとして、四月一日は嘘を吐いていいというイベント。
実はイギリスでは午前中しか嘘を吐いてはいけないらしいが、それ以外の地域では一日中である……なぜだろうか。
こういう日は、企業もはっちゃける。
自社のサイトに嘘広告を出したり、思いっ切り嘘と分かる宣伝をしたり……それもあとで本当になることがあるのだが、そういうのはレアケースだ。
「──今回は無し……ってのが嘘だ」
『えーーー! ……って、えっ?』
「お前ら、もし俺が何もしないって言ったら戦争吹っかけてたんだが……運営神に挑むとかバカな発想を出したのはどいつだ?」
時間超越、または過去改変。
俺の魔導である“星刻鳴らす大鐘楼”の効果によって、膨大な魔力を支払ってどうにか過去へ戻ってくることに成功した。
もちろん、格の差がデカすぎる相手には通用しないが……今回はリオンを介して運営神にも通用するように想いを籠めたので、おそらく何も起きないだろう。
「──とまあ、詳しいことは俺の記憶でも観ておいてくれ。制限があるからしばらくは使えないし、ちょっとの間心配だから鎖国状態にするからな」
「……なるほど、観終わりました。わたしたちが申し訳ないことをしたようです」
「俺視点での記憶しか無いから、犯人が分からないのが問題だな……まあ、解決した問題だから詮索は止める。今回の過去改変がどういう影響を及ぼすかどうかだけ調べておく」
「分かりました。翌日以降に行いましょう」
ああ、うん。
結局嘘は吐かないといけないのね。
◆ □ ◆ □ ◆
とりあえず、自分の世界を滅ぼしてみた。
前回のエイプリルフール映像を参考に、可能な限りそれを再現させることに……。
「ふははははっ、さあ滅べ!」
俺はただ眷属たちに指示しているだけなのだが、それは全力全開で“夢現返し”を展開しているからで……ある意味眷属のストレス発散も兼ねている。
「──満足したのか?」
「はい。わたしは普段からメルス様の近くに侍らせていただけておりますので、溜まるモノはアレのみです」
「……まだ足りないみたいだな。そのアレとやらも含めて戦場で発散してこい」
「意気地なしですよ、メルス様」
きっとあんな考えが通ったのも、眷属の中でストレスが溜まっていたのが原因なのだろう……とりあえず、そう思っておくことに。
なのでそれを発散させるべく、好きに暴れさせている。
「けどこれ、なんかさっき見た光景よりも惨劇度が増している気がするな」
もしかしたらアレって、国民のことを気にしていて全力を出せなかったのか?
だから国民たちを保護したうえで行っているこっちの場合、もっと凶悪な威力を出せる技が発動されている……とか。
「まあ、イカサマ無しじゃ神様も手を焼くのがアイツらだしな……ここで一度膿が出せただけでも御の字か」
もしこの光景が本当だったなら……いや、もうある意味本当だけど。
俺が選択を間違っていたら、俺が俺であることを貫いていなかったなら、こうなる未来があったのだろうか。
「守り抜かないと……今の日常を」
そう思い、拳を強く握り締めた。
□ ◆ □ ◆ □
夢現空間 居間
「──と、ここまでが今年の映像です」
「長ぇよ! というか過去改変ネタ!?」
「メルス様が以前お話になっていた魔導、そしてお好みのラノベから発想を頂いた映像でしたが……どうでしたか?」
「あー、なんかもう……どこからツッコんでいいか分からない」
これを観ている神々は、いったいどういう感想を抱くだろうか。
少なくとも俺は、頭がパニックになり──『頭痛が痛い』状態である。
「そもそもこれ、何を伝えたいんだよ」
「家族は大切に、ということですね」
「──ストレスはまだしも、なんでアンだけいろいろ主張しているんだ?」
「それはもちろん──じゃんけんです!」
もうため息しか出ないな……。
時間はもう昼過ぎだし、映像を見始めた時間がピッタリすぎて終わったのは正午。
たしかにカミングアウトされたけど……いや、何がしたかったんだよ。
要するに──すべてがFになるということです
結局のところ、これを書いていた頃にエンジェルとデビルでひゃっはーしていたんですよ