偽善者とホワイトデー 2026
ホワイトデー。
去年は弟子ポジションの祈念者たちに、お菓子を配っていたな。
律儀にくれる(一人除く)ので、そのお礼というわけだ。
女性側の意見をくれたりするため、翌年のお菓子作りの参考になっている。
……中でも花子(仮)は負けず嫌いなところがあるので、俺を超えようとしていた。
うーん……本気でやろうと思えば、生産神の加護持ちだけど負けそうな気がするよ。
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イベントエリア
「あー、これは凄いな」
祈念者がイベント会場をレンタルして行う非公式イベント、今回訪れた場所もその一つだ……だがその盛り上がりは間違いなく、公式イベントにも引けを取らない。
何をしているのかというと、勝手に人気投票だ──バレンタインではGMたちへの愛を示していた彼らだが、どうやら今回は祈念者女性陣に対する愛をしてしているらしい。
男性から女性へ、という日だからこそか。
日頃の感謝を込めて贈るとしたら誰か……というのを勝手に比べているようだ。
「ところで──ナックル」
「……なんだ?」
「これ、大丈夫か?」
「……大丈夫だと思うか? 上位ランカーとかが軒並み入っているけど、全然許可とかは取ってないそうだ」
「…………ダメそうだな」
「ああ、どうせバレる」
会場への入場条件として男性のみ、という方法で隔離はしているが……無謀である。
最近は一時的な性転換アイテムも出回っているし、誤魔化すこともできなくはない。
あくまで非公式のイベント、完全クローズドということにはできないのだ。
それも含めて自由、侵入する方法さえあれば──そーら来た来た。
「で、なんでお前さんはここに? 奥さんにお仕置きされるんじゃないか?」
「怖いこと言うなよ……密告者と暴走しないようにするためのストッパー、あとはまあそういうことだ」
「ああ、マーカーね」
阿鼻叫喚、空から降り注ぐ隕石に男どもが慌てふためく中、俺たちは平然と話し合う。
……隕石自体はこちらにも来ているが、まだその段階では無いと留まっているだけだ。
「あっ、そうだそうだ……これ、友チョコ。失敗作だから貰ってくれ」
「おいおい、いいのかよ」
「俺のはバフとか付かないしな。味だけ、嗜好品として楽しんでくれよ」
「……そういうことじゃないんだが。まあいいか、なら貰うぞ」
分かっているとも。
こちらで食べても現実では太らず、また眷属たちも大満足なお味のチョコ……それがもし、ナックルの手に渡っているとすれば?
「遠慮するなって。他の連中にもクッキーとかマシュマロとか、いろいろ渡してある」
「……チョコは?」
「今の所お前だけ。今のブームとか分からんから、何を渡してイイか困るし。眷属用の失敗作を渡すのも失礼だしな……前に貰ってくれた弟子にも別のヤツをやったし」
「…………最悪だ。いや味は最高だけど」
すでに口に入れていたナックル。
味については大丈夫だったと……さて、そろそろ最悪というか災厄が来るかな?
このイベント、何をとち狂ったのか投票した女性にどんなシチュエーションで貰いたくて、どんな反応が欲しいかなんてことまで晒している。
……まあ男子校のノリとでも言えば分からなくもない気がするが、それがもし外部に漏れれば──つまりはそういうことだ。
空に亀裂が走り、現れる天からの使徒。
始まるのは大虐殺……さて、君たちはどう生きるのか。
「で、メルス。お前はなんでここに?」
「何となくな……決して、追われてたから女人禁制の場所に逃げ込んだわけじゃない」
チョコだけに、チョコっとだけ怒らせてしまったかもしれないが……それはまた、別の話である。




