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偽善者とこぼれ話 番外月  作者: 山田 武


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偽善者とホワイトデー 2026



 ホワイトデー。

 去年は弟子ポジションの祈念者たちに、お菓子を配っていたな。


 律儀にくれる(一人除く)ので、そのお礼というわけだ。

 女性側の意見をくれたりするため、翌年のお菓子作りの参考になっている。


 ……中でも花子(仮)は負けず嫌いなところがあるので、俺を超えようとしていた。

 うーん……本気でやろうと思えば、生産神の加護持ちだけど負けそうな気がするよ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 イベントエリア


「あー、これは凄いな」


 祈念者がイベント会場をレンタルして行う非公式イベント、今回訪れた場所もその一つだ……だがその盛り上がりは間違いなく、公式イベントにも引けを取らない。


 何をしているのかというと、勝手に人気投票だ──バレンタインではGMたちへの愛を示していた彼らだが、どうやら今回は祈念者女性陣に対する愛をしてしているらしい。


 男性から女性へ、という日だからこそか。

 日頃の感謝を込めて贈るとしたら誰か……というのを勝手に比べているようだ。


「ところで──ナックル」


「……なんだ?」


「これ、大丈夫か?」


「……大丈夫だと思うか? 上位ランカーとかが軒並み入っているけど、全然許可とかは取ってないそうだ」


「…………ダメそうだな」


「ああ、どうせバレる」


 会場への入場条件として男性のみ、という方法で隔離はしているが……無謀である。

 最近は一時的な性転換アイテムも出回っているし、誤魔化すこともできなくはない。


 あくまで非公式のイベント、完全クローズドということにはできないのだ。

 それも含めて自由、侵入する方法さえあれば──そーら来た来た。


「で、なんでお前さんはここに? 奥さんにお仕置きされるんじゃないか?」


「怖いこと言うなよ……密告者と暴走しないようにするためのストッパー、あとはまあそういうことだ」


「ああ、マーカーね」


 阿鼻叫喚、空から降り注ぐ隕石に男どもが慌てふためく中、俺たちは平然と話し合う。

 ……隕石自体はこちらにも来ているが、まだその段階では無いと留まっているだけだ。


「あっ、そうだそうだ……これ、友チョコ。失敗作だから貰ってくれ」


「おいおい、いいのかよ」


「俺のはバフとか付かないしな。味だけ、嗜好品として楽しんでくれよ」


「……そういうことじゃないんだが。まあいいか、なら貰うぞ」


 分かっているとも。

 こちらで食べても現実では太らず、また眷属たちも大満足なお味のチョコ……それがもし、ナックルの手に渡っているとすれば?


「遠慮するなって。他の連中にもクッキーとかマシュマロとか、いろいろ渡してある」


「……チョコは?」


「今の所お前だけ。今のブームとか分からんから、何を渡してイイか困るし。眷属用の失敗作を渡すのも失礼だしな……前に貰ってくれた弟子にも別のヤツをやったし」


「…………最悪だ。いや味は最高だけど」


 すでに口に入れていたナックル。

 味については大丈夫だったと……さて、そろそろ最悪というか災厄が来るかな? 


 このイベント、何をとち狂ったのか投票した女性にどんなシチュエーションで貰いたくて、どんな反応が欲しいかなんてことまで晒している。


 ……まあ男子校のノリとでも言えば分からなくもない気がするが、それがもし外部に漏れれば──つまりはそういうことだ。


 空に亀裂が走り、現れる天からの使徒。

 始まるのは大虐殺……さて、君たちはどう生きるのか。


「で、メルス。お前はなんでここに?」


「何となくな……決して、追われてたから女人禁制の場所に逃げ込んだわけじゃない」


 チョコだけに、チョコっとだけ怒らせてしまったかもしれないが……それはまた、別の話である。



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